「屍鬼二十五話 インド伝奇集」ソーマデーヴァ

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以前13回目のたらいまわし「夜の文学」で、AZ BLOG::はんなり、あずき色のウェブログのoverQさんが出してらした本。(エントリーはコチラ) 「屍鬼」といえば、まず小野不由美さんが出てくる方が多いと思いますが、これはインドの物語。インド版「千夜一夜物語」です。

あらすじとしては...
トリヴィクラマセーナという名の勇気のある王様が、1人の修行僧に頼まれて夜中に宮殿を抜け出し、樹に懸かっている男の死体を取りに行くことになります。しかしその死体には、屍鬼が取り憑いてるんですね。王が死体を担いで歩き出すと、背中の屍鬼が王に1つの物語を聞かせる。その物語の最後には謎掛けが待っていて、王がそれに答えると死体は元いた樹に戻ってしまい、王様は再び取りに行くことに... というもの。
この王様、お話ごとに行ったり来たりを繰り返すんですよ! どの話もそれほど長くないんですが、全く出来た王様です...(^^;。

そしてこの屍鬼が語る話が、どれも結構凄いんです。例えば第2話の「娘一人に婿三人」。
非常に美しい娘に3人のバラモンの青年たちが求婚するのですが、その中から1人選ぶ前に、肝心の娘が熱病で死んでしまうんですね。3人の青年は嘆き悲しみます。彼女を荼毘に付した後、1人の青年は乞食となって彼女の灰を寝床にして寝るようになり、1人の青年は骨をガンジス川に投げに行き、1人の青年は修行僧となって、諸国を放浪することに。で、3人目の青年が死人を蘇らせる呪文を覚えて戻ってきて、娘を生き返らせることになるのですが... 屍鬼の問いは、この3人のうち誰がその娘の夫として認められるかというもの。で、その王様、平然とその問いに答えてしまうんです。しかも理論整然と。(笑)
すごい、すごいよ、王様!

なんて思ってると、屍鬼は元いた樹のところに戻ってしまって、また最初からやり直し、なんですが...(^^;。
絶世の美男美女がいっぱい登場して、みんなすぐ恋に落ちちゃうし、時には王様のために簡単に自分や自分の家族を犠牲にしたりもするんですけど、でも日頃の行いが良いと神様に生き返らせてもらえたり。そんな荒唐無稽な楽しい話がいっぱい。しかもオチも素晴らしい。いやあ、インドっていいですねえ。でもって、どうやらこの屍鬼、あんまり悪い存在じゃないみたいですね。「屍鬼」なんて聞くとどうも単なる悪霊のように感じてしまうんですが、実は古代インドでは信仰の対象で、その土着信仰が仏教やシヴァ教に取り入れられたとか。
永遠にでも続きそうなこの話が、25話でどうやって打ち止めになるのかというのもお楽しみです。(平凡社東洋文庫)

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Commentaires(6)

こんばんは☆
ついに、読まれたのですね!

見かけよりずっと奥深さがあって、

読んだあと、だいぶたってから、いろいろ気づくことも多かったです。
古い時代のものなので、記述が素っ気なくて、
面白いところも、くどくど追求せず、さっと通っちゃうけど、
自分で空想を膨らませると味わいが深まる感じがします。

>絶世の美男美女がいっぱい登場して、みんなすぐ恋に落ちちゃう…。

これは、アラビアンナイトにも共通で、イランあたりに起源があるんだそうです。
恋する二人のあいだには何か障壁があって、無限に隔てられる。
無限の距離を克服する愛…。

これはその後、ヨーロッパにも伝来して、吟遊詩人の伝統を生み、
やがて、ダンテ「神曲」の、ベアトリーチェとの愛になるんだとか。

じつは、よく考えてみると、「神曲」とこの作品は、なんか似てます。
屍鬼と王の関係が、ヴェルギリウスとダンテの関係とよく似てる。
これも偶然なのか、意味があるのか気になるところです。

四季さん、こんばんは
先日、小野不由美著の『屍鬼』も読んだところです。
なんだか頭の中がゾンビのイメージでいっぱいになってしまいました…

屍鬼といってもやはりカミサマの系譜にある『屍鬼二十五話』の方が好奇心をかきたてられますね。
王様と屍鬼のやり取りが、だんだんと息が合ってくるようでもあり楽しく読めました。
奥の深い小噺集といってもいいかもしれませんね。

別の記事になりますが、四季さんが紹介されていた『スカラムーシュ』も読み終えたところです。
久々の夢中で読める本で、同じく一気に読んでしまいました。良い本を紹介していただきました(感謝)

>overQさん
読もう読もうと思いつつ早数ヶ月、ついに読みました! 
いやー、楽しかったです。
元々枠物語が好きだしインドにも興味があるし、とってもツボ♪
…とは言っても、肝心の知識はさほどではない… というかほとんどないので(汗)
註釈を丹念に追いかけても「??」な部分がまだまだあったのですが…(^^;

へええ、絶世の美男美女の恋物語にも起源があったんですか!
イラン、ということはペルシャですね。うわあ、雰囲気~。
インドには絶世の美女、しかも神様レベルがいっぱい!?
と、びっくりしてしまいましたが、でも確かにあの辺りの女性は美女ですものね。
外見さえ良ければいいのか! と僻みたくもなりますが。(笑)

でも「屍鬼二十五話」は、艶っぽいシーンがあまり具体的に描かれてなくて
さらっと流されているのが、ちょっと可笑しかったです。
これがアラビアンナイトだったら、微に入り細に入り描かれそうですよね。(笑)

ダンテの「神曲」にも驚いてしまうんですが、
吟遊詩人の伝統もここから生まれていたとは… 恐るべし、「屍鬼二十五話」。
ああ、スルメのように、もっともっと噛んでいたくなります。
良い本を教えて下さって、ありがとうございました。

>nyuさん
小野不由美さんの「屍鬼」と、こちらの「屍鬼二十五話」では
同じ「屍鬼」でも、随分違っていてびっくりですよね。
こちらの屍鬼の方が、ずっと知恵モノで面白くて好きです~。
しかも25話最後の打ち止めの仕方を見てると
何やら愛嬌まで感じてしまいます。(^^ゞ

わあ、「スカラムーシュ」も読まれたんですね。
nyuさんも楽しまれたと伺って、すっごく嬉しくなっちゃいました。
えへへ、こちらこそありがとうございます。
ああいう血湧き肉踊る冒険活劇って大好きです(^^)。

四季さん、今日は。
屍鬼二十五話、良いですよね。私も好きだったりします。
高3の時に、高校の図書館で見かけて、
初めは借りずにそこで一日一話ずつでも読んでいこうと思っていたのですが、
面白さについつい借りてしまった一冊です(笑)。
屍鬼の語る話は面白いですし、
更にそれに王様の鮮やかな解決がつくなんて、贅沢です~。

わあー、慮柳涼さんも読んでらしたんですね!
高校生の時ですか。うちの学校の図書館にもあったのかしら…
…その頃ってあんまり本を読んでなかったんですよね、実は。
なんだか勿体ないことしちゃった気がします。(^^ゞ

ほんと、1日に1話ずつ読みたくなりますよね。
でもついつい借りてしまったというのも分かります!(笑)
屍鬼の話だけでも面白いのに、王様のあの鮮やかな解決にはびっくりですよね。

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