「鬼の橋」伊藤遊

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舞台は平安時代。自分のせいで異母妹の比右子を死なせてしまい、悶々とする12歳の小野篁が主人公。最後に一緒に遊んでいた荒れ寺へと向かった篁は、ふとした拍子に、比右子が転落した古井戸に吸い込まれてしまいます。気がつくと、そこは石ころだらけの河原。そこには大きな河と立派な橋があり、行くあてもない篁はその橋を渡り始めるのですが... ふと気付くと篁を食べようと狙っている鬼がいたのです。

以前、たまきさんに薦めて頂いた本。児童書です。
昼は朝廷に仕え、夜になると冥府に通って閻魔大王のもとで役人として働いていたなんて伝説のある小野篁の少年時代の物語。妹と恋仲だった、なんて話もありますね。大人になった後の篁は有能な官僚として有名なんですが、ここに描かれた少年時代の篁には、その片鱗はまだ全然ありません。異母妹の死をいつまでもくよくよと悩んで、生きていく気力も半分失っているような状態。鬼に襲われたところを坂上田村麻呂に危機一髪助けてもらうのに、またしても古井戸の中に舞い戻ってしまう始末。
これは、そんな篁が立ち直っていく成長物語なんですが、私がいいなあと思ったのは、3年前に死んでいるはずの坂上田村麻呂。橋の向こう側に渡ってしまいたいのに、帝から「死後も都を守れ」なんて、武装した姿で立ったまま葬られたせいで、どうしても向こう側に行けないんです。立派な武人だから、帝の言葉通りに京の都をしっかり守ってはいるんだけど、でも本当は向こう側に行きたいんですよね。友人知人もどんどん橋を渡ってしまうのに、なぜ自分だけが... と思いつつ、でも自分にできる精一杯のことをしている田村麻呂の姿がなんとも哀しくて。
そんな田村麻呂の姿もそうだし、田村麻呂に角を1本取られたせいで鬼でもなく人間でもない状態になってしまった非天丸の姿もと篁と重なって、なんとも切なかったです。それだけに、異母妹の死を乗り越えた篁の姿が一層感慨深く... うーん、いい話だわー。(福音館書店)

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「鬼の橋」伊藤遊(1998)☆☆☆★★ ※[913]、国内、児童文学、ファンタジー、小野篁、平安時代、鬼 読む時期が悪かった。同じ児童文学の時代ファ... » Lire la suite

ISBN:4834015718:detail 「鬼の橋」伊藤遊(1998)☆☆☆★★ ※[913]、国内、児童文学、ファンタジー、小野篁、平安時代、鬼 ... » Lire la suite

Commentaires(4)

おはようございます。
悪い話ではなかったと思うのですが、時期が悪かったようです。前年

すみません、TBが何本もいってしまいました。

すのさん、こんにちは。
読む時期というのは、確かにありますね。
丁度同じような系統の作品の後だと、どうしても比べちゃいますし。
これはこれでとてもいい作品だと思うのですが…
残念ですね。

「鬼の橋」好きです。読んだのは今から6?7年前。もうストーリーとか大分忘れちゃったけど、読んだ時はかなり衝撃的でした。すごく良い話だなと。
確か、私の勘違いでなければ、鬼が角を失ったと同時に憎しみが消え、代わりに慈悲とかの感情が生まれていたようなシーンがあったと思うのですが、「何かを失う瞬間は、同時に何かを得る瞬間なのだな。」と目が覚めるような思いでした。
確かに「空色勾玉」と比較しちゃうと、かなり地味な話ですが、これはこれで素朴で良い話ですよね!

ゆんさん、こんにちは。
「鬼の橋」、派手さはないけど、じっくりと味わいたくなるようないい話ですね。
あ、ゆんさんが仰ってるのは、既に角を1本なくしていた鬼が、最後に完全に人間になるシーンですよね?
あれも良かったですよねー。印象に残る場面でした。

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