「イトウの恋」中島京子

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冴えない中学教師の久保が祖父の遺品の中から見つけたのは、明治時代に日本を訪れた著名な女流探険家「I・B」との思い出を綴った、とある青年の手記。久保は、その手記を書いたのは明治時代に通訳ガイドとして活躍した伊藤亀吉ではないかと考え、自分が顧問を務める郷土部の唯一の実働部員・赤堀と共に、この文書を読み解いてみようと考えます。しかしその手記は、途中で終わっていたのです。耕平は伊藤亀吉の孫娘と思われる人物に、協力を求める手紙を出すことに。

CROSS-ROADの瑛里さんにオススメされた本。ここに登場する「I・B」とは、「日本奥地紀行」を書いたイザベル・バードで、手記を書いているとされているのは、実在した明治時代の通詞・伊藤鶴吉(作中では亀吉)がモデルのようです。
いやあ、良かったです。何がいいって、まずこの作品に登場する亀吉の手記が! 久保がカタカナ交じりの古い文を現代文に訳したという設定だし、言ってしまえば下手な翻訳文のような感じなんですけど、明治時代の横浜の雰囲気がすっごく伝わってくるんです。そして伝わってくるといえば、「I・B」と旅をするうちに亀吉の中に芽生えてくる感情も。「I・B」は、20歳の亀吉の倍ほどの年だし、最初は西洋人の女性なんて自分と同じ人間とも思ってなかったようだし、自分の気持ちにもずっと気づかないままなんですが、何とかして「I・B」を笑わせようと頑張ってたりする亀吉青年の姿が、微笑ましくも切なくなっちゃうんです。最後の船のシーンもいいんですよねえ。
そして、その亀吉の手記を研究する久保と郷土部の赤堀真、亀吉の孫娘の田中シゲルという、どこかピントのすれた3人の組み合わせも楽しかったです。この3人のやりとりは何ともほのぼのとしていて、亀吉の手記部分とは好対照。そして最後まで読むと、物語の最初と最後に配置された「彼女」の思いもしみじみと伝わってきて。何層にもなった人々の思いが熱く感じられました。(講談社)

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TITLE: 読書日記 イトウの恋 URL: http://slowfish.blog9.fc2.com/blog-entry-59.html IP: 64.125.250.27 BLOG NAME: den_en relax DATE: 10/30/2005 09:04:24 AM » Lire la suite

Commentaires(4)

こんにちは。
デビュー作の『futon』のユーモアもなかなかよいですよ。
あちらは田山花袋の『ふとん』がモチーフになってます。

あ、uotaさんだ、こんにちは。
そして四季さん、こんにちは。
この本、気になってます。
というのはイザベラ・バードの『日本奥地紀行』を読んで
おもしろかったものですから。
『日本奥地紀行』ではイザベラ・バードと伊藤の間には
恋愛のれの字も感じられませんが
(イザベラがとても男まさりなので)
そういわれてみれば、恋が芽生えてもおかしくないかもしれない。
四季さんも機会があったら
『日本奥地紀行』も読んでみてくださいませ。
明治の日本の庶民の生活が見えてきます。

uotaさん、こんにちは。
「futon」って面白い題名だなあと思ってたんですけど
田山花袋からきてたんですか!
他の作品も読んでみたいので、次は「futon」を読んでみることにしますね。
あ、でもその前に、田山花袋の方を復習しておかなくっちゃ。

LINさん、こんにちは。
あ、イザベラ・バード気になってるんです。
何を思って、この極東の地まで来たのかなあと思ってたんですよ。
「日本奥地紀行」面白かったですか。それはぜひ読んでみたいです。
あ、でもこの作品でも恋愛のれの字ぐらいなんです。(笑)
確かに彼女、男勝りですものね。(こちらはフィクションですが)

今気づいたんですけど、「日本奥地紀行」って東洋文庫からも出てたんですね。
またしても東洋文庫…! やっぱりいいラインナップですねー。

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