「ネクロポリス」上下 恩田陸

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「ヒガン」の1ヶ月には、死者が戻ってくるというアナザー・ヒル。関係者以外なかなか立ち入ることのできないこの地に、ジュンは今年初めて、親戚のハナやマリコと共に参加することに。しかし今年は連続殺人犯の存在もあり、いつもの年とは違うヒガンが始まるのです。

今回の本の装幀も素敵ですねー。川を渡るとそこはアナザーワールド! 恩田さんらしい異世界が広がってます。
1ヶ月間の「ヒガン」の物語。でも「彼岸」と言うより、むしろお盆に近いかと。お盆では先祖の魂がこの世に戻って来ますが、この「ヒガン」では、主にこの1年に亡くなった人が戻ってくるんです。しかも霊魂だけではなくて、実体付き。生きていた時の姿のまま。だからうっかりしてると、死者とは気づかないこともあり得るんですね。そしてこの死者は「お客さん」と呼ばれていて、なぜか嘘をつけないのが特徴。だからお客さんの言葉は公式の記録として扱われる可能性があり、お客さんと遭遇した人は皆、ブラックダイヤリーと呼ばれる黒い手帳にその会話の記録を残すことになってるんです。殺人事件の被害者がお客さんとしてやって来たら、その犯人が分かっちゃうんですねー。(後ろからいきなりとか、本人も良く分かってない状態だと無理なんですが)

「死というものが残酷なのは、突然訪れ、別れを言う機会もなく全てが断ち切られてしまうからだ。せめて最後にひとこと言葉を交わせたら。きちんと挨拶できたら。そう思っている遺族がどれほどこの世にいることか。」
恩田さんがこの物語を書こうと思ったのは、ここが始まりだったのかもしれないですね。(朝日新聞社)

と、設定自体はとても魅力的だと思ったんですが、以下、あまり好意的じゃないことを書いてるので、折り畳み~。


+既読の恩田陸作品の感想+
「夏の名残りの薔薇」恩田陸
「小説以外」恩田陸
「ユージニア」恩田陸
「蒲公英草紙」「光の帝国」恩田陸
「酩酊混乱紀行『恐怖の報酬』日記」恩田陸
「ネクロポリス」上下 恩田陸
「エンド・ゲーム」恩田陸
「チョコレートコスモス」恩田陸
「中庭の出来事」恩田陸
「朝日のようにさわやかに」恩田陸
「木洩れ日に泳ぐ魚」恩田陸
「いのちのパレード」恩田陸
「猫と針」恩田陸
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

 
今回はいつもほどすんなりと恩田ワールドに入り込めませんでした。特に冒頭はなかなか頭に入ってこなくて、何度も読み返しちゃった。(階段落ちのせいではないと思います)
そして実際読んでみて、おかぼれもん。のpicoさんが書いてらっしゃる、「ジャンボ白玉マフィンぜんざいパフェロイヤルミルクティーがけ~」の意味が良く分かりましたよ。ほんと日英モチーフのテンコ盛り。凄すぎるっ。しかもやっぱり本が好きのLINさんが書いてらっしゃる「ただの単語の羅列」という言葉も、まさにそう。

それでも途中まではまだ良かったんですが... 終盤の集中砲火には何ともはや。これじゃあ、単なる羅列と言われても仕方ないでしょう。しかも広げた大風呂敷を畳む気は最早なくなってしまった? 恩田作品で終盤になると妙にドキドキするのはいつものことなんですが(笑)、これっていつも以上じゃありませんか?
「かごめかごめ」や「提灯行列」みたいな言葉の形を変質させた意図も効果も良く分からなかったし... いえ、意図は確かにあるんでしょうけど、こんな小手先の技を使わなくても、恩田さんならきっと魅力的に描けたはずなのに、と思ってしまいます。ジュンが「東大の大学院生」である必要性も疑問だし(そうは見えないから尚更)、苑子のエピソードも中途半端。全てがお手軽にまとめられてしまったような印象。血塗れジャックは? 双子は? アナザーヒルとジュンの関係は? これで終わりなんですか?

なーんて言わずに、素直にこの世界を楽しめれば良かったんでしょうけど...
いつものような吸引力も感じられず、勢いで一気に読んでしまうという感じでもなかったです。うーん、せっかくなのに残念だなあ。

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ね!ね!そう思うでしょう?(笑)
恩田さんっていつも導入部はいいのに尻切れトンボで
「あー、もっと先を書いてくれ~」って思うのですが
今回はその導入部さえも…
でも設定とかアナザー・ヒルの雰囲気は
幻想的で好きなんだけどなあ。
「かつて英国領だった日本文化の影響を受け…」
というのも英国と日本ってあまりに似てなすぎて
かえって中途半端だったような気もします。
でもネットでは「さすが恩田さん!」ってほめている人も
多いんですよねえ。あはは(・∀・;)
次回作に期待しましょうヽ(´ー`)ノ
ところで、こういう幻想的な舞台設定、大好きなんですが
こんな感じで、四季さんオススメの小説ってありますか?

四季さん、こんばんは~
階段落ちのその後、いかがですか?
大変なことになってませんように。

こちらの作品って、ものすごーく、雑にかかれていて、何が雑かっていうと、愛がたりないよーって思いました。
恩田さんがつくりあげた登場人物への愛がたりなさすぎて、ものすごく薄っぺらになっちゃってますよね。
いかにも夕暮れ時を彷徨っている人たちなのだからなのか?
それにしても、それにしても・・・です。
恩田作品の中で、一番の駄作(と私がいうのもおこがましいのですが)なのでは?とまで思ってしまいました。
ほんとーに、残念で仕方ないです。
もっと、丁寧に、書いてほしかったですね~。
恩田さん、かいてるうちに見失ってしまったとしかいいようがありません。。

>LINさん
幻想的な舞台設定は、本ではないのですが、映画「アザーズ」(英)「あした」(日本)がおすすめです。
雰囲気や質感のレベルがとてもよいです。
四季さんにも、ぜひぜひ、おすすめです~!

でもでも、やっぱり、二百回忌ですね~。(笑)

お2人とも、早速の反応ありがとうございますー。
ネットでは高く評価してる人も結構多いみたいだったし、
あまり先入観を持たずに読もうと、心して読み始めたのですが
でもなんだか今回は、恩田マジックが全然効かなかったみたい。
もっと気持ち良く騙されたかったです…。

>LINさん
ほんと「ただの単語の羅列」という言葉がぴったりでした!
それほど知識が深くない私にも分ってしまう薄さってば一体何?!
アナザー・ヒルの雰囲気や設定はほんと良かったのに。好みだったのに。
夜のテーブルとかブラックダイヤリーとか、あの辺りはワクワクしたんですよ。
ジュンと一緒に異世界をそろそろと覗き込んでいくようなところは、楽しかったですよね?
それなのにー!!
確かに英国と日本というのも無理がありますよね。
かつて英国領だった香港を見てもそれは明らか。ましてや日本だし。

こんな感じで、オススメの作品。うーん、そうですねえ。
あんまりぱっと思い浮かばないんですけど、
パトリシア・マキリップの「影のオンブリア」なんてどうでしょう?
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4150203822/qid=1131401540/sr=1-1/ref=sr_1_2_1/250-1303309-2714668
マキリップは独特の重厚な雰囲気を持つ作家さんで、大大大好きなんです。
あんまり万人受けする作品ではないし、少し読みにくいかもしれないんですけど、
でもオンブリアという都がすごく幻想的で素敵なんです。いいですよー!

>picoさん
ご心配、ありがとうございます。
体中がぐきぐきしてますが(笑)、今のところは大丈夫みたい…
でも頭を結構打ってしまったので、しばらく大人しくして様子をみるつもりです。
このまま何事もなく治っちゃって欲しいです~。

そうですね、愛が足りなかったんでしょうねー。そして時間も。
なんだか作品が量産体勢に入ってきてるようで、ものすごく不安です。
今まで、あまり好きじゃない恩田作品もあったんですけど
そういうのは、元の設定がそれほど好みでもなかったから、そんなに気にしてなかったんです。
でもこれはもうちょっと熟成させてくれれば、すごく好みの作品になったと思うのに…!
そう思うと、なんだか悔しくて。
うわーん。

「アザーズ」も「あした」もまだ観てないです。
「あした」は、尾道三部作ですよね。実はどれも観てなくて…(^^ゞ
今度自宅に戻ったら、早速借りに行きたいと思いまーす。

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