「ヴェネツィアの宿」「コルシア書店の仲間たち」須賀敦子

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以前、「トリエステの坂道」を読んだ時に(感想)、OMBRE ET LUMIERE の37kwさんにお勧めということで教えて頂いたのが、この「ヴェネツィアの宿」。そして合わせて「コルシア書店の仲間たち」「ミラノ 霧の風景」「ユルスナールの靴」。すっかり遅くなってしまったんですけど、そのうちの2冊を読んでみました。

まず「ヴェネツィアの宿」は、日本にいた頃の生活や、須賀さんご自身の日本での家族での思い出を中心に、留学先のフランスやイタリアでのことを書き綴ったエッセイ。心に思い浮かぶまま自由に書きとめられたという感じで、時系列順に並んでいるわけではないのですが、全体としては大きなまとまりを感じさせる1冊。やっぱり須賀さんは、いいですねえ。良いことも悪いことも、真っ直ぐな視線で受け止めて、落ち着いた静かな文章で描き出していくという感じ。特に印象に残るのは、彼女の父親のこと。贅沢が好きで、仕事に身が入らず、家族を置いて1年間ヨーロッパとアメリカに行ってしまったという父親。後に家を出て愛人の元へと行ってしまった彼の姿は、最初は短気で身勝手なイメージばかりだったのですが、やはり父と娘の繋がりは濃かったのですね。最後の「オリエント・エクスプレス」の章でそのイメージが覆されるシーンが堪らなかったです。あと、時代はかなり違うんですが、私も須賀さんと同じ風景を見ていたことがあるので、その部分が特にものすごく懐かしかったし興味深かったです。

そして「コルシア書店の仲間たち」は、ローマに留学していた須賀さんが、コルシア・デイ・セルヴィ書店の一員として加わった頃のことを書いたエッセイ。コルシア・デイ・セルヴィ書店は、書店でありながらただの書店ではなく、左翼系のカトリックの活動の場なんですね。この書店に、階級も職業も人種も年齢も様々な人間が出入りしるんですが、この人々こそが、須賀さんがイタリアで得た初めての仲間。そしてこの書店こそが、イタリアで初めて得た自分自身の居場所。後に須賀さんが結婚するペッピーノ氏も、ここの一員です。このエッセイに登場する人々は、文章を読んでいるだけでも、それぞれに鮮やかに浮かび上がってくるんですが、その中でも一番印象が強かったのは創始者のダヴィデ・マリア・トゥロルド神父。爆撃で瓦礫の山となったミラノの都心を親友のカミッロと一緒にが颯爽と歩いている場面なんて、ほんと目の前に情景が浮かんでくるようでした。でも出会いもあれば別れもあり、須賀さんは最愛の夫を失い。書店の理念も徐々に形を変えて... コルシア・デイ・セルヴィ書店と共に、1つの時代終焉を見たような思いがして切なかったです。

次は「ミラノ 霧の風景」「ユルスナールの靴」を探してみよう。(文春文庫)


+既読の須賀敦子作品の感想+
「トリエステの坂道」須賀敦子
「本に読まれて」須賀敦子
「ヴェネツィアの宿」「コルシア書店の仲間たち」須賀敦子
「こうちゃん」須賀敦子・酒井駒子
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「須賀敦子全集8」須賀敦子

+既読の須賀敦子翻訳作品の感想+
「インド夜想曲」アントニオ・タブッキ
「なぜ古典を読むのか」イタロ・カルヴィーノ
「ある家族の会話」ナタリア・ギンズブルグ

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Commentaires(4)

四季さん、こんにちは。
須賀敦子さん、私も大好きです!
先日、久しぶりに大きな本屋へ出かけたら、
白水Uブックスバージョンのものを発見して、きゃっきゃとしばし興奮しちゃいました。
収録されている作品&タイトルは、四季さんの記事に挙げられているのと同じなのですが、
少々お値段が高く……でも欲しいです。

おひさしぶりです。
コメントありがとうございます。
どの本も何度も読み返したくなりますよね。
ボクはだいぶ前から、
「ある家族の会話」を読んでいるのですが、
ナカナカ進みません。
アントニオ・タブッキの「遠い水平線」は良かったです。
初期の村上春樹を読んでいる気がしました。
おすすめしていただいた「インド夜想曲」もこの後読みたいと思ってます。
またボクも感想を書き込みに行きます。それでは。

>ましろさん
わあー、ましろさんも、須賀さんのことお好きだったのですね!
いいですよねえ。私はまだ4冊しか読んでないんですけど、いずれは全部読みたいんです。
白水Uブックスも好き!
本当はこっちで揃えたいんですけど、確かにちょっぴりお高いのが…。(^^ゞ
あ、でも「ミラノ霧の風景」は、白水Uブックスしかなさそうなので、それを購入することになりそう。
いっそのこと、全部それしかなかったら良かったのに… なんて思ってみたりしてます。(笑)

>37kwさん
見に来て下さって、ありがとうございますー。
ほんと、どれも宝物にしたくなっちゃいますね。
「ある家族の会話」は、ナタリア・ギンズブルグでしたっけ。
となると、元々の作品がかなりの難関なのでしょうか…
「遠い水平線」は良かったですかー。これも読んでみたい!
と言いつつ、なかなか進まないのですが…(^^ゞ

37kwさんの感想、楽しみにしてますね(^^)。

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