「魔王」伊坂幸太郎

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ある日突然、近くにいる人間に思った通りの言葉を口にさせられる「腹話術」の能力が自分にあると気づいた安藤。そしてその頃、政界でまさに台頭しようとしていた弱小の未来党党主、39歳の犬養。この安藤と犬養の物語を描いた「魔王」と、その5年後の「呼吸」。

今までの伊坂さんの作品とはまた違う雰囲気の作品で驚きましたが、面白かったです! あとがきに「ファシズムや憲法などが出てきますが、それらはテーマでありません。かと言って、小道具や飾りでもありません。」と書かれているのですが、全編ファシストやムッソリーニ、ヒットラー、憲法第9条の法改正案など、普通の小説で扱うには重いモチーフが満載。そして、それに対して伊坂さんなりの回答が示されているというわけではないんですが、主人公の安藤が何か起きた時に自分に向かって言い聞かせる「考えろ考えろ」という言葉、そして政治家・犬養の「私を信用するな。よく、考えろ。そして、選択しろ。」という言葉がポイントなんでしょうね。アメリカに言われる通りの行動を取り続ける日本人政治家、そんな政治家に対して苦々しく思ってはいても、結局のところ「無関心」から抜けきらない人々への警鐘。
安藤と犬養は、本当は対立するような関係ではないはずなのに、犬養のパワーが強すぎて、みんなが簡単に飲み込まれていってしまうのが問題なんですよね。1人1人がきちんと自分で考えればファシズムになんてならないはずなのに、結局流れとしてファシズムが出来上がってしまうのが、当然の成り行きとはいえすごい皮肉。犬養は、本当は安藤のような人間こそ欲しかったんじゃないかと思うんだけど... そして一旦流れが出来上がってしまったら、一個人でそれに逆うなんていうのはなかなか難しいわけで。
作品の薄ら寒くなるようなところに、シューベルトの「魔王」の歌詞が効いてますねー。(講談社)


+既読の伊坂幸太郎作品の感想+
「死神の精度」伊坂幸太郎
「魔王」伊坂幸太郎
「砂漠」伊坂幸太郎
「終末のフール」伊坂幸太郎
「陽気なギャングが地球を回す」「陽気なギャングの日常と襲撃」伊坂幸太郎
「フィッシュストーリー」伊坂幸太郎
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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Commentaires(8)

伊坂がたくさん詰め込んでいたので、
私も持てるネタを全部つぎ込んで書評で答えました(^^)v

聖月さん、こんにちはー。「魔王」、面白かったですね!
わ、持てるネタを全部つぎ込んで、だなんて気になります。
今から拝見しに伺いますね。(ばびゅーんっ)

四季さんこんにちわ☆ リアル生活の引越でしばらくnet出来ずにいたのですが、最近やっと復活しました。netが出来ない間、本屋に並んだ平凡すぎる装幀のこの本に飛びついて読みました(笑)。私も、あとがきのあの部分、気になりました。今までと違う色のお話ではありましたが、やっぱり兄弟愛、みたいなの、を大切にしてあるんじゃないか、と思い当たった次第です。(なんか私の文章も硬くなりました(笑))

ぶろさん、こんにちは、お久しぶりです~。
お引越しも終わって、無事にネットも開通したんですね~。お疲れさまでした。
新しいおうちだと、やることもいっぱいあって大変だと思いますが、ぶろさんのペースを大切になさって下さいね。
という私も自宅と祖母の家を慌しく往復してて、ネット時間にもものすごくムラがあるんですが
読んだ本の感想だけは、意地でもアップしてます。←書かないとすぐ忘れちゃうから。(笑)

「魔王」、良かったですよね。これはすごく好きです。
あ、そっか、やっぱり兄弟愛もあるんですね。
すっかり政治的な方に目がいってしまって、そちらは頭から抜け落ちてましたが、言われてみれば確かに! 
ああー、ありがとうございます。ぶろさんの感想も後ほど拝見させて頂きますね!

こんにちは。
「魔王」読みました~。
安藤さんが、なんだか可哀想でした。
あんまり強調されていないけど、
きっと、不安だったんだろうなあ、恐かっただろうなあ、と。
でも、とても面白かったです。

ゆうきさん、こんにちは。
安藤さんが不安がってたとか怖がってたというのは、
私にはあまり感じられなかったんですけど、読み方が浅かったかしら。(^^ゞ
でもほんと面白かったですね。
個人的には「死神の精度」の方が好きなんですが、
この「魔王」で賞を取ったりするのかな、とちょっと楽しみです。

今更ですが、TBさせていただきました。考えて生きていくこと、難しいことですが、己の矜持として頑張ってみたいですね。

日常でも、ついつい流されてしまう場面が結構あると思うんですけど、
やっぱり1つずつ自分の頭で考えて行動していきたいですよね。なかなか難しいですが…

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