「山海経 中国古代の神話世界」高馬三良訳

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山海経とは、作者不詳の中国古代の地理書。最も古い部分は戦国時代(紀元前5~3世紀)に作られ、その後秦・漢時代にかけて内容が付加され、現在の形になったようです。「五蔵山経」「海外経」「海内経」など全18巻。表紙によると、「想像上の世界を縦横に走る山脈、そこに息づく奇怪な姿の怪力乱神たち。原始山岳信仰に端を発し、無名のひとびとによって語り継がれてきた、中国古代人の壮大な世界観が蘇る」とのこと。

副題が「中国古代の神話世界」ということで、もっと神話の話なのかと思ったんですが、神話よりも、むしろ神話の存在した「世界」が中心でした。洛陽周辺の山々とそこから四方に伸びる山脈、さらにその周囲に存在するとされた国々のことが書かれている、いわば博物誌とでも言えそうなもの。どの山にどのような植物や鉱物が多く、どのような動物がいて、それらにはどのような効用があるかということがひたすら詳細に書かれていきます。

南山経の首(はじめ)は昔+隹(じゃく)山という。その首を招揺(しょうよう)の山といい、西海のほとりに臨む。桂が多く金・玉が多い。草がある、その状(かたち)は韮の如く、青い花、その名は祝餘。これを食(くら)うと飢えることがない。木がある、その形は穀(こうぞ)の如くで黒い理(きはだ)、その花は四方を照らす、その名は迷穀(めいこく)。これを佩びると(道に)迷わない。獣がいる、その状は禺(さる)の如くで白い耳、伏してあるき人のように走る、その名は??(しょうじょう)。これを食うとよく走る...

これは冒頭からの引用。こんな感じでずーっと続いていきます。ここでは、それほど妙な動物は出てきませんけど、この後登場するのは凄いです。まさにキメラ。ギリシャ神話のキメラは「ライオンの頭・ヤギの胴・ヘビの尾をもち火を吐」きますが、それが普通の動物に思えてしまいそうなほど奇妙奇天烈な動物たちが沢山。思いつく限りのありとあらゆる種類の動物を、解体して繋ぎ合わせたような感じ。九尾の狐も出てきますけど、この狐なんて可愛いものだったのね...。当然人面のものもあります。しかも挿絵付き。(これがまた味があるんです・笑)
読んでる時はあまり何も考えずにのほほんと読んじゃったんですが、こういう説明の裏側には、実は中国各地の伝承や神話などが存在してるんですね。中国の神話は既にそのほとんどが失われてると聞いていたんですが、こんなところにその片鱗が残っているとは、実は「山海経」ってものすごく貴重な資料なんじゃないですか! でも水木しげるさんの解説を読むまで、こういった動物が妖怪だったとは気づきませんでしたよ...。鳥山石燕の「画図百鬼夜行」にもこの中の動物が入ってるんだそうです。(鳥山石燕が見て気に入ったらしい) 妖怪ですか。うーん、私は一体何を読んでたのかしら...。(苦笑) (平凡社ライブラリー)

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Commentaires(6)

これ、挿絵がおもしろいですよね。
私は、仙人と本草学に興味を持ってこちらの本を読みました。(何になろうとしていたのか!?笑)そっか、鳥山石燕はこちらのものを参考にしたものもあるのですね。
こういった本を読みつつも、妖怪と神獣の区別が、私はいまひとつわからなかったりです。
小野不由美さんの十二国記は、こちらを題材にされているようですね。アマゾンレビューで知りました。四季さんは、読まれました?
とても興味深いです。

挿絵、面白いですよね~。
なんでこんな変な動物を考え付くんだろう?ってそればっかり考えてました。
だって歩くのにも困るような動物も多いんですもん。生きていくのも大変。(笑)
しかも時々神様が紛れ込んでたりしますよね。(笑)
妖怪と神獣の区別… うーん、私もよく分からないんです。
神獣といえば、青龍・白虎・朱雀・玄武ぐらいしか… あ、あと麒麟もいますね。鶴も?
でもpicoさん、仙人と本草学に興味を持ってって… 本当に何を目指してらしたのでしょう?(笑)

うおーっ、「十二国記」好きですよー。全部読んでます!
でも、今ものすごく中途半端なところで終わってて…
小野さん、きっともう何もしなくてもお金が入ってくる状態なんでしょうけど
話の決着だけはきちんとつけて欲しいですーっ。(懇願)
十二国記の元ネタ本というのは、アマゾンのレビューで初めて知りました。
確かにそんな感じの動物がたくさん登場してます。

陶淵明が山海経のファンで、

山海の図を流観す。
俯仰して宇宙を終(つ)くす。

と歌って、「山海経を読む以上楽しいことがあろうか」なんて言ってますね。

ところが、陶淵明の見てた山海経の「図」は、今残されてるやつとはちがうそうです。
今残ってるのは、明清の頃にリメイクされたものらしい。

山海経はすごく読まれてきた伝統があり、膨大な数の人間をだましてきた(笑)、うさんくさい本です。
山海経と抱朴子と、列仙伝・神仙伝。
事実だと思って、真剣に読んだ人、何千万人もいるにちがいないです。

山海経は、中国というよりオリエントの伝説とリンクしてて、アラビアンナイトとか東方旅行記とかに似たようなネタが出てきます(ワクワクの実とか)。
エジプトの死者の書とも似てるとかいう話をネットで読みました。
外国人がもたらしたネタがけっこう入ってるようです。

あと、漢字。
変な漢字を捏造して、その漢字から「空耳方式」で、むりやり動物を作り出してます。
山海経を書いた人は、だから、架空だということをわかっていながら、人をだます目的で創作してます。
タチ悪いヒューザー系です(;・∀・)

現代人は、さすがに山海経はもう信じないでしょうが、
列仙伝は、地名とか年代とか、誰それの血縁とか、妙に細部がしっかり作りこまれてて、
読んでると、これはほんとの話だという気になってきますね☆

四季さん、こんにちは。
この本確かに面白いですよね。
私は小野不由美さんの十二国記がこの本を参考にしていると聞き読んだのですが、まさにアイデアの宝庫!
いかにも眉唾な話ばっかりではありますが、こんなに名前も妖怪も国名も弄り回して作っているんだなあなどと、ある意味その自由奔放さに感心しました。
読んでいてあれこれ創造の想像が膨らみますよね。
列仙伝・神仙伝のほうは、他の方もおっしゃるように説話や歴史的背景など織り込まれていて当時の文化や考え方を考えさせられてまた別の楽しみ方が出来ます。
さすが中国、歴史が深い。中国も古典となると日本チックな感が増して(日本文化は大陸から来ているので当然ですが)より親しみが感じられるのは私だけでしょうか?

>overQさん
そうそう、陶淵明。
実は「山海経」を読もうと思ったきっかけが、陶淵明なんです。
(その陶淵明を読もうと思ったきっかけは、overQさんのエントリ♪)
あ、でも彼が見てた図は、また違うものなんですね。
明清に作られたものとは、結構新しいですねえ。
うわあ、古い時代の挿絵、どんなんだったんでしょう。見てみたいなー。

や、さすがに事実とは思いませんでしたが>山海経
てか、今の時代に真実だと思う人がいたら、その方がびっくりですが(笑)
あの細部の細部まで詳細なところが、またリアル感を誘うんでしょうね。
だって、あんな、見てきたような描写! 動物や植物の効能だって、妙に具体的だし…
悋気に効くだの、その獣が現れるとその県では土木工事が増えるだの(笑)
そんな手の込んだ壮大な嘘をつかれてるとは、誰も思わなかったんでしょうねー。

アラビアンナイト、確かアリババの話で中国が舞台でしたよね。
唐代の話なんかを読んでても、ペルシャ辺りから来た人が普通に長安に住んでたりするし
しかも差別なんてなくて完全に能力主義(笑)、実は結構な国際都市ですよね。
漢の時代にも、大秦国(ローマ帝国)まで行こうとしてる人がいたようだし…
今の中国の姿からはちょっと想像できないですが(笑)
お互いに色々影響し合ってたんでしょうねー。
でもエジプトの「死者の書」までとは知りませんでした!
それもこれもシルクロードがポイントですか。
過酷な旅だったでしょうにねえ。隊商、侮りがたし。

>thousaさん
あ、やっぱり十二国記の元ネタ本だったんですね。
そっかー、あとがきか何かで書いてあったんでしょうね… すっかり忘れてます(^^;。
でもほんと、すごいアイディアの宝庫ですよね。
ある意味、人間の想像力の限界に挑んでるような本じゃないかと思いましたよ。(笑)
しかもものすごーく根気のある人というか、思いっきり凝り性の人が書いたに違いない…(笑)

>中国も古典となると日本チックな感が増して
あ、それは考えたことありませんでしたが、わあー、なるほどですー。ほんとそうなのかもしれませんね。
私が中国古典に惹かれるのも、どうやらその辺りに秘密がありそうです。
なんだか新しい見方に気づいて、ワクワクです♪

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