「モーダルな事象」奥泉光

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ともっぺさんに、「四季さんのお好きな『鳥類学者のファンタジア』のフォギーが出てますよー!」と教えて頂いて、その後Bryumさんにも「まだ半分くらいなのですが、面白いです!」とオススメされた作品。ともっぺさんたら、最初にお会いした時に、私が「鳥類学者~」を読んでたのを覚えてらっしゃったんですね。素晴らしい~。

内容としては、「日本近代文学者総覧」という書物で無名の作家・溝口俊平について書いた、三流女子短大の国文助教授「桑幸」が、溝口俊平の遺稿が見つかったという編集者からの知らせがきっかけで、騒ぎに巻き込まれていくという話です。

物語は2つの視点から交互に描かれていて、その一方が助教授・桑幸。こちらが伝奇部門。そしてもう一方はジャズ・シンガーのアキとその元夫・諸橋倫敦という元夫婦(めおと)探偵。こちらはミステリ部門。「鳥類学者のファンタジア」の主人公・フォギーは、このアキの友達なんです。まあ、ほんの脇役なんですけど、でもまた再会できるのはやっぱり嬉しい♪
そして桑幸のパートでは、怪しげな新興宗教団体やら、失われた例の大陸やらロンギヌスやらフィボナッチの数列やら、「鳥類学者のファンタジア」でもお馴染みだった、怪しげなモチーフが満載。いやあ、面白い~。マニアックなユーモアもたっぷりだし、「哀しく、切なく、でもほのぼの幸せなき持ちになれる」と世間一般で絶賛される溝口俊平の童話集には、今の本の売れ方読まれ方に対する強烈な皮肉がたっぷり。桑幸本人は、見かけも中身も人並み以下で、本人が不満な割には三流女子短期大学という場所に実に良く似合った俗物。なけなしの見栄を張っているところとか微笑ましくて、お近づきにはなりたくないタイプですけど(笑)、傍から見てる分には結構好きでした。
でも、桑幸のパートの面白さに対して、ミステリパートはちょっと退屈...。ミステリ系叢書からの配本だからミステリ部分に力が入ってるんでしょうけど、元夫婦探偵の視点オンリーの2章では、読んでる途中何度も寝てしまって、もう金輪際読み終えられないかと思いました...。元夫婦探偵もいいんですけど、全体的に桑幸のパートをメインにしてくれたら、もっと面白くなったんじゃないかと思うし、奥泉さん的にも本領発揮だったんじゃないかと思うのに!
とはいえ、2章さえ終わればこっちのもの。(?) 桑幸のパートが再び挿入される3章からは復活、最終章で2つの視点がめまぐるしい移り変わるクライマックスがまた面白かったです。(文藝春秋ミステリ・マスターズ)


+既読の奥泉光作品の感想+
「モーダルな事象」奥泉光
Livreに「葦と百合」「鳥類学者のファンタジア」の感想があります)

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  ○ 『坊ちゃん忍者幕末見聞録』   ○ 『浪漫的な行軍の記録』   ◎ 『新・地底旅行』 ◎◎ 『モーダルな事象』 » Lire la suite

『グランド・ミステリー』を最後に、奥泉の新刊は読まなくなっていたのだが、これは発売当初から興味があったので、買取本に入っていたのを良い機会と読んでみることにした... » Lire la suite

Commentaires(2)

読むの早!!
私も読み終わりました。
私も途中でだれてきて、どうしようかな・・
四季さんに面白いって言っちゃったしな…って思いながら頑張って読みました(笑)

確かに言葉の言い回しとか面白いのですが
中盤あたりでうーーん。ってなってきました。
それは私が歴史が苦手だから731部隊とか言われてもハテナ?って感じでだれてきたのかな。と思っていたのですが
そんなことではなく、きっと面白くなかったんだろうなその部分・・・。
別に無きゃ無くてもいい部分みたいな(毒)

>奥泉さん的にも本領発揮だったんじゃないかと思うのに!
ほう!そうなのか!
途中までは、鳥類学者も読んでみようかなと
思っていたのですが
中盤のダルダル加減でもうこの人いいやって
思っていました。
面白いなら読もうかな☆

あ、Bryumさんも途中だれちゃいましたか。
やっぱり中盤辺りですよね。
うん、歴史とかなんとかはきっと関係ないと思います…
私はもうあの夫婦探偵が出てくるたびに、つらくって。
別に嫌いだとかそういうんじゃないんですけどねえ…
桑幸のパートのまま勢いで読めちゃえば良かったんですけど
いかんせん、勢いで読みきってしまうには長いですしねえ。(笑)

でも絶対、桑幸のパートの方が奥泉さんらしいと思います!
本当の奥泉さんらしさとなると、メタになっちゃうんで
それはそれで私にはツライものがあるんですけど(笑)
でも「鳥類学者」は、大丈夫だと思いますよ。
こちらにも、だるい部分はあるかもなんですが…
というか、掴みの部分がちょっとだるかった覚えもあるんですが
でもこの本よりはずーっと少ないと思います。なんたって全体量が違う。(笑)
この文章とか言葉が楽しめれば、きっと楽しめると思うのでぜひ~。
SFちっくな話です。

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