「妖精の女王」全4巻 エドマンド・スペンサー

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題名からするとファンタジーっぽいですが、ファンタジーではないです。
16世紀の英国の詩人、エドマンド・スペンサーの代表作となった叙事詩で、当時の女王エリザベス1世に捧げられたという作品。大学時代に英文で読んだことはあるんですけど、翻訳を読むのは初めて。去年ちくま文庫で発刊されたのを知った時から欲しかったんですけど、ちくま文庫って文庫にしては高いですよね。でも以前から出ていたハードカバーが2万円近くしたことを思ったら...! えへへ。

本来なら全12巻になるはずだった作品で、12ある徳を1巻で1つずつ描こうとしていたらしいんですが、結局全6巻ということで、半分しか書かれてません。(この4冊にその全6巻+αが収められています) 1巻は神聖、2巻は節制、3巻は貞節、4巻は友情、5巻は正義、6巻は礼節。これらがアーサー王伝説に題材をとって描かれていきます。でも半分だけなんですが、近年ではこれで完結しているという見方が優勢になってきてるみたいです。「紳士、即ち身分ある人に立派な道徳的訓育を施す」のが一番の目的なだけあって、とってもアレゴリカルな作品。(ジョン・バニヤンの「天路歴程」ほどではないですが ←私が知ってるうちで一番アレゴリカルな物語) こういう部分は、原書で読んだ時の方が楽しめたかも。
アーサー王伝説が題材とはいっても、王になる前のアーサーしか登場しないし、そのままの設定で登場する騎士もいないので、アーサー王自体伝説は知らなくても大丈夫なんですが、聖書とギリシャ・ローマ神話を知らないとちょっとツライかも。ヨーロッパの文学を読むつもりなら聖書とギリシャ神話は必須だと大学に入る時に言われたんですが、こういう作品を読むとその言葉を思い出します。詳しい註釈がついてるので、大丈夫といえば大丈夫なんですが、いちいち註釈を読んでると物語の流れが分断されてしまうんですよね。(それでも註釈を飛ばせない私...) そして他にも色々な古典作品が引き合いに出されていました。ホメロスの「イーリアス」や「オデュッセイア」、ヴェルギリウス「アエネーイス」、マロリー「アーサー王の死」、チョーサー「カンタベリー物語」などなど。そして先日イタロ・カルヴィーノの「宿命の交わる城」読んだ時に読んでみたいと思った「狂えるオルランド」も、かなり大きく出てきました。やっぱり読んでみないといけないですねえ。ちくま文庫か岩波文庫で出してくれたりしませんかね?

あれ、あの人はその後どうなったの?って思う部分も多いし、登場人物の名前がなかなか判明しないことも多いし、一旦名前が出てきても「乙女」「騎士」と書かれてるばかりで、少し気を抜くと誰の話なのか分からなくなるし(笑)、あからさまな女王賛美が鼻につく場面も... あ、訳はいいと思うんですが、騎士レッドクロスが「騎士赤十字」って訳されてるというのもーっ。(いや、確かに「赤十字」なんですが) 現代の娯楽作品と比べると、どうしても読みにくいんですが、それでも、やっぱり後世の文学や芸術に影響を与えたというのも納得の大作。久しぶりに読み返せて良かったです。
ちなみにベルギー象徴派のフェルナン・クノップフの絵画にも、この作品に題材をとった作品があるのが有名です。(ちくま文庫)

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