「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」米原万里

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die Mitternachts Musik ~真夜中の音楽のみーしゃさんに教えて頂いた本。1960年1月から1964年10月まで、プラハのソビエト学校に通った米原万里さんのエッセイです。その頃の万里さんの親友は、下ネタに詳しく、男女のことを1から10まで米原万里さんに教えてくれたギリシャ人のリッツア、嘘つきながらも皆に愛されたルーマニア人のアーニャ、そして美人で学年一の優等生のユーゴスラビア人のヤスミンカ。日本に帰ってから続いていた文通もそのうち途絶えてしまうのですが、1980年代後半、東欧の共産党政権が軒並み倒れてソ連邦が崩壊していった時期、万里さんはプラハ時代の学友のことが気になって仕方なくなります。そして何度も旅して、旧友たちの消息をたずねることに。そして再会した時目の当たりにすることになったのは、10代だった当時は思いも寄らなかった現実でした。

10代の頃の思い出話が面白可笑しく書かれていて、特に最初の章のリッツァが明るいので、最初は面白く読んでいたんですが、だんだん辛くなってしまいました...。リッツァのいるはずのプラハにも、「プラハの春」が始まったかと思えば、ワルシャワ条約機構軍の戦車がチェコスロバキアを占領。アーニャ自身はイギリスにいるものの、彼女の家族のいるルーマニアはチャウシェスク政権が倒れて混乱。ヤスミンカの国ユーゴスラビアは内戦状態。生きてるのかどうかも分からない状態です。
状況としては、いつ家族皆殺しになるか分からない不安を抱えているヤスミンカが一番きついとは思うんですが、それでも自分の選んだ道を自分の足で歩んでるリッツァとヤスミンカはまだ... でもアーニャの場合は...。アーニャの両親との会話も兄のミールチャとの会話も、アーニャ自身との会話も、読んでいて辛くて仕方なかったです。子供の頃から様々な国の子供たちと接していた米原万里さんですら、「自分のノー天気加減を思い知って」しまうのなら、その空気すら感じたことのない日本人はどうなってしまうんでしょう。
それぞれの子供たちの祖国に対する愛国心に関するくだりには胸が痛くなりました。そして社会主義の国での生活は何かにつけ不自由なのだろうと思っていたのですが、学費が無料だったんですね。ドイツではオペラやコンサートは高価な贅沢だけど、チェコではもっと身近で、毎日の生活に文化が息づいていたというのがびっくり。そして、ロシアでは皆が才能を大切にしていて、妬みで引きずり落とそうとする人間などいなかったことも。知らなかったことが沢山あってとても興味深かったですし、色々と考えさせられました。(角川文庫)


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