「天涯の船」上下 玉岡かおる

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明治17年、「おひいさま」の身代わりとしてアメリカに行く船に乗り込んだ少女。それは、本物の「おひいさま」である三佐緒が、愛し合っている男性と引き裂かれるのを見ていられなかった乳母・お勝によって作り出された影武者。新しいミサオはまだ12歳。船酔いに苦しまされながら、お勝からは「しつけ」という名の折檻を受ける日々が続きます。そして船はとうとうアメリカに到着し...。

CROSS-ROADの瑛里さんにオススメされた作品。いやあ、面白かった!
ほんと、帯にある通りの「大河恋愛小説」でした。自分自身の本当の名前を失い、「酒井三佐緒」として、そして後にはオーストリィの貴族・ヒンメルヴァンド子爵夫人として生き抜くことになったミサオの半生を描いた作品。乳母のお勝に苛め抜かれる船中のエピソードは、読んでいても息苦しいほどだったし、ようやくそれが終わっても、もうドキドキしたりヤキモキしたり。三佐緒の父親である酒井尊則の渡米に、どれだけ緊張したことか。桜賀光次郎やマックスへの想いにも、ありがちだと思いながらもドキドキ! 出会いと別れを繰り返しながらも、芯の強い、美しく聡明な女性に成長していくミサオの姿にすっかり感情移入してしまいました。脇役で特に印象に残ったのは、乳母のお勝ですね。ミサオにあれだけの仕打ちをしたというのも、実際には本物の「おひいさま」への愛情の裏返し。ミサオが立派に「三佐緒」を演じることができたのも、結局はお勝のおかげ。行き過ぎがあったのは事実ですけど、彼女の思いを考えると、憎めない人物でした。お勝と数馬とミサオが、お勝の料理を囲んで擬似家族をしている光景は微笑ましかったです。
下巻ではもっぱらミサオと光次郎の物語。桜賀光次郎のモデルは、川崎造船所(川崎重工業)の初代社長・松方幸次郎。彼の松方コレクションが形成されていく様子、ミサオを通じて見ることのできる美術品やドレス、ジュエリー、ヨーロッパの貴族の生活やその生活に戦火が及ぼした影響などもとても興味深いところ。そして彼女たちの想いは痛々しいほど純粋。この部分は、ある程度の人生経験を積んだ人の方が共感できる部分なのかもしれないですね。いやー、読み応えがある作品でした。(新潮文庫)

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