「悪童日記」アゴタ・クリストフ

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第二次世界大戦末期。「大きな町」からおかあさんに連れられて「小さな町」にやって来た双子の「ぼくら」は、おばあちゃんに預けられることに。「大きな町」は昼も夜も襲撃を受けて、もう食糧も手に入らないのです。近隣の人々に「魔女」と呼ばれるおばあちゃんは粗野で吝嗇。働かなければ食べ物はもらえません。はじめはおばあちゃんに従うことを拒否する「ぼくら」ですが、1人で黙々と働くおばあちゃんを見るうちに、働くことを決意します。

立て続けにファンタジーを読んでいたので、今度は全然違う作品を。とは言ってもまだまだ翻訳物が続きます。これは随分前にもろりんさんにオススメされていた作品。字が大きすぎてツライ~と敬遠していたハヤカワepi文庫なんですが、気がついたらすっかりのめりこんでしまいました。解説によると、「大きな町」とはおそらくハンガリーのブタペストであり、「小さな町」は、ハンガリーのオーストリア国境近くに存在する小さな町。双子の少年の日々が、日記風に綴られていく作品です。

まず、少年たちの冷静なまなざしと淡々とした語り口がとても印象に残る作品。と思ったら、これは彼らの作文の練習によるものだったんですね。生き抜くために、「練習」と称して自分たち自身を鍛え上げようとする少年たち。祖母や他の人々から受ける暴力や罵詈雑言に耐えるためには、「体を鍛える練習」と「精神を鍛える練習」。お互いに殴り合いをしたり罵詈雑言を浴びせて、痛みを感じなくなることを覚えます。様々な状態を知るためには、「乞食の練習」と「盲と聾の練習」。時には断食をしてみることも。そして普通の勉強もします。正書法、作文、読本、暗算、算数、記憶の学習には、父親の辞書と祖母の聖書を利用。しかしそれらは全て彼らにとっては生きていくための方策を学ぶ手段。彼らは自分たちの哲学に従って行動しているだけで、たとえ聖書を暗記するほど読んではいても、信じているわけではありませんし、お祈りもしません。
2人の作文のただ1つのルールは、「真実でなければならない」。極力感情を排除して、客観的に冷静に事実のみを書いていくんですが、この作品はそんな2人の作文そのままの作品。でも感情を排除することによって、逆に静かで圧倒的な迫力が出るんですね。強制収容やナチスドイツによるユダヤ人虐殺などの事実が、まるで浮かび上がってくるようです。ごくごく簡潔な文章なのに、雄弁な文章よりも余程ずっしりと響いてきます。戦争を扱った作品は多いですが、こういう作品は初めて。もうびっくり。私は基本的に戦争物は苦手なんですが、これは本当に良かったです! こんな凄い作品だったとは、もっと早く読めば良かったわー。読み終わった途端、また最初から読み返してしまいました。続編だという「ふたりの証拠」「第三の嘘」も、早く買ってこなくては!

それにしても、ハヤカワepi文庫のラインナップいいですねえ。今手元にあるのは、ボリス・ヴィアンの「心臓抜き」だけなんですが、他の作品も俄然読みたくなってきました。大人買いしてしまいそう。(笑) (ハヤカワepi文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「悪童日記」アゴタ・クリストフ
「ふたりの証拠」「第三の証拠」アゴタ・クリストフ

+既読のアゴタ・クリストフ作品の感想+
「昨日」アゴタ・クリストフ
「文盲 アゴタ・クリストフ自伝」アゴタ・クリストフ
「どちらでもいい」アゴタ・クリストフ

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悪童日記発売元: 早川書房価格: ¥ 651発売日: 2001/05  戦争が » Lire la suite

Commentaires(8)

お久しぶりです~♪
この本、面白いですよね。全編に渡る抑圧された不気味な静けさと、ラストの疾走感というか開放感の対比が印象的でした。
それにしても、今はこんな文庫が出てるんですね。ラインナップをチェックしたくなります。

四季さん、お久しぶりです~。
悪童日記!懐かしいです。ラストの衝撃が忘れられません。
続編も素晴らしく、読後絶句してしばらく放心状態に。
どんなに本棚が満杯でも、絶対捨てない三冊です。
続編の感想も楽しみにしています☆

>さくさく
うわあ、お久しぶりです~。ってか、あっち放置しっぱなしでごめんなさい…
もうちょっとしたら復活できるかな、できたら復活したいな、と思ってるんですが。
「悪童日記」ほんと面白いですね。もうびっくりですよ。もっと早く読めば良かった。
ハヤカワepi文庫は、なかなかいい本が揃ってるようなので、字の大きささえ気にならなければいいと思いますよん。
という私は、今日たんまり仕入れてきちゃいました。えへへ。読むぞ~!

>うなさん
わあ、うなさんもお久しぶりです~。
「悪童日記」のラスト、凄いですね。もう心臓が持っていかれそうになりました。
そして今日続編の2冊を買ってきたので、早速読み始めてます。
そしてもう既に、「えっ?えっ…?」状態。
最終的に、この物語がどこに着地するのかすごく楽しみになってきました。
>どんなに本棚が満杯でも、
分かります!! 私もきっとそうなると思います。
というか、既に十分その状態になってるような気もします。(笑)

四季っぺ 駿府よりご無沙汰

なんと、本のことどもにはアゴタ・クリストフのことどもまであったのです。
似たような名で、アガサ・クリスティのことどもはないですが(^^ゞ
調べましたところ、この名前に相関関係はないようです。

早川epiは本当にいいですよね。最近ご無沙汰ですが。

では、今夜もカツオのたたき。

聖月さん、こんにちは。
山から帰ってらしたんですね~。いかがでしたか?
やっぱり浦島状態になりました?(笑)
なんと、「アゴタ・クリストフのことども」まであったとは、びっくりです!
「悪童日記」は、ほんといいですよね。epi文庫も。
しばらくファンタジー続きだったんですが、いきなりepi文庫モードになっちゃいましたよ。(笑)

カツオのたたきかあ。駿府は海の幸が美味しそうですね(^^)。

四季さん☆こんにちは
こちらの書評が気になったので読んでみたのですが、実に面白かったです、感謝!
この作家の作品をもっと読みたくなりました。

Rokoさん、こんにちは~。
わあ、私の感想が出会いのきっかけになっただなんて嬉しいです。^^
でもほんと、すごーくいいですよね。>「悪童日記」
アゴタ・クリストフはすごいです。続編と「昨日」「文盲」もぜひぜひ!!

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