「心臓抜き」ボリス・ヴィアン

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崖に沿った小道を歩いていた精神科医・ジャックモールは、白い家から叫び声がするのを聞き、急いでその家の中へ。そこには出産を間近に控えたクレマンチーヌが、陣痛に苦しんでいました。出産の手助けをするジャックモール。出産は無事済んで、3人の男の子が生まれます。そしてジャックモールはそのままその家に留まることに。

ジャックモールは生まれた時から成人であり、精神分析医。生まれたのはこの前年で、身分証明書には、名前の横に《精神科医。空(から)。満たすべし》と印刷されています。思い出も過去も持たない空っぽの彼が、人々の願望や欲望で自分を満たそうとするんですが...
この村自体は、とても変わった場所なんですよね。老人市では老人たちが競に掛けられているし、家具屋では小僧を虐待。死んだ小僧はあっさりと川に流されてます。そしてそういった行動をする村人たちの「恥」は、赤い水が流れる小川で「ラ・グロイール」と呼ばれる男が全て拾い上げています。恥を知る心配はいらない村人たちにとって、教会は魂の安らぎを得る場所ではなく、物質的な恵みを求める場所。
ジャックモールがここに来てから、カレンダーも狂ってしまったようですし、何かが微妙にずれ続けていきます。それが、出産した時は息子たちを厄介なものとしか思っていなかったクレマンチーヌの、息子が何か危険な目な遭うんじゃないかという強迫観念を募らせていくのと重なって、もうどんどん捩れていっちゃう。そして読んでるうちにその捩れにすっかり巻き込まれてしまうんだけど、こういうのって理屈抜きに物凄く好きです。先日読んだ「日々の泡」(感想)以上に妙な話だし、こうやって書いてても状況説明をしてるだけで終わっちゃってるんですけど、ものすごく吸引力があって一旦読み始めたら止まりませんでした。
本国では1953年に発表された作品。50年前に書かれたとは思えないほど、現代的、今日的な作品です。ボリス・ヴィアンってつくづく凄い人だったんだなあ。この人の作品と出会えて良かった! またそのうち他の作品を読んでみようと思います。(ハヤカワepi文庫)


+既読のボリス・ヴィアン作品の感想+
「日々の泡」ボリス・ヴィアン
「心臓抜き」ボリス・ヴィアン
「アンダンの騒乱」「ヴェルコカンとプランクトン」ボリス・ヴィアン

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