「ワイオミングの惨劇」トレヴェニアン

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19世紀末。ワイオミングの寂れかけた銀鉱山の麓の町に、ネブラスカから来たマシュー・ダブチェクという若者がやって来ます。既に両親を失ったというマシューは、15人しか残っていない土地の人々から低賃金の半端仕事を引き受けながら、この町に居座ることに。しかしその頃ワイオミングの刑務所から、数々の犯罪を犯して終身刑を言い渡されている"リーダー"と呼ばれる凶悪犯が脱走していたのです。そして"リーダー"がこの土地に現れます。

日本では実に18年ぶりの新作だったんだそうですね。毎回作風ががらりと変わることで知られているトレヴェニアン、今回のこの作品は西部劇とのことなのですが...
それをすっかり忘れていた私、ワイオミングと聞いてもぴんとこなくて(ワイオミングには、「カウボーイ州」という俗称もあるそうです)、前半はごく普通の山間の村が舞台の話と同じ感覚で読んでました(^^;。中盤、酒場によくあるスイングドアが登場して初めて、西部劇の映像が出てきた程度。西部劇の囲気を強く感じなかったのは、読みやすかったところでもあり、勿体なかったところでもあり、ですね。
そして良かったのは、主人公のマシューの造形。このマシューという青年が掴みづらいんです。警戒心を持つ人々の間にも持ち前の愛嬌でするりと入り込み、詐欺師のように達者な弁舌で相手を煙に巻いているマシュー。でも何か得体の知れないものを隠して持っていて、印象が微妙に不安定。それが後半、"リーダー"が現れた時にマシューがヒーロー役になって「めでたしめでたし」になるはずのところに、すごく効いてるんですよね。そして物語の後日談にも。この後日談が、普通なら冗長に感じてしまいそうなところなんですが、すごく余韻が感じられて良かったし... こういうところがトレヴェニアンらしいところかな。結局、憧れのリンゴ・キッドになり切れなかったマシューが痛々しかったです。(新潮文庫)


+既読のトレヴェニアン作品の感想+
「夢果つる街」トレヴェニアン
「シブミ」上下 トレヴェニアン
「ワイオミングの惨劇」トレヴェニアン

Livreに「バスク、真夏の死」の感想があります)

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