「不在の騎士」イタロ・カルヴィーノ

Catégories: / /

 [amazon]
フランスのシャルルマーニュ王率いるキリスト教徒軍と異教徒軍の戦争中、シャルルマーニュの麾下に隅から隅まで白銀に輝く甲冑をまとった1人の騎士がいました。その騎士の名は、アジルールフォ。しかしその輝く甲冑の中には誰もいなかったのです。

シャルルマーニュは、8~9世紀に実在したフランスの王。カール大帝という名前の方が有名ですね。十字軍を率いて遠征し、イスラム教徒であるサラセン人たちと戦い、「ロランの歌」にも歌われています。
人間としての肉体も骨格も持たず、まるで甲冑が意志を持ったかのようなアジルールフォと、その従者となるグルドゥルーが対照的。肉体を持たないアジルールフォは、自分の意志を強く持っていないと存在できないのですが、グルドゥルーは自分が人間であることすら確信していません。人間としての肉体をきちんと持っているのに、自己の意志が不在で、自分を家鴨や蛙だと思い込んだり、スープを飲んでいるのは自分なのに、自分がスープに飲まれていると思い込んでしまうような男。ちょっとドン・キホーテとサンチョ・パンサみたいな2人です。そしてそんな2人に関わることになるのが、父の復讐に燃えるランバルドという青年。彼は軍隊にやって来た途端、常々思い描いていた騎士像と、立派な甲冑の下に隠された現実とのギャップを思い知らされることになるんですよね。そんな彼が思い描いていた通りの、完璧な武芸と高潔な精神を持つのは、肉体的には存在しないアジルールフォだけ。
物語自体も面白いのだけど、ラストの畳み方がお見事でした! そしてこれは、「まっぷたつの子爵」「木のぼり男爵」に続く、カルヴィーノの寓話的歴史小説3部作の最終作なのだそう。そちらの2冊もいずれ読んでみたいです。(河出文庫)


+既読のイタロ・カルヴィーノ作品の感想+
「宿命の交わる城」イタロ・カルヴィーノ
「不在の騎士」イタロ・カルヴィーノ
「レ・コスミコミケ」イタロ・カルヴィーノ
「なぜ古典を読むのか」イタロ・カルヴィーノ
「まっぷたつの子爵」「木のぼり男爵」イタロ・カルヴィーノ
「イタリア民話集」上下 カルヴィーノ
「魔法の庭」イタロ・カルヴィーノ
「見えない都市」イタロ・カルヴィーノ
「マルコヴァルドさんの四季」カルヴィーノ
「冬の夜ひとりの旅人が」イタロ・カルヴィーノ
「柔かい月」イタロ・カルヴィーノ
「カルヴィーノの文学講義」イタロ・カルヴィーノ
「パロマー」カルヴィーノ
「くもの巣の小道」イタロ・カルヴィーノ
「むずかしい愛」カルヴィーノ

| | commentaire(10) | trackback(1)

Trackbacks(1)

「不在の騎士」イタロ・カルヴィーノ へのトラックバック一覧:

URL TrackBack de cette note:

イタロ カルヴィーノ 意思だけあって存在のない純白の甲冑の騎士アジルルフォとその盾持ちで意思がまったくなく存在しているだけのグルドゥルー。 出生を... » Lire la suite

Commentaires(10)

もう「からっぽの甲冑」という設定を思いついた時点でアイディア勝ちですよね。あと、異様な存在感を持つグルドゥルーのインパクトが強いです。
『不在の騎士』よりも物語性が強いので、『まっぷたつの子爵』『木のぼり男爵』もオススメですよ。

四季さん、こんにちは。
もしかして同じときに読んでいたのかもしれないですね。
一度でわかった気になるにはちょっともったいないような本でした。

よりよき社会を作る。
それが政治的希望というものだけれど、カルヴィーノはとびきり政治的な人、かつそのヤボウが砕かれたあとの世界を生きる人。
寓話の形でしか表明できない希望がある。
彼の寓話は苦いです。苦味を味わいながらなら、それは面白いと思うの。
パゾリーニとパラレルに読むことができる、カルヴィーノ。
http://www005.upp.so-net.ne.jp/guillo/pppstudy/ppp/calvino.htm

>kazuouさん
いやー、ほんとアイディアの勝利ですね。
空っぽの甲冑もグルドゥルーもくっきりと絵が浮かんできました。
「まっぷたつの子爵」「木のぼり男爵」もぜひ読んでみたいです。文庫になってくれないかしら?
河出文庫からも色々と出てるようなので、そちらも読んでみようと思ってます。

>uotaさん
こんにちは! TBありがとうございます。
>一度でわかった気になるにはちょっともったいないような本でした。
確かに! それに私は、きっとまだ満足に掴み切れてないと思うんですよね。
何度か読み込むと、その都度何かしら気づく部分が出てきそう。
それもまた楽しみです。

>overQさん
パゾリーニが「見えない都市」の作者としてのカルヴィーノを評して
少年でもあり、人生の移ろいを眺めてきた老人でもあるというのが面白いですね。
それは、まだ希望を持ってはいるけれど、政治的野望が砕かれた後の隠居的な部分も大いにあるということでしょうか。
カルヴィーノの作品はまだ2作目だし、パゾリーニに至っては1冊も読んでない私なので
教えて頂いたパゾリーニとカルヴィーノに関する文章にもなかなか理解が及ばない部分があるのですが(汗)
とりあえず、「見えない都市」がものすごく読んでみたくなりました!
あ、でもその前に、カルヴィーノの人となりや背景を掴んでおく必要がありそうですね。
少なくとも、持ってる文庫本2冊の解説をしっかり読み返そう…

パゾリーニも読んでみたいですが… あ、本より映画でしょうか?

四季さんのブログを見て、読んでみようと思いました。
今日、図書館に行く用事があったので、さっそくGET! 
まだ、1ページも読んでいないですが、本を開くのが楽しみです。

漣淀瀬さん、こんにちは!
図書館で丁度ゲットできたなんて良かったです。
あとは、気に入ってもらえれば良いのですが~。
ちょっとクセがあるので、最初はとっつきにくいかもしれないです。
でもどんどん面白くなりますよん。

古い本だったので、読みづらくてリタイアしました。
新しい、訳のものを予約しました。

┌|T_T|┘♪└|T_T|┐♪┌|T_T|┘

文字の大きさとか行間とか字体で、読みやすさって全然違っちゃいますものね。
新しい訳の本が読みやすければいいなあ。

コメントする(要JavaScript)

Note


MAIL FORMBBS

購読する ATOM


Powerd by MovableType4.24-ja
Copyright 2004-2011 四季. All rights reserved.