「人間の土地」サン=テグジュペリ

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1926年。当時トゥールーズ=ダカール間の連絡に当たっていたラテコエール社に、定期航空の操縦士として入社したサン=テグジュペリ。使用機の慣熟飛行や短距離往復をこなし、気象学の講義を受けているうちに、とうとう初飛行の日がやって来て...。

たらいまわし企画・第21回「教えてください!あなたのフランス本」で、フランス語で読みたいと書いた本なんですが(記事)、結局日本語で読んでしまいました。(^^ゞ
でも、これはまず日本語で読んで正解だったかも。これをフランス語で読んでも、きっと理解し切れなかったです、私。堀口大學氏の訳も、最初はちょっととっつきにくかったんですけど、読んでるうちにすっかり引きこまれてしまいました。
いや、これはすごいです! 一字一句食い入るように読んでしまいましたもん。一度読み終えてから、またもう一度読んだのですが、一度目よりも二度目の方が良かったし、時間が経つにつれて、またじわじわと来てます。

サン=テグジュペリが飛行機に乗ってたのは、20世紀初頭。この時代の時代の飛行機は、今のとは全然違いますよね。今のように、離陸と着陸さえきちんとできれば、あとは計器任せの飛行ができるような時代じゃなくて、燃料もそれほど積めないし、発動機がいつ止まってしまうかも分からないような飛行機。毎日の任務が、命を失う危険と背中合わせ。そんな日々の出来事を描いていくエッセイ的文章なんですが... 「エッセイ」という言葉の持つどこか軽い雰囲気は、この作品には似合わないですね。どの部分を取ってもずっしりとしたものが伝わってくるようです。
僚友・ギヨメやサン=テグジュペリ自身の遭難など、強く印象に残るエピソードが色々とあるんですが、この本の一番の魅力は、そういったエピソードじゃないんでしょうね。サン=テグジュペリや周囲の人々を巡る様々な出来事、そしてサン=テグジュペリ自身が死の一歩手前までいった体験によって得ていくものこそが一番の魅力なんでしょう。それらの体験を通して育まれた感性とでも言うべきものは、まさに大地が教えてくれたこと。これらの体験がなかったら、サン=テグジュペリはあのサン=テグジュペリではなかったんですね。
overQさんが「美しすぎる本」だと仰ってましたが、本当にそうですね。教えて頂いたDVDもぜひ観てみたいです。(新潮文庫)

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「サン=テグジュペリ」の『人間の土地』を読みました。 [人間の土地] 「サン=テグジュペリ」の作品って、絵本『星の王子さま』しか読んだことがなかったのですが、... » Lire la suite

Commentaires(10)

こんにちはです。
『人間の土地』はみなさん高い評価をされていますね。
じつは、私は先日の「フランス本」で初めて知ったクチです。でも、注文してしまいました。
届くのは少し先、読むのはもっと先になりそうですが、楽しみにしています。

shosenさん、こんにちは!
サン=テグジュペリといえば、まず「星の王子さま」ですものね。
次に知られてるといえば、「夜間飛行」かな?
でも知らずに済ましてしまうには、本当に勿体ない本なんですよ!
ぜひとも、じっくりと腰を据えて読んでみて下さいね。
shosenさんなら、私よりもずっと深いところで感じることがありそうです(^^)。

四季さん、こんにちは。
私も「たら企画」で興味を持って、図書館で一旦は手に取ったのですが、
パラパラ~ッと見たら結構難しそうだったので、思わず戻して
しまったんですよ。(^^ゞ
でもやはり読んでみたいです。今度はじっくりゆっくり読みますー。

瞬間と永遠。
どちらが大きいのでしょう。

サン=テグジュペリは、「瞬間>永遠」という逆説的な数学を見つけてしまった人。
蛇は象を呑みこむ。

彼は、いわゆる「物語」を書くことができなくて、結局「断片=瞬間」を寄せ集めた作品ばかりを書いた。
物語は、時間を順を追って展開する。
でも、サン=テグジュペリには、一瞬のほうが全体より大きく見えるので、話を順番に展開することができない。
クライマックスは、何の脈絡もなく、突如、不意に訪れる。

宮崎駿はサン=テクジュペリの熱狂的読者。
アニメは、数十秒のために、何週間も費やして描く仕事。
瞬間の中に、ありとあらゆるものをふうじこめることができる。
そのことを身をもって経験しているんですね。
だから、彼はサン=テグジュペリに共感するのだと思います。

さらに付け加えたいのは、無為の時のこと。
サン=テグジュペリはフランスの愛国主義者にもけっこう愛される(笑)
愛国者って、「一瞬が永遠よりも大きい」という思想に熱狂してしまう人たち。

でも、「人間の土地」には、一瞬が訪れるまでの無為の時、
退屈で、何もなくて、意味もない、ムダな時が、けっこう描かれている。
それがじつは、とても重要。
「意味はない」、だけど重要なんだと、そんな矛盾した何かを、サン=テグジュペリは発信しています。

彼は友だちとムダ話とかするのが、すごく好きだったんじゃないかと思います。
実際、友達も多い。
「瞬間」「本質」だけを追及する人は友達がなかなかできないけど、うだうだ過ごす人は友達が多い(;・∀・)
彼は瑣末な時間を大切にした。それは友人を「価値」で値踏みしないということ。

彼は意味のない戦争で死ぬのだけれど、何か感動的なのはそのせいだと思います。
これは、でも、なかなか難しい問題をはらんでいるとも感じます。とても両義的。
セリーヌとはちがう形で、複雑な気持ちを誘うものがあります。

私もこれは大好きです。
実は、夜間飛行 よりも好きかもしれない^^;;
フランス語版を買ったのは、もちろん、事前に
日本語で読んでいるからですよ(^^;;
ちなみに、好きなのは「愛とは~~・・・」という
くだりです。
番組もたまたまTVで見ていました。ただ、
流し見だったので。もう一度みたいので
DVDかっちゃうかも。。。

>ブラッドさん
堀口大學訳は、やっぱり最初ちょっと固くてとっつきにくいかもしれないです。
でも一度流れに乗ってしまうと、とても良かったですよ。
なんていうか、クリスタルガラスのようなイメージがありました。(って、どんなんなんだ・笑)

実は私も、あの後一度読み始めたんですけど、気分的にあまり乗れなくて寝かせておいたんです。
今回はすんなりと読み始めることができました。
バタバタしてる時は、やめておいた方がいいですよー。
それほど長くない作品なんですが、見た目よりも読むのに時間がかかるので
じっくり取り組める時に読むことをオススメします!

>overQさん
永遠と瞬間ですか。
その2つならやっぱり永遠の方が大きいでしょう…
と思ってしまう時点で、とっても凡人なのが判明してしまう私です。
いや、凡人なのは、以前から明らかでしたけど。(笑)

>瞬間の中に、ありとあらゆるものをふうじこめることができる。
ああ、そうですね、そうなんですね。
この作品に心酔する人が多いというのは、とてもよく分かるんですが
宮崎駿がそうだというのは、この言葉ですとんと腑に落ちてきました。
そっかあ、宮崎駿は身をもって経験してるのかあ。なるほどです。

「星の王子さま」は、この作品よりは物語的になってますけど
それでも唐突な場面展開が目につきますよね。
きっと、それがあの作品を難しく感じさせる所以じゃないかと思うんですけど
こちらの作品を読んで、なんだかすごく分かった気がしました。
「星の王子さま」では、きっとかなり無理して頑張ってたんでしょうね。(笑)
本質的に物語の人ではないんだなっていうのはすごく感じます。

>退屈で、何もなくて、意味もない、ムダな時が、けっこう描かれている。
>それがじつは、とても重要。
この作品をどう思うかは、きっとそこにかかっているんでしょうね。
死の寸前までいくようなエピソードももちろんあるんですけど
全体的には、決してワクワクするような本ではないですものね。
それでもやっぱり確実に伝わってくるものはあって。
実際の死は、むしろ静かな印象。
両義的だというの、すごく分かります。
あ、でもこの作品をきちんと理解するには、自分の底が
まだまだ浅いなというのも痛感させられてしまうのですが。(^^ゞ

>瑛里さん
「夜間飛行」は、随分前に読んだっきりなんですよ。
多分今読み返すと、また違った印象を受けるんでしょうね。
最初の時よりもう少し理解できるかも。ぜひ読み返してみたいです。
でもやっぱり「人間の土地」の方が好き、と思いそうな予感もひしひしとありますが…(笑)
「愛とは~」は、同じ方向を見るというくだりですね。あの言葉、いいですよねえ。
でも今、どこに載ってたっけって探したんですけど見つからず… ダメダメです(^^;。
わ、番組を見てらしたんですね。いいなあ。
私は今日レンタルビデオショップに行くので、探してみようと思ってます。
買っちゃってもいいなって気もあるんですけどね。置いてるといいな。

 はじめまして、数十年来の彼のファンです。
 サンテクスと言えば、どうしても「星の王子様」が出てきてしまいますが、私としてはこの作品こそが彼の本来の姿だと思っております。
 さらに言うと、彼は作家である前に生涯を通しての飛行士(それも夢想癖と言う致命的な欠点を持った)であり、その体験、悟りが珠玉の宝石として(クリスタルガラス?)体現したというような気がします。
 ファンの立場から3つ程。
 別の側面を見せてくれるものとして「戦う操縦士」をお勧めします、第2次大戦が無かったなら彼の生涯はどうなっていたのか興味のあるところです、次に最近、妻のコンスエロの自伝が出ています、「気まぐれでわがままな美しいバラ」と言われ続けて来た彼女から見たサンテクスの実像を知る事が出来ます、それから関東の方には、箱根の「星の王子様ミュージアム」をお勧めします、題名から受けるイメージとは異なり、非常に真面目な展示館で幼年時代からの彼の生涯を忠実に再現しています(デートコースにも良いですよ?)。
 去年?でしたか、サンテクスに対する版権がフリーになったと聞いており、さらに新約が登場するのではと期待しています(個人的には堀口氏の戦前の訳が気に入っていますが)。
 最後に、彼の適性が飛行士には向いていなかった!と言うのも面白い話で事実彼の飛行歴は数々の大事故で彩られています。

 

わんためにさん、はじめまして。コメントありがとうございます。
なんと、数十年来のファンでいらっしゃいますか!
書いて頂いたコメントを読んでいるだけでも、かなり読み込んでらっしゃるのが分かります。
私は「星の王子さま」と「夜間飛行」と、今回のこの「人間の土地」を読んだ程度なんです。
でも本当に、「星の王子さま」だけでは、サン=テグジュペリのことは見えてこないですね。
「人間の土地」を読んで本当に良かったと思いました。

「戦う操縦士」も、妻というの自伝も知りませんでした。
自伝は「バラの回想 夫サン=テグジュペリとの14年」ですね。
すぐには読めそうにないのですが、いずれぜひ読んでみたいです。オススメありがとうございます。
箱根の「星の王子様ミュージアム」にも行ってみたいですねえ。
家からかなり遠いのが難点ですが…(^^ゞ

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