「という、はなし」吉田篤弘

Catégories: /

 [amazon]
筑摩書房のPR誌「ちくま」の表紙に、2年間に渡って掲載されていたフジモトマサル氏のイラストレーションの通しテーマは「読書」。そして描きあがったイラストを受け取った吉田篤弘さんが、文章を添えていたのだそうです。24枚のイラスト全てが動物の絵。そしてその動物が本を読んでいたり、手に持っていたり。そしてそこに添えられた短編小説のような小文には、何かしら心にひっかかり、そのまま残る文章が入っていました。
その中でも一番心に残ったのは、「何ひとつ変わらない空」という話の中で、今の情報過多ぶりを嘆くアンテナ氏の言う、「十年前はこれほどではありませんでした。いま思うと、まだほどよい時代だったんです。ああ、西の空にNHKの『みんなのうた』が飛んでゆくなぁ、とはっきり確認できたんですから」という言葉でしょうか。そして「待ち時間」という話の中の、「死因は、携帯電話による『情報過多死』。」

情報が多すぎる、選択肢が多すぎる、っていうのは、実はあまり幸せなことではないと思ってます。選択肢が沢山あるのは自由なように見えて、実はとても不自由なこと。ある程度限られている方が、却って自分の望むものが見えてきたりするもの。実際、例えばお店の販売員さんがお客さんの前に全部の商品を並べてしまったら、とても選びにくいですよね。お客さんの好みを掴んで2つ3つ出してみた時の方が、売れゆきは遥かに良いはず。でもインターネットというのは、全部の商品を並べられてしまった状態なわけで... 自分である程度遮断しない限り、情報だけがどんどん流れ込んできてしまう... そんなことを思っている時に丁度この本を読んだので、なんだかとてもタイムリーでした。
決して派手ではありませんが、本が好きな人でなければ書けないし、本が好きでないと反応しないだろうと思われる文章。吉田篤弘さんご自身が本がお好きなことがとても伝わって来ます。(筑摩書房)


+既読の吉田篤弘作品の感想+
「百鼠」吉田篤弘
「78」「十字路のあるところ」吉田篤弘
「という、はなし」吉田篤弘
「空ばかり見ていた」吉田篤弘
「それからはスープのことばかり考えて暮らした」吉田篤弘
「小さな男*静かな声」吉田篤弘
Livreに「フィンガーボウルの話のつづき」「つむじ風食堂の夜」「針がとぶ」の感想があります)

+既読のクラフト・エヴィング商會の感想+
「アナ・トレントの鞄」クラフト・エヴィング商會
「犬」「猫」クラフト・エヴィング商會プレゼンツ
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

| | commentaire(2) | trackback(0)

Trackbacks(0)

「という、はなし」吉田篤弘 へのトラックバック一覧:

URL TrackBack de cette note:

Commentaires(2)

まだ読んでないのですが、昨日、買ってきた所です。
何という偶然!
読んだら改めてお伺いさせていただきますね。

わあ、シンクロしてますね!
とても短いし、もっと読み流してしまうような作品かと思ったんですが
思っていたよりも心に残る部分が多くて良かったです。
picoさんの感想、楽しみにしてますね(^^)。

コメントする(要JavaScript)

Note


MAIL FORMBBS

購読する ATOM


Powerd by MovableType4.24-ja
Copyright 2004-2011 四季. All rights reserved.