「きみの歌が聞きたい」野中柊

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美和と絵梨が、創作ビジューのブランド「クレソプレーズ」を立ち上げて2年。「クレソプレーズ」は細々ながらも順調に業績を伸ばし、固定ファンもつき始めていました。もっぱら絵梨が創作し、美和は納品や事務作業全般の担当。奔放な絵梨と生真面目な美和は、対照的ながらも仲が良く、実は幼稚園以来30年弱の付き合いなのです。そして2人の間にいるのは、まだ少年のミチル。

「月の石」「アクアマリン」「赤瑪瑙」「クレソプレーズ」「真珠」という5つの章に分かれており、それぞれに美和、ミチル、絵梨、ミチル、美和と視点が入れ替わっていく連作短編集。
野中柊さんの本を読むのは初めてです。実は名前も知らなくて、前知識が全然ない状態で読んだんですけど、これがなかなか良かったですー。読み始めた時は、2人の女性が天然石のビーズのアクセサリーを作って販売しているという辺りで、安っぽく感じられてしまったんですが(そんなに書き散らされた設定というわけでもないのに、手垢がつきまくってるような気がしちゃって)、読んでるうちに印象が徐々に変化。例えば、作ったものを「商品」ではなく「作品」と呼ぶ2人に対して、冷ややかな笑みを浮かべる店主もいるというくだりもリアルだし、その双方の気持ちが実感として分るだけに、この作品のビーズやアクセサリーが単なる小道具ではなくなったという感じでしょうか。読み終えてみると、天然石のひんやりとした感触がぴったりくるような、静かな印象の素敵な作品でした。
沢山の死や別れの影がまとわりついていて、それも「静」のイメージを強くしていて、全体的にどこか物哀しい雰囲気なんですけど、その中で美和の存在がとてもふんわりと暖かく感じられて好きでした。彼女は、絵梨のわがままも、ミチルの若さも、難なく受け止めてしまえる包容力を持った存在。彼女自身にも、夫に恋人がいることが分かったり、実は色々とあるんですけどね... 読み終えた後も彼女の部分が読みたくて、なんとなくページを繰り続けてました。この心地よさは何なのかしら。

ただ、「クレソプレーズ」という言葉だけは、どうしても違和感。これは青林檎のような緑色をした天然石のことなんですが、私にとってその石は、あくまでも「クリソプレーズ」であって、「クレソプレーズ」ではあり得ないんですよね。まあ、野中柊さんにとっては、どうしても「クレソプレーズ」だという拘りがあるのかもしれないですが... 新井素子さんの「星に行く船」のシリーズの彼女が「レディ」ではなく「レイディ」であるように、ですね。(角川書店)

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繊細で脆く、儚いけど優しい関係。 でも実際に自分はこの中に絶対混じりたくない。 夫に恋人がいることを知って傷つきながらも、 諦念を抱いて日々を送る... » Lire la suite

Commentaires(4)

はじめまして。TBさせていただきました。
静かで、不思議な魅力がある本でしたね。
私も野中柊さんの本を読むのは初めてだったんで、最初はキレイで浅い印象を受けたんですが、
読み終わってみると他の作品も読んでみたくなる感じでした。

こちらのブログの他の本も参考にさせていただきますね。
またお邪魔させてください。

斎藤れいさん、はじめまして。TBありがとうございます。
ほんと不思議な魅力のある作品でしたよね。
「最初はキレイで浅い印象」って、分かります!
読み始めた時は、んんー、どうなんだろうって思ってたんですけど
最後まで読んでみると、また読み返さずにはいられなくて
自分でもなんだか不思議な感じでした。

またいつでもお気軽に遊びにいらしてくださいね。
私もお邪魔させていただきます♪

四季さん、こんにちは ^^
野中さん作品初めてでしたか。わたしは2冊目でした。
四季さんの書かれた感想を拝見すると、宝石に詳しい方ならではの
感想という印象を受けます。
わたしはどうも宝石に疎くて、名前からすぐ石の色合いなどが
浮かんでこないものもあって、とほほでした。
でも、作品自体はとても気に入った作品です ^^

tamayuraxxさん、こんにちは~。
野中さん、なかなかいいですね。美和にすっかり感情移入しちゃいました。
と言いつつ、2冊目に手が伸びてないんですが…(^^ゞ
宝石は、以前の仕事柄、多少詳しいんですよー。
…というか、その仕事始めたきっかけが、そもそも趣味でジュエリー作りをしてたことだったので…
私が扱ってたのは普通の宝石ばかりで、ビーズの方はあんまり知らないですけどね。
野中さんの書き方はきちんとしてるなあ、と、そういう意味でも好印象でした。

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