「スパイダー」 パトリック・マグラア

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ロンドンの下宿に住んでいるスパイダーは、過去の思い出が甦って目の前の光景に重なるような感覚に混乱して、日記をつけ始めることに。それはスパイダーの子供の頃の物語。その頃のスパイダーは、怒りっぽい父と優しい母との3人で、今の下宿から程近い街に暮らしていました。しかしスパイダーが12歳の時、父はあばずれのヒルダ・ウィルキンソンと出会い、夢中になり、なんと母を殺害してしまうのです。ヒルダは、我が物顔にスパイダーの家に居座るのですが...。

解説によると、物語分析には「信頼できない語り手」という言葉があるんだそうです。この物語の主人公・スパイダーは、まさにその「信頼できない語り手」。何も予備知識を持っていなければ、読者は当然1人称の主人公の言うことを信じて読み進めることになりますけど、どこかの時点で、その認識を覆されるわけですね。ミステリで言えば叙述トリック。普段、ミステリの感想を書く時に、「素晴らしい叙述トリックでした~」なんて書いてしまったら思いっきりネタバレなんですけど(書いちゃダメですよ!)、この作品に関しては、主人公に対する印象の変化が主眼なので大丈夫なんでしょう... きっと。本の裏にも解説にも主人公の狂気について思いっきり書いてあるし。...それでも「叙述トリック」という言葉を書くと、どこか後ろめたくなってしまうのは、ミステリ者のサガ?(笑)
この「信頼できない語り手」に、某有名古典ミステリが挙げられているのは当然として(もちろん作者も作品名も伏せられてましたが、読んでる人はぴんと来ますよね)、カズオ・イシグロの「日の名残り」(感想)も挙げられていたのにはびっくり。あれも叙述トリックだったのか...!(違います) でも言われてみると、確かに。納得。あの主人公は自信満々だし、プライドもすごーく高いし、何食わぬ顔で事実をさりげなく脚色してそうです。

まあ、叙述トリックなんて言葉が出てくる通り、この作品もミステリ的ではあるんですが、むしろサイコホラーですね。最初は普通の主人公に見えるんですが、もしかしたらこの精神状態は...? と感じ始めた頃から、どこからどこまでが事実なのか分からなくなっちゃいます。本当に殺人事件はあったのか、あったとすれば誰が殺したのか。そして誰が殺されたのか...。
でも私自身、叙述トリックもサイコホラーも苦手なこともあって、正直ちょっと読みづらかったです。主人公の狂気も、あまり楽しめず仕舞いでした。残念。(ハヤカワepi文庫)

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