「光の軌跡」エリザベス・ロズナー

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生まれた時から内向的で、科学の天才と言われながらも、今はアパートの部屋に引きこもり、極力人づきあいを避けて生活しているジュリアン。対照的に、生まれながらに外交的で、話すよりも早く歌い始めた妹のポーラ。2人は同じアパートの上下の部屋に住んでおり、普段はポーラがジュリアンの世話をしています。しかしプロのオペラ歌手を目指すポーラは、自分の声の可能性を試すためにヨーロッパへ。そしてポーラが留守の間は、それまでポーラの部屋を掃除していたソーラという女性が代わりにポーラのアパートに住んで、ジュリアンの世話をすることに。

ジュリアンが現在のような対人恐怖症になってしまったのは、父親の影響。父親自身は、死ぬまで2人に何も語ろうとはしませんでしたが、ナチス・ドイツ時代にアウシュビッツに収容されて生き延びた人間なのです。でも同じような家庭環境に生まれ育っていても、ジュリアンは何も語ろうとしない父に大きな影響を受け続け、ポーラはそれほどの影響は受けなかったんですよね。きっとポーラは、それまで家の中で何か重苦しい雰囲気を感じていたにしても、普段はジュリアンの感じていたような父の呪縛を感じることなく育ったんでしょう。事実を第三者から聞いた時に初めて、大きな衝撃を受けたポーラの姿が印象的でした。そして、それまでは妹のポーラが兄を守る立場だったのに、その出来事を境に力関係が逆転するのも興味深かったです。この2人と比べると、ソーラの存在感はやや弱かったかなと思うんですが、それでもソーラとジュリアンがお互いに心を開く過程がごくごくゆっくりと描かれていたのがとても良かったです。
物語はジュリアンとポーラ、そしてソーラの3人の視点から語られ、ごく短いパートで移り変わっていきます。。3 人の視点から、現在のことや過去のことが次々と語られて、徐々に全体像が見えてくる感じ。テンポが良くて読みやすかったです。重いものを含んではいますが、むしろ元々は詩人だというロズナーの描く美しい情景の方が印象に残りました。(ハヤカワepi文庫)

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