「翻訳家という楽天家たち」青山南

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翻訳家の青山南さんのエッセイ。unaG-2nd Seasonのうなさんが、前回のたらいまわし「笑の文学」に挙げてらした本。(記事) アメリカ文学にはとんと疎い私なんですが(じゃあどこが得意なんだと聞かないように)、読んだばかりのミラン・クンデラやパトリック・マグラアのエピソードも出てきて、とってもタイムリー♪(と言いつつ、どちらも今ひとつ楽しめなかったのですが...(^^;)
名前の表記を巡って深く静かに進行する論争の話とか、世界各国の翻訳事情の話、「こころ」で訳す話、日本の翻訳家が作家に出した質問状の話。こういう話は楽しいなー。でもでも、ロレンス・ダレルの翻訳をやっていた富士川義之氏が、どうしても分からない文章の意味を作者に問い合わせた時の返事にはびっくり。そういうものなんですか! でもって、青山南さんが各作家さんがどう答えるかコメント付きで予想してるのが、また楽しいのです。
あと私としては無視できないのは、「あるスピーダーの告白」。要するに速読者の話です。以前オハイオ州で速読チャンピオンだったという(アメリカには速読試合なんてものがあるんですか!)、ウィリアム・H・ギャスの話が、また面白いんです。速読者たちの読み方が凄くって。ええと、速読者たちが本を読むのは、まさしくサイクリングのようなもの。田園(本のページ)を突っ走り、目的地に向かって快走し、頬に風すら感じるのだとか。へええ、そうなんですかー。いや、分かるような気はしますが。(笑)
それと

「速読者は、名人が魚をさばくみたいに、本をさばく。エラは捨て、尾も、ウロコも、ヒレも捨てる。たちまちのうちに骨のない切り身がずらりと並ぶ」
その点、遅読者はエラとか尾とかウロコとかヒレばっかながめている、とギャスは言う。うーん、その通りだ。まったく。そういえばあら煮も好きだし。

なるほどねー。ああ、なんだか分かるような気がするなあ。
かくしてギャスは、「テキストを完全に無視することによって、チャンピオン・メダルを手にいれた」のだそうです。...それって、それって、一体何のために本を読んでるんですか!!(爆)

あとは、翻訳本の文章が合わなかった時に、「訳文がほんとうにひどい」「訳文が性にあわない」の2つの理由があるけれど、大抵の場合は、「訳がひどいんだよなあ」って吹聴して廻るという話。ああ、確かにそうかもしれないですねー。私はまず言わないけど。いえ、苦手な訳者さんというのはいますけど。
そして書評では、訳文に言及する人としない人は、はっきり分かれるんだそうです。これも、私はまず言わないタイプだな。(書評を書いてるとしたらですが) だって絶対的な評価として、その文章がに良いとか悪いとか、私には分からないんですもん。もちろん、好きな文章とか読み心地の良い文章はあるし、嫌いなタイプの文章、読みにくい文章もあります。何度読み返しても意味が伝わってこないような文章を読むと、「下手くそー」って思いますしね。でも、「読み心地の良い文章=自分の好きな文章」だけど、「自分の好きな文章=文章が上手」かどうかは分からない...。私が1人で「下手くそー」と思ってても、それが実はものすごい美文なのかもしれないし、「あの作家は文章が上手い」と言われるのを聞いて、「あんな読みにくい文章が?」と思うこともあるわけで。
まあ、私にとっては、自分の読み心地良い文章が一番大切だから、絶対的な基準はそれほど問題じゃないですけどね。
あ、でも書評の最後に訳について書くと、それが不思議なほどハマるんだそうです。一通りのことを書いた後で、最後に「訳文は読みやすい」とか、「なお、訳文に気になるところがいくつかあった」とか付け加えるのがコツ。(笑)

青山南さんの文章は、とても読みやすくて楽しかったので(書くとしたらこんな感じ・笑)、今度はうなさんが一緒に挙げてらした「ピーターとペーターの狭間で」や、青山さんが訳されてる本も、探して読んでみようと思います。(ちくま文庫)


+既読の青山南作品の感想+
「翻訳家という楽天家たち」青山南
「ピーターとペーターの狭間で」青山南
「眺めたり触ったり」青山南
「外人のTOKYO暮らし」青山南
「英語になったニッポン小説」青山南
「気になる言葉、気が散る日々」青山南
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Commentaires(6)

具体的にとりあげられる作家名は知らないことが多いんですけど、この人、語り口が楽しいので、けっこうサクサク読めてしまいますね。だいたいどのエッセイ集でも、読書とか翻訳についての内容が混ざってるので、それだけでも楽しめます。
『ピーターとペーターの狭間で』も面白いですが、読書そのものをテーマにしたエッセイ集『眺めたり触ったり』(早川書房)がものすごく面白いのでオススメですよ。

青山南。
青山さんは、このお名前だけでも、80年代、勝っておられました。ミナミちゃんですから。
かっこよすぎ…て、ださい。。
かくしてフトーな扱いを受けがちだし、それを利用しもしたかしれない、青山さん。

じつはネットに強い、めっさ強いお方です。
http://subaru.shueisha.co.jp/html/lost/lost_index.html

この記事を書こうと思ったことが何度もあるのだけど、
どうしても「そのまんま」な記事になるので、かけなかったです。
素晴らしいマイナー情報。ブンガクしています。

四季さん、コメントありがとうござます。
早速、読まれたんですね!
訳文の好みは、とにもかくにも「自分の呼吸」と合っているか、ということで、
そういう翻訳家さんを見つけたときは、嬉しいものです。
青山さんは、もちろんそのひとりです。

青山さんのすばる内のサイト「ロスト・オン・ザ・ネット」、
ワタクシも長年愛読していて、ご紹介しようと思ってたんです>overQさん、ありがとうございます
こんな読み応えのあるネット紀行がタダで読めるなんて、贅沢ですよね。

>kazuouさん
あ、私も知らない作家名が多かったです…
というか、きっとkazuouさんとは比べ物にならないほど知らない部分が多かっただろうと思うので、
安易に「私も」なんて言っちゃダメなんですけど。(笑)
それでも、「知らないから良く分からない」じゃなくて、「知らないけど、なんとなく分かる、読んでみたくなる」だったのが
すごく良かったです。そういうのって書き手によってハッキリ分かれますものね。
青山さんの著作も、訳した作品も、色々読んでみたくなっちゃいましたよー。
これは私にとっては、ちょっと珍しい現象かもしれないです。(エッセイにほれ込むことってあまりないので)
「眺めたり触ったり」もオススメなんですね。ぜひこれも探してみます。ありがとうございます♪

>overQさん
「ミナミちゃん」といえば、あだち充の「タッチ」しか知らなかった私なんですが(おぃ)
この「ミナミちゃん」、いいですねえ。お名前を逆手に取ってらっしゃるとこ、なんだか想像できます。(笑)

「ロスト・オン・ザ・ネット」、覗いてきました。すごーい、こんなのがあるんだ!
もう5年もやってらっしゃるんですねー。
相変わらずな名前が登場してるようなので、あ、あの人だなって感じで、読めば読むほど楽しくなってきそうです。
これはじっくりと読んでみますね。ありがとうございます~。
これで私もアメリカ文学に少し強くなれるかも?(少なくとも作家名は覚えてきました・笑)

というより、overQさんの守備範囲が一体どこまで広がっているのか、カバーしてないところなんてあるのか、
脳内を一度拝見させて頂きたいです、私…(笑)

>うなぎさん
早速読みました! 面白かったです~。
エッセイって普段あまり読まないし、読んだその時は面白く読んでても
その作者の他の本も読んでみようと思うことって、実はあんまりないんですけど
青山さんの本は、色々読んでみたくなっちゃいました。これは私にしては、とっても珍しいです!
きっとこれも「呼吸が合った」ってことなんでしょうね~。
訳されてる本は多分全然読んだことがないと思うので、そちらもぜひ読んでみたいです。
素敵な方を教えて下さって、ありがとうございます~。

「ロスト・オン・ザ・ネット」、うなさんも読んでらっしゃるのですね。
私もこれからは要チェック! じっくり読むのが楽しみです♪

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