「ピーターとペーターの狭間で」青山南

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今では当たり前のように存在しているジョン・アーヴィングの「ガープの世界」も、この題名に落ち着くまでには紆余曲折がありました。村上春樹氏は「ガープ的世界の成り立ち」、青山南氏は「ガープが世界を見れば」、斉藤英治氏は「ガープ的世界」、そのほかにも「世界、ガープ発」「ガープによる世界」「ガープによる世界解釈」など、様々な題名が登場。静かだが苛烈なる戦いを繰り広げていたのです。... という「ガープ戦史」など、青山さんの日々の翻訳の仕事を通して描く裏話エッセイ集。

「翻訳家という楽天家たち」(感想)に引き続きの青山南さんのエッセイ。「翻訳家という楽天家たち」よりも純粋翻訳裏話という感じですね。(イーディも登場しないし・笑) この本の最初のエッセイが「本の雑誌」に発表されたのが1981年2月ということで、25年も経ってしまうと、さすがに時代を感じてしまう部分も目についたんですが、それでもやっぱり面白かったです。
例えば、一番最初に出てくる「失語症で何が悪い」は、5つも6つも続く「Hi」をどうやって訳すかというエピソード。たまに出てくる「Hi」なら、「やあ」でも「よお」でもいけますが、この時訳してらした本は、登場人物たちのボキャブラリーが貧困で、「Hi」が5つも6つも続けて出てきてたんだそうです。それはやっぱり困りますよね。「やあ」「やあ」「やあ」「やあ」「やあ」「やあ」じゃあ、読んでる方もちょっと...。で、青山さんは、全部おなじ言葉に統一するのも味気ないからと、結局「やあ」「おやっ」「なんだい」「よお」「へえ」「ケェッ」、最後の合唱はみんなまとめて「参ったね」と訳してしまったとのこと。面白いなあ。特にこの最後の「参ったね」。そんな風に訳せちゃうんですね。
そして、私もリチャード・ブローティガンの「愛のゆくえ」はとても面白く読んだので(感想)、「ブローティガン釣り」や「翻訳書のタイトルについて」の章は、特に楽しく読めました。やっぱり「愛のゆくえ」という題名はどうかと思いますよねえ。原題を直訳すると「堕胎、1966年のある歴史ロマンス」なんですもん。「愛のゆくえ」では、人にもオススメしづらいし、そもそも売れるとは思えないのですが...。でも最初にこの題名を出したのは新潮社なんだそうですけど、ハヤカワepi文庫版も「愛のゆくえ」になってるんですよね。既にすっかり定着してしまったのかしら。そして一緒に、ボリス・ヴィアンの「日々の泡」と「うたかたの日々」の話も。この2つの題名は今現在どちらも健在ですが、今後どうなるのか楽しみですね。(という私も「日々の泡」の方が好きですが!) 

上のアマゾンとBK1のリンクはちくま文庫版になってますが、私が読んだのは本の雑誌社版。どちらにしても現在新刊では入手できないのですが...。次は、読書そのものをテーマにしたというエッセイ集、「眺めたり触ったり」を探してみようと思いますー。小説なら、気に入った作家さんの本を片っ端から読む私ですが、同じ人のエッセイを何冊も読むなんて、ちょっと珍しいかも。(エッセイの場合、話題がどうしてもかぶってきちゃうことが多いのがイヤなんですよね)(本の雑誌社)


+既読の青山南作品の感想+
「翻訳家という楽天家たち」青山南
「ピーターとペーターの狭間で」青山南
「眺めたり触ったり」青山南
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