「キス」キャスリン・ハリソン

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17歳の時に出会って結婚した両親は、「わたし」が生まれて半年後に離婚。母が貧しい牧師風情と結婚していることが許せなかった祖父母が、父を家から追い出したのです。父のことを愛し続けていた母は、それを忘れようとするかのように他の男性たちとのデートを重ねる日々。「わたし」が父に会ったのは5歳、10歳、そして20歳になった時。20歳の時、10年ぶりに父に会った娘は父に強く惹かれ、父もまた美しく成長した娘に目を奪われます。

作者自身の体験、それも近親相姦が描かれていると話題になったらしいですね。でも、確かに近親相姦ではあるんですけど、かなりそっけない文章で書かれてるので、そういうエロティックさはほとんど感じなかったです。ここに描かれているのは、愛情に飢えた子供が自分の中に溜め込んできた哀しみ。でもそっけない文章のせいなのか、ただ言葉が足りないのか、こちらに受け止める力がないのか、彼女が父親に魅了される気持ちがあまり伝わってこなかったです。あの父親の一体どこがそんなに良かったのかしら。失われていた父親に対する思いというのは確かにあるでしょうけど...。父親にしたって、あれじゃあただの、自分が欲しいものを我慢することを知らない子供じゃないですか。娘の思いをあんな風に利用する父親なんて、とんでもない。
原題はただの「Kiss」ではなく、「The Kiss」。作品そのものは全然感傷的じゃないのに、「その」キスというところに、作者の感情が出てるような気がします。キャサリン・ハリソンを呪縛した、1つのキス。そしてこの作品では、過去のことを語りながら、その文章は現在形という時制を取ってるんですけど、これは過去の自分を追体験するという意味があったのでしょうか? 小説として読んでもらうことが目的というよりも、自分の辛い過去を敢えて文章にすることで、自分自身がその呪縛を断ち切るのが目的の作品のように思えました。(新潮文庫)

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 心の奥深く。いや、もっと根源的な部分に迫りくる人間の持つ闇を描くノンフィクション作品、キャスリン・ハリソン著、岩本正恵訳『キス』(新潮文庫、新潮クレスト・ブッ... » Lire la suite

Commentaires(4)

四季さん、コンニチハ。
わたしはこの作品の淡々とした文体、かなり好みでした。
感情を押しこめているからこその苦しさみたいなものが、
ずんずんと迫り来るようでもあり。それを真っ向から耐えるようでもあり。
著者の長く続いた呪縛は、果たして断ち切れたのか…
読者として気になりつつも、祈り願いたい気がします。

ましろさん、こんにちはー。
あ、うん、そうですね、彼女の苦しさは伝わってきますね。
でも、だからこそ、こんな父親は許せないって思っちゃって
「この父親の一体どこがそんなに良かったのかしら!」になってしまったのではないかと…。

この作品を書くのは、きっと相当辛かったでしょうね。
でも、呪縛はきっと断ち切れたのではないでしょうか… というか、そう思いたいです。

四季さん、こんばんは♪
やっと感想書きました(汗)
私も岩本さんの訳文が好きで、テーマは重いけど予想よりずっと読みやすかったです。
目を覆うようなシーンを予想してたので(笑)

ノンフィクションなので、小説みたいに展開の是非は語りにくいのでしょうね。
その代り、何かを教訓として学び取りたいなと思って読みました。
この本に出会えて普段読まないノンフィクションを手に取ったのも新潮クレスト・ブックスのおかげです。

ちょっと余談ですが、来月刊行作品も岩本さんの訳らしいです。
ちょうど5作品目です。
『巡礼者たち』も楽しみにしております。

トラキチさん、こんにちは~。
感想が溜まってしまって大変そうですね。(笑)
すごい勢いで読んでらっしゃるからなあー。
もしかして、今年中にクレスト・ブックスの読破を目論んでます?(笑)

岩本さんの訳文は、実はあまり意識してなかったんですけど
そうか、「巡礼者たち」もそうでしたね。あれもいい作品でした。
意識しないで読んでしまった、というのは訳者さんに失礼かもしれないですけど
それも1つのいい訳文の条件とも言えるような気が…

ノンフィクションは、私も滅多に読まないんですが
こうやって出会えるのも1つの縁ですよね。
感想、拝見させていただきますね。^^

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