「昨日」アゴタ・クリストフ

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ある名もない村で生まれたトビアスの母は、盗人であり乞食であり、娼婦。母の客でただ1人農夫ではなかった男は村の学校の教師で、トビアスに必要な服や教材を揃えてくれます。彼の娘・リーヌは、トビアスのただ1人の友達。しかし、トビアスは12歳の時、彼が自分の父親であることを知ってしまうのです。トビアスは大きな肉切り庖丁を持って寝室に入ると、眠っている2人を貫くように刺し、その足で国境を越えてゆきます。

「悪童日記」の三部作とはまた違う作品なんですが、内容的にはかなり重なってますね。ここに登場するトビアスの故郷の国も、多分ハンガリーでしょうし、主人公が越境してること、自分の過去を作り上げてること、かなり空想的で、その空想を言葉として書き留めている面も一緒。そしてこのトビアスの姿は、「悪童日記」の時以上に、作者のアゴタ・クリストフ自身に重なります。自分の母国から追い出され、生活のために敵国の言葉を覚える必要に迫られ、その言葉で文章を書いているという点も同じ。おそらく彼女は、これからも同じような主人公、同じような世界を書き続けるんでしょうね。
作中にはいくつもの死が登場するんですが、アゴタ・クリストフはあくまでも淡々と描いていきます。まるで、その1つ1つに感傷的になることを読者に許さないみたい。トビアスが待ち焦がれてる空想の世界のリーヌも実際に現れるんですけど、その場面もトビアスの空想のよう。予想通りのアンハッピー・エンドなんですけど、失恋の悲しみよりも遥かに大きな悲しみが作品全体にあるので、それはむしろ瑣末なことに見えてきます。事実をあるがままに受け止めて生きていく2人の姿が印象に残りました。(ハヤカワepi文庫)

+既読のアゴタ・クリストフ作品の感想+
「悪童日記」アゴタ・クリストフ
「ふたりの証拠」「第三の証拠」アゴタ・クリストフ
「昨日」アゴタ・クリストフ
「文盲 アゴタ・クリストフ自伝」アゴタ・クリストフ
「どちらでもいい」アゴタ・クリストフ

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