「銀の犬」「親切な海賊」光原百合

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光原百合さんご自身が「声なき楽人(バルド)」シリーズと呼ばれているという、ケルト神話に題材を取ったシリーズ。「祓いの楽人」オシアンと、その相棒・ブランの連作短編集です。ケルト神話は大好きなので、この新刊は本当に楽しみにしてました~。

「祓いの楽人」とは、竪琴を奏でて歌を聞かせる一般的な楽人とは違い、竪琴の調べによって楽の音の神秘を操る人間のこと。自然や人間があるべき様から外れている時に、竪琴の音を聞かせて、あるべき姿に戻すという技を持つ楽人です。なりたいと思ってなれるようなものではなく、なれるのはそれ相応の天分を持った人間だけ。そしてオシアンはとても強力な「祓いの楽人」。諸国を旅しながら、時には死んだ後も頑なな人々の心を開き、彼らに道を示していきます。そして、楽師なのに声を出せないオシアンの代わりに村の人々と話すのは、小生意気で饒舌な相棒・ブランの役目。

「祓い」を必要とするような物語だから仕方ないとはいえ、どの物語もなんて切ない... ただ好きだっただけなのに、大切に思っていただけなのに、なぜか相手を傷つけることになってしまう登場人物たち。本心とは裏腹の言葉を口にしてしまい、心にもない行動をとってしまう、あるいは本当の思いが伝えられないまま終わってしまう。そしてそんな自分の行動を後悔し、死んだ後も留まり続けてしまう...。でも、彼らはただ、自分の深い想いを伝える術を知らなかっただけなんですよね。
未練や後悔の念が中心なのですが、ブランの存在が作品全体の雰囲気を明るくしてくれるようですし、オシアンの美しい透明感のある竪琴の音色が、その明るさを光に昇華させているよう。この世界は、本当にとても素敵でした。ケルト的な雰囲気は、5作目の「三つの星」で一番強く感じたかな。元になっているモチーフや登場人物の名前はもちろんなんですけど、他の4作に比べてダントツでケルトの雰囲気を感じたのは何だったんでしょうね...。「祭礼の島」に、どこかアヴァロンの雰囲気を感じてたからかしら。
でも、あとがきに「ケルト民話に触発されて生まれた一つの異世界の物語」とある通り、とてもケルト的でありながら、光原さんならではの世界です。あんまり自然に存在してるので、こちらもするんとその世界に入っちゃいましたけど、「祓いの楽人」というのも光原さんのオリジナルですよね? まだまだオシアンやブラン自身について分かっていない部分が多いので、彼ら自身の物語も読みたいです。そちらも、相当切ないものになりそうですが...。

そして今回も装幀がとても綺麗です~。最初見た時、「星月夜の夢がたり」とお揃いかと思いました。タイトルのフォントも似てますし。でも、出版社はもちろん、装幀した方も違いました。「星月夜の夢がたり」の暖色系の色合いとは対照的に、こちらは月明かりのような寒色系の色合い。これがまた、オシアンのイメージ、そして作品全体のイメージにぴったりですね。(角川春樹事務所)

そして「親切な海賊」は、幻冬舎のPR誌・星星峡に載っている不定期連載作品。こちらは「潮ノ道の日常」シリーズというシリーズ名なのだそうです。星星峡はジュンク堂に置かれてるんですけど、このジュンク堂に行く時間がなかなか取れなくて...! 最初に行った時は「明日来ると思います」、次に行った時は「もう全て配布してしまいました」... ガックリ。(でも、その後無事読めました!)
「銀の犬」ですっかり切ない気分になってたんですが、こちらを読んだら、暖かくてぽかぽか~。最初はただの困った頑固親父かと思った花嫁の父(結婚式はまだだけど)なんですけど、いいじゃないですか~。吼え合ってるアレクサンダーとジロー(犬です)を挟んで芹菜と話している場面で、すっかり気に入っちゃいました。婚約者の耕介も、最初予想したよりもずっと可愛い気があったし(失礼かな...)、この2人きっと上手くいきますよ! 表面上はお互いブツクサ言いそうだけど、根っこのところで信頼できる関係になりそうです。気がついたら、美弥そっちのけで意気投合して、酒を酌み交わしてるかも。(笑)
芹菜と零司も相変わらずのいいコンビだし(零司、頑張ってますね)、颯月さんも相変わらず、眠そうな割に力強くて素敵。本当は「あたりを打ち払うほどの美人」ぶりをもっと長時間拝めれば言うことないんですけど... 珈琲のカフェインもあんまり効き目なさそうだし、なかなか難しそうですね。(笑)


+既読の光原百合作品の感想+
「ありがと。 あのころの宝もの十二話」ダ・ヴィンチ編集部編(「届いた絵本」)
オール讀物11月号(文藝春秋)(「扉守」)
小説NON 11月号(祥伝社)(「希望の形」)
小説推理・オール讀物・星星峡(「1-1=1」「クリスマスの夜に」「オー・シャンゼリゼ」)
「最後の願い」光原百合
光原百合ベスト3@My Best Books!
「尾道草紙」尾道大学 創作民話の会
「銀の犬」「親切な海賊」光原百合
オール讀物 2007年10月号(「写想家」)
「嘘つき。 やさしい嘘十話」ダ・ヴィンチ編集部編(「木漏れ陽色の酒」)
オール讀物 2008年11月号(「旅の編み人」)
「新・本格推理 不可能犯罪の饗宴」二階堂黎人編・オール讀物 2009年8月号(「花散る夜に」「ピアニシモより小さな祈り」)
「イオニアの風」光原百合
「扉守 潮ノ道の旅人」光原百合
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

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Commentaires(11)

四季っち、こんにちは~。
TB(x2)ありがとうございます。

yuriさんの新作、よかったですよねぇ。
もう胸がきゅうううんとしちゃいました。
読んでる時はすっごく切なくて痛いんだけど、
1話読み終える毎にすっきりした気分になれます。
それに、ムードメーカーのブランがいるから
全然重苦しくならないし。
竪琴と言えば、今まではオルフェウスを思い出してましたが、
これからはオシアンですっ♪

「親切な海賊」はまた違った雰囲気で、いいですよね。
途中、ほろっときちゃいましたよ、私。
颯月さんの起きてる時間、どんどん減ってるのが気になって。
体大丈夫なのかな?
あ、でも私もカフェイン効かない仲間~。
(というか私の場合は逆に眠くなるんだけど)

四季さん、ご感想ありがとうございます!
楽しんでいただけたみたいで嬉しいです。
そうなんです、「祓いの楽人」(あ、すみません、ご感想のほうでところどころ『楽師』になっちゃってます・・・。重箱の隅でごめんなさい)というのは、ケルト伝説のほうにはありません。この小説のために設定してみました。
オシアンやブランの過去にもいろいろいろいろなことがあるのですが、はい、頑張って書きます(^^;)。

「親切な海賊」のほうもありがとうございます。入手にずいぶんご苦労をおかけしたみたいで、申し訳ない(^^;)。
自分で書いててアレですが、あの親父さんもフィアンセも、本当にかわいい人たちだなあと思います。

>sa-kiさん
ご心配ありがとうございます。颯月は単なる怠け者なんで、だいじょぶですよん(^^)。

そうそう、追伸。
私も今回の表紙を見て、『星月夜の夢がたり』とペアみたい、と思いました。どちらも本当にきれいな絵ですよね。いつも素敵な装丁にしていただいて、恵まれてるなあと思います。

>sa-kiっち
ようやく読めました~!
慌しく読むのは絶対いやだったので、ゆっくり読める日を待ってたんです。
ほんと、良かったですよね~~。もう読みながら、きゅんきゅんしちゃいました。
切なくて切なくて、痛いんだけど、そこにブランがいてくれて本当に良かったと思いました。
ちょっと口が悪いところも、和みますよね。
オシアンも大好き! ほんとこれからは竪琴といえばオシアンですね。
全く台詞がないのに、なんでこんなに存在感があるんだろうって思っちゃいました。
饒舌なブランにも、全然負けてないんですもん。(笑)

「親切な海賊」も、ほんと良かったです~。
やっぱりこのシリーズ、大好き。私も「海望」に行きた~い。
一緒に常連客になっちゃいたいですね。
そうそう、sa-kiっちは逆に眠くなっちゃうんですよね。
私もコーヒーを飲んでも特に目は冴えない、というか全く変化しないんですが…
颯月さん、こんなに寝ちゃうなんて、夜ちゃんと寝てないんでしょうか?
一体何をやってるのか、そちらにも興味が湧いてきました。
お仕事関係で遅くまで勉強なさってるのかな? いや、案外普通に寝てたりして…(笑)

>yuriさん
今回も素敵な作品をありがとうございました。ほんと良かったです~。
きゃーっ、ほんとだ、「楽人」なのに… いつの間にそんなことに… 
ということで早速直しました。大変失礼いたいしました。ごめんなさい!
そしてやっぱり「祓いの楽人」は、yuriさんのオリジナルだったんですね。良かった~。
ケルト神話は大好きなんですが、それほど詳しくもないので、自信がなかったんです。
音楽で物事の理を正すというのがものすごく自然だったので、素直に読んでたんですけど(笑)
そういえば聞いたことないよなあと、ふと気がついて。(抜けてますね、私)
オシアンが祓う場面(と書くとなんだか違うものみたいですが(^^;)、素敵ですね。
彼が竪琴を弾くたびに音が聞こえてくるような気がして。情景も目の前に広がるようでした。

装幀は、恵まれているというのも確かにあるのかもしれないですが
やっぱり元々のyuriさんの作品が素敵だからですよ~。作品のイメージにぴったりですもの。
そのまんま宝物になっちゃいますね。贈り物にも最適♪

「親切な海賊」は、あの親父さんが断然好きになっちゃいました。(笑)
こちらは3作目ですよね。本にまとまるのは5作ぐらい溜まってからですか?
1冊の本で通して読む日が待ち遠しいです。(もちろん「潮ノ道幻想譚」も!)
そして次に本になるのは、アテナなんですね。こちらもとても楽しみです♪

コーヒーを飲むと眠くなる/眠くならないについては、
「人力検索はてな」に興味深い記事が。
http://q.hatena.ne.jp/1144054952

ごとうさん、こんにちはー。
見てきましたよ。「気のせいじゃないですか?」という回答がすごい…(笑)
あの中に載ってた、ためしてガッテン!の「漢方流「コーヒー」再発見!」は、私も見たんです。
「自律神経のバランスを保とうとする」に、「なるほど~」でしたよ。
でもあそこのリンク先は既に消滅してる… 残念。
他にも色んなのがあって、面白いですね。UCCのサイトなんて、笑っちゃうほどいいこと尽くめだし~。(笑)
教えて下さってありがとうございます!

ホント、あんなにいつも寝てるなんて、颯月は日ごろ何やってるんでしょう?
と自分で書いておきながら(笑)。
締切前には徹夜で書いているのでしょうけれど。

「潮ノ道の日常」は、一つ一つが短いので7作ぐらいにするか、気軽に読めるシリーズだと思うので、5作ぐらいで薄い本にするか、迷うところです。
「幻想譚」のほうは5作ぐらいでそこそこの長さになりそうですが。
わー、がんばらなくちゃ。

yuriさん、こんにちは。
作者さまにも分からないほどの、眠りっぷりですか。(笑)
そういえば、随分前に読んだきりなので、うろ覚えなんですが…
吉本ばななさんの「白河夜船」の主人公も、ひたすら眠ってばかりいて
それは吉本ばななさんの、実体験でもあるそうなんですよね。
そして、大きく世に出た人間には、そういう体験をしてる人が時々いるんだとか…
颯月さんも、もしかしたら、いつか世に出る日のための準備段階なのかな?
なんてふと思ったり。
でも、個人的にはあまり華々しく出て欲しくはないですが! いつも海望に居て欲しいし。(笑)

わー、もし私の希望が言えるなら、多少薄くてもいいので、早く本で読みたいです!
(って、しっかり希望を言っちゃってます… スミマセン)
作品の長さとしては短めでも、このシリーズなら満足感がたっぷりありそう。
「潮ノ道」の2つのシリーズを合わせて読むと、町の奥行きがぐんと拡がりそうですし~。
本になってくれる日が待ち遠しいです(^^)。

四季さん こんにちは
遅ればせながら、「銀の犬」読みました・素敵でした~もう溜息が出るほど。
ケルトについては全然知らないのですが、少し興味がわいてきたので、四季さんのレビューも参考にさせていただこうと思っています。
なぜかTBがふたつ送信されてしまいました。申し訳ありません。修正お願いいたします。

EKKOさん、こんにちは!
本当に素敵な作品ですよね。思い出しただけでも、あの雰囲気にうっとりです。
普段あまりファンタジーを読まない方でも、この作品は楽しめたという方が多いし~。
この作品でケルトに興味が出てきたという方もちらほらいらして、嬉しい限りです♪

TB、1つ消しておきました。^^

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