「太陽神の乙女」「アプロディーテーの贈物」「ポセイドーンの審判」マリオン・ジマー・ブラッドリー

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アーサー王伝説を、アーサー王の異父姉にあたるモーガン・ル・フェイの目を通して描いた「アヴァロンの霧」が、物凄く面白かったマリオン・ジマー・ブラッドリー。こちらの作品は、トロイア戦争が題材です。トロイアの王女で、パリスの双子の妹のカッサンドラーの視点から描いていきます。元は「ファイアーブランド」という1冊の本だったものを、日本で刊行するために、「太陽神の乙女」「アプロディーテーの贈物」「ポセイドーンの審判」という3冊に分けたもの。
ブラッドリーの作品らしく、これもフェミニズム全開でした。女性が強いです。ちょっと男性が情けなさすぎるんですけど、物語そのものは面白かった。ブラッドリーにかかると、こんなに女性が生き生きしてくるんだなあと、改めてびっくり。

全体的な構造としては、「アヴァロンの霧」と同じく、大地の女神を信仰する女性たちと、その世界の終焉といった感じですね。徐々に母系から父系社会へと移行しつつある世界です。古くからの女神がないがしろにされるようになり、男性の論理に都合の良い神々が台頭。かつては自分の手で国を治めていた女王たちは、気がついたら自分の夫に権力を握られているという寸法。でも男性は外で働き、女性は家を守るという観念が浸透していくのと同時に、男性の庇護下にいることで満足する女性たちの姿が目立ってきます。主人公のカッサンドラーを始めとして、自分の足で立つことを望む女性たちもまだまだいるのですが。
いくらフェミニズムとは言っても、ここまで男性をこき下ろしてしまうというのもどうかなあと思うんですけど... これで男性がもっと魅力的だったら、言うことないのになあ。アキレウスに至っては、ただの戦狂いなんですよね。やっぱり「アヴァロンの霧」は、この辺りのバランスがすごく良かったように思います。でもこちらの作品の最後は、男性と女性が協力して築き上げる世界の予感を感じさせるんです。どうしたのかな、ブラッドリー、心境の変化?
井辻朱美さんによる解説も面白かったです。「アヴァロンの霧」を「源氏物語」、こちらを「風と共に去りぬ」に喩えててびっくり!(笑)

この作品を読んでたら、無性にギリシャ神話と「イーリアス」が読みたくなったんですけど、手元にあったのはギリシャ神話だけ。こちらのトロイ戦争周辺の部分は再読したんですが、記述が少ないし、そっけなさすぎて物足りない! やっぱり「イーリアス」かなあ。私が気が付いただけでもかなり設定が違うので、今、読んだらどんな感じがするのか気になります。こういう時に本が手元にないというのは痛い...
しかも、それを読んだら、「オデュッセイア」も読みたくなりそうなんですけど、こっちも手元にないんです。「オデュッセイア」繋がりで、ジェイムズ・ジョイスの「ユリシーズ」(こっちは未読)も読んでみたいんですが... とは言っても、続けざまに読むのはきつそうなので、そこまで辿りつくのはいつのことになるやら、ですが。(笑)(ハヤカワ文庫FT)


+既読のマリオン・ジマー・ブラッドリー作品の感想+
「白き手の巫女」「龍と鷲の絆」「希望と栄光の王国」マリオン・ジマー・ブラッドリー
「太陽神の乙女」「アプロディーテーの贈物」「ポセイドーンの審判」マリオン・ジマー・ブラッドリー
Livreに「アヴァロンの霧」の感想があります)

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Commentaires(4)

こんにちは。はじめまして。
マリオン・ジマー・ブラッドリー、懐かしい名前です。
「アヴァロンの霧」も面白かったし、
「ダーコーヴァ年代記」(創元推理文庫)がシリーズ半ばで刊行中止になったときは本当に残念でした。
ブラッドリーさん、もうお亡くなりになっているのですね。

木曽さん、はじめまして! コメントありがとうございます。
マリオン・ジマー・ブラッドリー、いいですねー。
という私は、SFはあまり得意じゃないので、「ダーコーヴァ年代記」はまだ読んでないんですが…

1999年に亡くなられたようですね。まだまだ色んな作品が読みたかったのに…
あ、「ダーコーヴァ年代記」は途中になってしまったんですね。それは残念ですよね。
私も「アヴァロンの霧」や「聖なる森の家」の間をぬうような作品を
もっと書いて欲しかったのに、もう読めないなんて残念です。

ファンタジーの起源…というようなことが、この頃ちょっとわかりつつあるんです。

こないだのグリム童話。
近代ドイツというバーチャルな看板を支えるため、急ごしらえで作った「心のふるさと」だったんじゃないか、という説。
すると、他の近代国家にも同じようなものがあるんだろうか。

調べてみると、当たりでしたヽ(´ー`)ノ
ケルト、アーサー王伝説、北欧神話、母権社会など…これらは、すべて19世紀に「再発見=発明」されたもののようです。
古代中世リヴァイバル。
どれも大ブームになってて、その余波は今でも続いています。
民族の起源を、近代国家向きに再編集したもの。
モダニズムのせつなさを埋めるもの。

日本では、柳田国男「遠野物語」、あるいは宮澤賢治がそれに当たると思います。
(先駆者は小泉八雲…近代国家から流れて来た外国人!)

近代ファンタジーの起源とされる、マクドナルドやダンセイニ、ウィリアム・モリスというような人たちも、
「古代中世リヴァイバル」の影響の下で活動しています。
学者で言えば、フレイザー「金枝篇」。
ジョイスがこの流れの最後を飾る人。

ただ、ふたつの世界大戦が、「心のふるさと」に陶酔することの危険をさとらせたようです。
それは、ふるさとを共有しない他者(ユダヤ人など)を排斥する原理にもなりかねないから。
この問題は、たいへん奥深く、難しいです。

マリオン・ジマー・ブラッドリーは、アメリカ人だし60年代だし、
この欧米人の「心のふるさと」を再々発見してしまったように思えます。
女権論的なのは、「闇の左手」などもあり、当時はそれが大きな流れだったんでしょうね。
「流れ」に敏感なタイプなんだと思います(笑)

…さて、この話って、面白いでしょうか(;・∀・)
このテーマでいくつか記事を書けるのですが、政治的だし、ちょっと難しすぎるかなとも思って躊躇しています。
サッカーのジダンの頭突き問題でさえ、このテーマと関係してなくもないw

と、ちょっと長々と書いてしまいました。自分用の下書きみたいなっちゃった…ごめんなさい。。

overQさん、こんにちは。
わあ、このお話、面白いです!!
古代中世リヴァイバルに関しては、なんとなく知ってたんですけど
(以前、大学の授業でそんな話を聞いた覚えがあるような、ないような… ←全然ダメ)
それがどういう意味を持つのかとか、その辺りは全然で。
(私の中途半端さがよく現れてますね・笑)

なんとそれが、近代国家が急ごしらえで作った「心のふるさと」だったなんて!!
いやー、そういう話を聞いてみると、ものすごく説得力がありますね。
ふたつの世界大戦との絡みも。
そういえば、ユダヤ人がイスラエルに帰ろうとする動きが強まったのも19世紀なのでは…
ヨーロッパだと、広義の意味でのゲルマン系がやっぱり強いと思うし
それぞれの神話や伝説にも、色んな共通点があるようだし…
最古の英国文学とされる「ベーオウルフ」も、実はイギリスの話じゃなくてデンマークの話なわけで
そういう風に、どこか歴史を共有してるというか、根っこは一緒って感じがありますけど、
ユダヤ人となると、どうしても心のふるさとが相容れないですものね。

そういえば、シュリーマンも19世紀の人じゃないですか?
彼の場合は、考古学者というより実業家のイメージが強いので
なんだかそういう動きに上手く利用された気がしないでもないですが…

日本にもそういう流れがあったとはびっくりです。
しかも小泉八雲! ぴたりとハマりすぎて怖いぐらいだ。(笑)

先日のドイツの話から、こんな風に発展するとは思いもしませんでした。
政治的な部分は確かに難しそうなんですけど(しかも私はサッカーを見てません…(^^;)
でもそうやって、全体から捉える話は、ものすごく面白いです。
ぜひぜひ書いてくださいませ! 楽しみにしてます~。

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