「ベーオウルフ 中世イギリス英雄叙事詩」

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デネ(デンマーク)の王フロースガールは、類まれな館を作らせ、これをヘオロットと命名。しかし日々この館から流れてくる賑やかなざわめきに苛立っていたカインの末裔・グレンデルがある夜、宴の終わった館を襲い、警護の戦士らを虐殺。夜毎に襲来を重ねることに。そしてなす術もなく12年経った頃。イェーアト族の王ヒイェラークの甥・ベーオウルフがグレンデル退治にデネの国へとやって来ます。

8世紀頃に成立したとされている、古英語の英雄叙事詩。英文学史上で一番古い作品とされています。私も大学時代に英語で読みました... とは言っても、古英語は読めないので、現代英語訳だけですが。そういえば日本語で読むのは初めてかも。
各章の冒頭に梗概があるので内容は掴みやすいんですが、物語自体は、すんなりと時系列に沿って進むわけじゃなくて、突然回想シーンが始まったり、将来的な災厄の予感が挿入されていたりするんですよね。中に含まれているエピソードも、ストーリーの展開上必然性があるものばかりではなく... というよりもむしろ関係ない脱線もとても多くて、こういうを読むと、「エルガーノの歌」(感想)のあとがきで井辻さんが叙事詩について書いてらした、「そういう物語は、とほうもなく非合理で、小説のようなちゃんとした結構(多分「構造」の誤植)をもっていなくて、断片的で--うまく言えないのですが--詩のような夢のような、奇形であいまいで、それだから美しいようなところがあります」 という言葉を実感します。私自身は、詩の形式で読めるのが嬉しいんですが、やっぱり初めて読む場合は、物語形式の方がいいかもしれないですね。検索していたらローズマリー・サトクリフの本がかなり評判が良いようで、抄訳とはいえ、そちらも読んでみたくなっちゃいました。
怪物や竜を退治するとなると華やかな英雄譚になりそうなものなんですが、この作品は、宮廷の場面も登場する割にあまり華やかではないです。色彩に乏しいのかも。炎の色とか金色は目につくんですが、基本的に少し暗く沈んだ色調のイメージ。無事に怪物や竜を退治するにも関わらず、どこか哀愁が漂ってます。(岩波文庫)

「指輪物語」のトールキンが、「ベーオウルフ」についての画期的な論文を発表してるらしいんですよね。それが読んでみたいなあ。そしてこの作品、カナダ・アイスランド・イギリスの合作で映画にもなっているらしいですね。かなり評判が良いみたいなので、観てみたい!→Beowulf & Grendel公式サイト

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Commentaires(2)

ベオウルフは、序詩が大好きです。
どこかで拾われた子が王になり、あっという間に時は過ぎ、死んだ時は宝を積んだ船で、やっぱりどことも知れない彼方へ流れていく。

あれが、アングロサクソンの古い歌(エクセター本とか)の典型的なスタイル。
人生の前半と後半、その栄枯盛衰を、独特の詠嘆をもって歌うんです。

ベオウルフの本文も、前半は巨人を倒してやがて王になり、
王としての50年間は十行で過ぎ去り(笑)、
後半は竜と戦って命を落とす。

物語の語り方に断片性があるのは、やっぱり竪琴で歌ってたから…と思います。
今のロックの歌詞が、歌詞だけ見ると意味不明だけど、
曲と一緒に聴くと、キーワードの羅列だけで、それなりの雰囲気がちゃんと出るのと同じ作用、と思う。

ベオウルフ(あるいは古英語の詩)の記事は、たぶんもうすぐ書く予定です☆

overQさんはベオウルフも読んでらっしゃいましたか。
というより、古英語の詩についてもお詳しいんですね。すごーい。
私の場合は好きと言いつつ、まだまだ個別の作品を見てる程度…
一応大学では古英詩を専門にしてたのに、なんでこんなに詳しくないのやら(^^;。
あ、でもちょっとしたヒントがあれば、見えてくるものがありそうなんです。
overQさんの記事を拝見するのが、とっても楽しみです!

ああ、そうですね、やっぱり竪琴で歌っていたからなのでしょうね。
ロックの喩えに、ものすごーく納得です。
やっぱり実際に歌われてるのを聞いてみたくなっちゃいますね。
観客の反応を見つつ、今のあの形が作り上げられていったんでしょうしね。

>王としての50年間は十行で過ぎ去り(笑)、
そうそう、ここが可笑しいですよね!
そもそも、若い頃から壮年期への移行も、あっさりしすぎなぐらいあっさり。
せめて章ぐらい新しくしようよ、って言いたくなっちゃいます。(笑)
こういうのに比べると、現代の普通の小説ってほんと読みやすいです。(笑)

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