「かなしき女王 ケルト幻想作品集」フィオナ・マクラウド

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フィオナ・マクラウドが、スコットランドの西にある小島、古代の聖者コロンバにゆかりの聖なる心霊の地・アイオナに滞在して書いたという、ケルト民族の神話や伝説、民間伝承に根ざした物語13編。

滅び行く運命をもった「ケルトの暗い哀しさ」を訴えつづけた... と井村君江さんの解題に書かれていたんですが、まさにそういった一種独特の雰囲気がある作品集でした。全体的に陰鬱な空気が重く立ち込めているような感じ。でもそういった中に、一筋の光が射しこむような美しさがあるんですよね。ちなみに題名の「かなしき女王」とは、ケルト神話の女戦士で、スカイ島の名前の元にもなったというスカァアのこと。他にも英雄クウフリンやゲール人やピクト人、ヴァイキングなんかも登場して、いかにも「ケルト幻想作品集」。
でも、読んでみると、これが実はとってもキリスト教色が濃い作品だったんですね。びっくり! ここまでとは、正直想像してませんでした。もちろん、元々多神教だったところにキリスト教が入り込んで、アーサー王伝説なんかもかなりキリスト教的な色合いが濃いんですけど、そういうレベルではないんです。「最後の晩餐」という作品なんて、幼い子供がキリストの最後の晩餐の場面に立ち会うことになる話だし、「漁師」という作品も、谷間を歩いていたおばあさんがキリストとは知らずにそこにいた男性に声をかけるという物語。ケルトとキリスト教の融合、というのとはちょっと違うような... でも、これってキリスト教側の視点から書かれてる作品ではないと思うんですよね。あくまでもケルト側からの視点から描かれているという印象。そしてそれが、この作品集の独特な部分なのではないかと...。
私がこの中で好きだったのは、「精」という作品。これはキリスト教の僧侶たちが前面に登場しながらも、逆にケルト精霊の力を再認識させられるような作品。キリスト教の狭義の懐の狭さと、精霊たちの器の広さが対照的です。主人公のカアルが「青い人々」に出会い、受け入れられる場面、そしてキリスト教の僧侶・モリイシャが青い人々を見る場面がとても美しくて印象に残りました。
この本を訳した松村みね子さんは、アイルランド文学を数多く日本に紹介したという方なんですが、歌人としても活躍した方なのだそう。普通の文章はもちろん作中の詩がとても美しくて、歌人だという紹介を読んで、その美しさに納得でした。(ちくま文庫)


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「ケルト民話集」フィオナ・マクラウド

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Commentaires(2)

残酷で哀しく美しい短編集でした。幻想的な雰囲気を堪能しました。「滅び行く運命」という言葉に納得です。それだから暗く哀しい印象があるのですね。

キリスト教的な色合い、感じます。四季さんの「ケルトとキリスト教の融合、というのとはちょっと違う」「あくまでもケルト側からの視点」というお話、とても興味深いです。「精」についてのお話も、ほんとにそうでした。確かにキリスト教側からの見方じゃないですね。

四季さんのおかげでこの本に出会えて感謝です。読んでよかったです。
表紙もきれいでした♪

ぱせりさん、こんにちは~。
滅びの美、でしょうか。暗く哀しいんだけど、同時にものすごく美しくて…。
読んでからもう3年経つので、細かい部分は薄れてしまってるんですけど、
全体的なイメージはまだしっかり残ってます。まさにこの表紙のイメージかも!
この表紙がまた綺麗なんですよね。^^

フィオナ・マクラウドだってキリスト教信者でしょうに、ケルト側の視点から書いているのも興味深いですね。
ケルト復興だったんですね。
久々に読み返したくなってきちゃいましたー。
ぱせりさんの感想、またゆっくり拝見させていただきますね。

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