「ギリシア悲劇IV」下 エウリピデス

Catégories: / / /

 [amazon]
3巻(感想)に続く、エウリピデスの悲劇作品集。収録作品は、「エレクトラ」「タウリケのイピゲネイア」「ヘレネ」「フェニキアの女たち」「オレステス」「バッコスの信女」「アウリスのイピゲネイア」「レソス」「キュクロプス」の9作。

全体的に3巻の方が面白かった気がします。「タウリケのイピゲネイア」も、先日読んだ岩波文庫版(感想)の方が断然良かったし。とは言っても、この作品の場合は、多分訳の問題ではなくて脚注の問題なんですよね。岩波文庫版の脚注の入り方が、ほんと絶妙だったんですもん。うるさくなく、でも知っておくといい情報を確実に伝えてくれて。こちらのちくま文庫版は脚注がとても少なくて、これはこれでとても読みやすいんですが、それだけに「へええ、そうなんだ」的な部分が少ないのが寂しい。だからといって、岩波文庫全般に脚注が絶妙かといえば、そうとは言えないところが難しいのですが... 多すぎて、本文の邪魔になるものも多いので。(笑)

9作中、トロイア戦争関連が7作。特にアガメムノン一家を巡る作品が多くて、とても興味深かったです。まず前述の「アウリスのイピゲネイア」は、出帆を待つギリシア軍が風凪のために数ヶ月足止めを食らった時に、アガメムノンの娘・イピゲネイアが生贄として犠牲になった物語。これがアガメムノン家の悲劇の元凶となっています。(もっと遡れば、アガメムノンがクリュタイメストラを先夫から奪い、その子を殺したこと、さらに父や先祖の所業なんかもありますが) そしてアガメムノンが殺害されるアイスキュロスの「アガメムノーン」(感想)に続く形で、「エレクトラ」「オレステス」「タウリケのイピゲネイア」といった作品群があります。アイスキュロスの作品群にも、この「アガメムノーン」と3部作になる「供養する女たち」「慈愛の女神たち」といった作品があるので、ここはぜひ読み比べてみたいところ。
そして設定として面白いのは、「ヘレネ」。実はヘレネはトロイアへは連れ去られておらず、神々によってエジプトに匿われていたという話。トロイアに連れ去られたのは、空気から作った似姿。でも人間は誰もそんなことを知らず、ギリシャ軍もその空気のヘレネを取り返すために奮闘していた、というわけです。こういう風にヘレネを庇うような作品って時々ありますね。やっぱり美女は得なのかー!

最後の作品「キュクロプス」は、完全な形で現在までに残されている唯一のサテュロス劇。サテュロス劇とは、滑稽卑俗な所作と歌によって演じられる劇で、古代ギリシアの悲劇競演の際には、悲劇が3作上演され、最後にサテュロス劇が演じられて観客たちの緊張を解いたのだそうです。日本の能における狂言のような存在なんですかねえ? 本の形で読む限り、それほど滑稽卑俗といった感じはしないのですが、狂言だって今の時代に見たら、そんな感じはしないですものね。(ちくま文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「ギリシア悲劇I」アイスキュロス
「ギリシア悲劇II」ソポクレス
「ギリシア悲劇III」上 エウリピデス
「ギリシア悲劇IV」下 エウリピデス

+既読のエウリピデス作品の感想+
「タウリケーのイーピゲネイア」エウリーピデース
「ギリシア悲劇III」上 エウリピデス
「ギリシア悲劇IV」下 エウリピデス

| | commentaire(0) | trackback(0)

Trackbacks(0)

「ギリシア悲劇IV」下 エウリピデス へのトラックバック一覧:

URL TrackBack de cette note:

コメントする(要JavaScript)

Note


MAIL FORMBBS

購読する ATOM


Powerd by MovableType4.24-ja
Copyright 2004-2011 四季. All rights reserved.