「トールキンによる『指輪物語』の図像世界」W.G.ハモンド/C.スカル

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実は文学作品だけでなく、多くの絵も描き残しているトールキン。実は、息子であるクリストファー・トールキンが「J.R.R.トールキンの著作研究は、絵をぬきにしては完全でありえない」と言っているほど。母に絵の描き方や飾り文字の書き方を教わって以来、描き続けてきたというトールキンの絵を200枚ほど、ほぼ年代を追って順に紹介していく本です。

トールキンが文学作品だけでなく、絵も多く描き残していたとは知りませんでしたが、実際に見てみると、見覚えがあるものが結構あってびっくり。まず中つ国の地図もそうですし、あとモリアの入り口のドゥリンの扉の絵とか!(この扉の絵は、トールキンの絵を元に、製版工が少し手を入れたようです) あと、昨日の「シルマリルの物語」の表紙の紋章も!(上巻がエルウェで、下巻がフィンゴルフィン) 実は既に色々と登場していたのですねー。
子供の頃の絵にも素敵なのがあったんですが、惹かれるのはやっぱりシルマリルの世界が浮かび始めた頃からの絵。絵を通してもイメージを膨らませていたんですね。「ニグルの木の葉」のニグルと重なっていたのは、文学面だけじゃなかったのか。「妖精物語について」の中で、妖精物語は本来文字で表現するのに向いているとした上で、もし絵画で表現しようとした場合、「心に描いた不思議なイメージを視覚的に表現するのは簡単すぎる」ので、逆に「ばかげた作品や病的な作品」なんて書かれてたんですけど、この本に掲載されているトールキンの絵を見る限り、「ばかげた作品や病的な作品」どころか、とても美しくて存在感のある絵が多くて驚かされるのですが! このまま挿絵として使われていないのが残念なほどですよぅ。もう本当にイメージにぴったりの絵が多くて嬉しくなってしまいますー。ちなみに、この本の表紙に使われてる絵もトールキンの作品です。これは「シルマリルの物語」の「マンウェの館」。絵を見るだけでも、神話の世界がトールキンの中に徐々に形作られてきた過程も見えてくるような気がしますし、それぞれの絵が描かれた状況にも詳細に触れられているのが嬉しいところ。絵画から見たトールキンの半生、とも言えそうです。
そして、文学作品から少し離れて、子供たちのために描いた絵が、またすごく可愛いんです。トールキンの遊び心たっぷりの楽しい作品ばかり。特に一連の「サンタ・クロースからの手紙」がいいなあ。サンタ・クロースや北極グマ、エルフなどキャラクターによって書体をまるで違うものにしているのも楽しいところ。子供たちに対する愛情もたっぷり。やはりこういった、本人も相手も楽しんでいるのが伝わってくるところから、傑作が生まれるのでしょうね。こういった作品は、絵本になっているようなので、今度ぜひ読んでみようと思います!(原書房)


+既読のJ.R.R.トールキン作品の感想+
「農夫ジャイルズの冒険 トールキン小品集」J.R.R.トールキン
「妖精物語の国へ」「妖精物語について」J.R.R.トールキン
「シルマリルの物語」上下 J.R.R.トールキン
「ビルボの別れの歌」「指輪物語『中つ国』のうた」J.R.R.トールキン
「ブリスさん」「サンタ・クロースからの手紙」J.R.R.トールキン
「仔犬のローヴァーの冒険」J.R.R.トールキン
「ホビットの冒険」上下 J.R.R.トールキン
「指輪物語」J.R.R.トールキン
「サー・ガウェインと緑の騎士」J.R.R.トールキン
「終わらざりし物語」上下 J.R.R.トールキン

+既読の指輪物語関連作品の感想+
「トールキン神話の世界」赤井敏夫
「トールキンによる『指輪物語』の図像世界」W.G.ハモンド/C.スカル
「トールキン指輪物語事典」デヴィッド・デイ
「図説 トールキンの指輪物語世界 神話からファンタジーへ」デイヴィッド・デイ

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