「夢の仕掛け 私のファンタジーめぐり」井辻朱美

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現実世界とは一味違った別世界を作り出し、その中で生きる楽しみを謳歌するのは、ファンタジーと呼ばれる物語群の特徴。しかし現実世界を脇にのけて遊ぶための空間に、一体どのような意味があるのでしょうか。60年代頃から英米でファンタジーが復興し始めたその理由、なぜ今ファンタジーなのかという理由もあわせて、様々なファンタジー作品を9つの角度から考察していく本です。

枠物語、死後譚、多重人格、人形、動物、場所... といったキーワードから様々なファンタジー作品を考察していくのですが、今回「おお」と思ったのは、二重構造に関する話。ファンタジーには枠物語も多くて、その場合、明らかに構造が二重になってるんですが、死後譚も過去へのタイムスリップも、そういえば二重構造だったんですねー! 死後譚は、この世とあの世を対比することによって、この世の生の喜びを再確認させるし、過去へのタイムスリップも、現在と過去という二重構造で、「現在」にとらわれた自分を解放する1つの手だて。逃避ではなく、あくまでも別の選択肢によって自分を拡大する試みです。そしてさらに、多重人格は2つの物語を並列して語り、人形は主人公の内部の人格を外に投影し、動物は絶対的な無私の愛を持って主人公を守るという二重構造... そのようにして空間や時間その他を二重にすることこそが、ファンタジーの特徴だということ。いや、よくよく考えてみれば当然のことなんですが。

そして多くの枠物語では、枠と中身は全く異質なもので、枠が現実なら、中の絵は夢と幻想。外から眺めている限り、絵は作り物にしか見えないけれど、枠そのものも、絵を真実らしく見せるという役割を持っています。そしていったんその枠の中に入ってしまうと、その枠の中にこそ広大な真実の世界があることに気づくもの。でも、時に枠は裏返され、内側こそが外側のような感覚をもたらすんですよね。ここで引き合いに出されていたのがナルニアシリーズ。確かに、たとえばカスピアンは、異世界から来る子供たちにアラビアンナイトの魔神のような感覚を持っていたし、カスピアン自身、一度「イギリス」が一度見てみたいと願ってたんですよね。その他にも、同じような印象が何度も...。ナルニアを読んだ時に漠然と感じていた「枠の裏返し」がすっきりと解説されていました~。(NTT出版)


+既読の井辻朱美作品の感想+
「風街物語 完全版」井辻朱美
「エルガーノの歌」「パルメランの夢」井辻朱美
「幽霊屋敷のコトン」「トヴィウスの森の物語」井辻朱美
「ヘルメ・ハイネの水晶の塔」井辻朱美
「遙かよりくる飛行船」井辻朱美
「ファンタジーの森から」「ファンタジーの魔法空間」井辻朱美
「夢の仕掛け 私のファンタジーめぐり」井辻朱美
「魔法のほうき」井辻朱美
「ファンタジー万華鏡」井辻朱美

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