「まっぷたつの子爵」「木のぼり男爵」イタロ・カルヴィーノ

Catégories: /

  [amazon] [amazon]
トルコ人との戦争で砲火を浴びて真っ二つになってしまったメダルド子爵。生き残った右半身は故郷に帰還するのですが、その右半身は完全な「悪」だったのです... という「まっぷたつの子爵」と、12歳の時に昼食に出たかたつむり料理を拒否して木に登り、それ以来樹上で暮らし続けたコジモの物語「木のぼり男爵」。

以前「不在の騎士」を読んだ時に奇妙な世界の片隅でのkazuouさんにお勧め頂いていた本。その3冊で歴史小説3部作とされているんですが、話としては全然関連がなくて、それぞれに独立しています。
いやあ、どちらも面白かった。「まっぷたつの子爵」は寓話だし、「木のぼり男爵」はもう少し現実的な話(?)ながらも色々とメッセージが含まれているんですが、それ以前に物語として面白かった。特に気に入ったのは「まっぷたつの子爵」。これは表紙を見て分かる通り児童書なんですけど、いや、すごいですね。真っ二つになってしまった子爵の身体は、完全な「善」と「悪」に分かれちゃう。普通に考えれば「善」の方が良いもののはずなのに、完璧な「善」は実は「悪」より遥かに始末が悪かった、というのがスバラシイ。まあ、結局のところ、完全な存在ではあり得ない人間にとっては、善悪のバランスが取れた人間の方が理解しやすいですしね... それに「悪」に対しては立ち向かって行こうという意欲が湧くかもしれないけど、完全な「善」を前にしたら、いたたまれなくなっちゃうものなのかもしれないな... 中でも、「善」のために気晴らしができなくなって、自分たちの病気を直視せざるを得なくなった癩病患者の姿がとても印象的でした。
「木のぼり男爵」も面白かったです。現代インドの作家・キラン・デサイの「グアヴァ園は大騒ぎ」では、主人公は木に登ったきりほとんど何もしようとせず、家族によって聖人として売り出されてしまうんですけど、こちらのコジモは実に行動的。木がある限り、枝から枝へとどこへでも行っちゃう。樹上にいても読書もできれば盗賊と友達となれるし、海賊と戦うこともできるし、恋愛すらできちゃうんですよね。ヴォルテールやナポレオンが登場したのにはびっくり。そしてアンドレイは、「戦争と平和」のアンドレイだったんですね。ただ、こちらは少し長かったかな。もう少し短くまとまっていても良かったような気がします。(晶文社・白水uブックス)


+既読のイタロ・カルヴィーノ作品の感想+
「宿命の交わる城」イタロ・カルヴィーノ
「不在の騎士」イタロ・カルヴィーノ
「レ・コスミコミケ」イタロ・カルヴィーノ
「なぜ古典を読むのか」イタロ・カルヴィーノ
「まっぷたつの子爵」「木のぼり男爵」イタロ・カルヴィーノ
「イタリア民話集」上下 カルヴィーノ
「魔法の庭」イタロ・カルヴィーノ
「見えない都市」イタロ・カルヴィーノ
「マルコヴァルドさんの四季」カルヴィーノ
「冬の夜ひとりの旅人が」イタロ・カルヴィーノ
「柔かい月」イタロ・カルヴィーノ
「カルヴィーノの文学講義」イタロ・カルヴィーノ
「パロマー」カルヴィーノ
「くもの巣の小道」イタロ・カルヴィーノ
「むずかしい愛」カルヴィーノ

| | commentaire(4) | trackback(1)

Trackbacks(1)

「まっぷたつの子爵」「木のぼり男爵」イタロ・カルヴィーノ へのトラックバック一覧:

URL TrackBack de cette note:

まっぷたつの子爵 (1971年) (文学のおくりもの〈2〉)(1971)イタロ・カルヴィーノ商品詳細を見る トルコ人との戦争で敵の砲弾を浴びたぼくの叔父、??... » Lire la suite

Commentaires(4)

「完全な善」は「完全な悪」と同じぐらい、始末に負えない天。『まっぷたつの子爵』は、寓意もわかりやすくて物語としても面白いのが素晴らしいです。
『木のぼり男爵』は、『まっぷたつの子爵』よりも、現実的な要素が強い小説ですが、こちらも劣らず面白い!
木にのぼったまま降りてこない主人公、という時点で実にファンタスティックな設定なんですが、その後の展開を単なるファンタジーにしないで、あくまで現実的な処理をしているのが、にくいですね。それでも、ところどころに現れる空想的な出来事がとてもいいです。とくに読書に夢中になる盗賊なんか、すごくいい味を出してました。物語自体も「ちょっとほろ苦い」ところが、また魅力的です。

kazuouさん、こんにちは~。ようやく読みました!
ほんと、寓話でありながら、物語としても十分面白いのが素晴らしいですね。
読んでいて楽しかったです。

>あくまで現実的な処理をしているのが、にくいですね。
本当にそうですね!
木に登り続けてるってだけで、十分非現実的なはずなのに、なんだかまるで現実にあった話みたい。
我に返ってみると、実際問題それは無理だろう、と思う部分があるのに
読んでいる間は、すっかり乗せられちゃってましたよ。
そして、最後のあの幕引きが粋だなあと思いました。ちょっとほろ苦くはありますが…
読めてよかったです(^^)。

うおう、二年前のkazuouさんと四季さんのやり取りも読めちゃって、ラッキーです。笑
善半がやって来た時には、最初はこれで事態が好転するのか?と思ったのですが、
完全なる善も迷惑、というところが良かったですね。
パメーラの賢さも印象的でした。

うお、つなさん!
ごめんなさい、お返事したつもりだったのにーっ。
どうやら「確認」だけして満足してしまったようです…
すみません、すみません。(平謝り)
で、そうなのでした。kazuouさんに色々教えていただいているのでした。
kazuouさんはカルヴィーノは全部読んでらっしゃるんじゃないかな? 頼りになります。^^
善半があんなにタチが悪いとは、ほんと想像もしてなかったですよねー。
うん、パメーラの賢さも印象に残りますね!

コメントする(要JavaScript)

Note


MAIL FORMBBS

購読する ATOM


Powerd by MovableType4.24-ja
Copyright 2004-2011 四季. All rights reserved.