「青い花」ノヴァーリス

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旅人の語る物語、そしてその中に登場する青い花に心を奪われた20歳の青年・ハインリヒは、その夜、夢をみます。それは泉のほとりに生えた1本の淡い青色の花の夢。ハインリヒがその花に目を奪われていると、花は姿を変え始め、中にほっそりとした顔がほのかにゆらぎます。夢の青い花のことを考えてふさぎがちになった息子の気分を変えるために、母親はアイゼナハから郷里アウクスブルクに住む実の父のもとに、ハインリヒを連れて旅立つことに。

13世紀初め頃の中世ドイツが舞台の物語。この物語の主人公のハインリヒは、実在のほどは明らかでないにせよ、 13世紀初めに行われた歌合戦で、当時の著名な恋愛詩人たちを相手に競ったという、伝説の詩人なのだそうです。
「うるしのうつわ うたかたの日々の泡」のkotaさんが、たらいまわし企画・第25回「『ドイツ』の文学」で挙げてらして(記事)、その後イギリスの作家ジョージ・マクドナルドが影響を受けたと知って、ますます興味が湧いた本。硬質な質感を持つ作品だと仰ってましたが、確かに...。モチーフという意味では水の方が前面に出てきてるし、水のイメージも強いんですけど、なぜか鉱石のイメージが強く残ります。実際に鉱山の場面もあるんですけどね。とにかく、ものすごく美しい作品でした。特に作中で語られる「アリオン伝説」と「アトランティス物語」、「クリングゾール・メールヒェン」、そして水にまつわる2つの暗示的な夢がすごいです。美しくて幻想的。隠者の本を見る場面も良かったなあ...。
主人公のハインリヒが旅をする物語なんですが、旅を描くのが目的ではなくて、ハインリヒの成長を描くための旅。特に内的葛藤があるわけでもなく、常に受身で、しかしその中で自分の学ぶべきものを謙虚に学んでいくハインリヒの姿は、まるでシュティフターの「晩夏」(感想)の主人公のようだなあ... と思ったら、「晩夏」の主人公の名前もハインリヒではないですか! 何か関連が? それともドイツ人にとって「ハインリヒ」というのは、日本における「太郎」ですか?(笑)
年代的には、ノヴァーリスが1801年に29歳の若さで亡くなって、その4年後にシュティフターが生まれてます。

でもこの「青い花」は、未完の作品なんですよね。本には遺稿も併せて収録されていて、それを読むと完成しなかったのが残念でならないほど。今は美しさに目を眩まされちゃってるし(笑)、そうでなくても、一度読んだだけでは理解しきれたとは到底言えないので、折にふれて読み返してみたいですね。作中で語られているノヴァーリスの文芸観も面白いです。(岩波文庫)

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