「魔法のほうき」井辻朱美

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ちょっと間があきましたが、またしても井辻朱美さんのファンタジー論を。ファンタジー作品の中における空間や時間について、「場所の力」「時の輪の外へ」「魔法の思考」という3章で読み解いていく本です。
井辻さんのファンタジー論を読むのも、これで4冊目。これが一番分かりやすく面白かったです。書かれた順番に読んでいるので、そう感じるのも当然かもしれませんが、これが一番論として整理されているように思いますね。コンパクトながらも中身は濃くて、第27回日本児童文学学会賞受賞の前作「ファンタジーの魔法空間」に決して劣らないものに仕上がっているのではないかと! 初っ端から「大草原の小さな家」や「赤毛のアン」、名探偵ホームズがファンタジーと書いてあるのには驚いたんですが、井辻さんが考える「ファンタジー」の定義の1つとして、↓こんな文章があり、納得。

「ファンタジーのファンタジー性とは、魔法への言及にかかわる問題ではない、ということだけを言っておこう。ファンタジーとはなにより、<ひとつの(別)世界>になりたがる作品のことだ。」(P.7)
「つまりこういうことだ。アンにせよ、ローラにせよ、ホームズにせよ、ある物語が時代や国を超えて愛されると、テキストだけであることをやめて、 <世界化>しようとする傾向があり、その<世界>の中身はなにもホンモノの周辺知識である必要はないということだ。」(P.9)

ファンタジー作品についての評論なんですが、例としてノンフィクション作品を取り上げていたり、E. ジェンドリンという現代の心理学者が創始したというフォーカシング心理学が取り上げられているのが、井辻さんの幅の広さを伺わせて興味深いところ。フォーカシング心理学におけるCAS(clearing a space)とは、自分のいる空間を改変することで、自分自身の中身も改変してしまうこと。それは例えば、日常的にお気に入りのカフェに行くという行動もそうなのだそうです。そして実際の行動だけでなく、イメージの中でも有効で、自分が気がかりに思っていることをイメージの中に並べて、それを何かに入れて隠してしまったり、そこから距離を置くことを想像するだけで、その問題に対する感じ方はかなり変わってくるのだそうです。そのイメージ操作のツールこそが、ファンタジーにおける魔法。その魔法に強い力を発揮させるためにも、意識を柔軟にして <現実=一枚岩>という感覚を溶かしてしまう必要があるのだとのこと。
こうやって考えてみると、ファンタジーと一言で言っても実に奥が深いです。こういったことを知った上でファンタジー作品を読めば、今まで気付かなかったことにも気付けそう。ということで、まだまだ読む予定。中で紹介されてた作品も読みたいな。(廣済堂出版)


+既読の井辻朱美作品の感想+
「風街物語 完全版」井辻朱美
「エルガーノの歌」「パルメランの夢」井辻朱美
「幽霊屋敷のコトン」「トヴィウスの森の物語」井辻朱美
「ヘルメ・ハイネの水晶の塔」井辻朱美
「遙かよりくる飛行船」井辻朱美
「ファンタジーの森から」「ファンタジーの魔法空間」井辻朱美
「夢の仕掛け 私のファンタジーめぐり」井辻朱美
「魔法のほうき」井辻朱美
「ファンタジー万華鏡」井辻朱美

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