「図説 トールキンの指輪物語世界 神話からファンタジーへ」デイヴィッド・デイ

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以前にも「トールキン指輪物語事典」を読んだんですが(感想)、デイヴィッド・デイは、有名なトールキン研究家らしいです。ギリシャ神話や北欧神話、ケルト神話、アトランティス伝説、ベーオウルフやアーサー王など世界の神話や伝承、そして聖書の世界と、トールキンの作り出した指輪物語の世界を比較研究した本。

「シルマリルの物語」のメルコールの造形が堕天使ルシファーにそっくりだとか、ヌメノールの没落がまるでアトランティスみたいだとか、そういうのに気づく人は多いと思うんですが、この本によると実は逆! そういう既存の神話や伝承に影響を受けたのではなくて、トールキンが作り出そうとしたのは、それらの神話や伝承が生み出されてくるための背景となる歴史だった、というのが面白かったです。例えば、「シルマリルの物語」では、中つ国で目覚めたエルフたちが、ヴァラールたちによって西に来るように言われ、実際かなりの数のエルフは西へと渡っていくんですけど、最初から行くつもりのなかったエルフたちもあれば、行くつもりだったのに出遅れたエルフたちもあり、結局行けず仕舞いだったエルフたちもいるんです。なんでこんな複雑なことするんだろうと思っていたら、どうやら古代アングロサクソン人や初期ゲルマン人などに伝わるエルフ信仰に、うまく対応させようとしたみたいですね。「シルマリルの物語」で色々な動きを書くことによって、様々なエルフ伝承に一貫性を与えようとしたんですって。そうだったんだ! それから、単純明快なおとぎ話となってしまった出来事にも、背後に存在していたはずの歴史を作り出そうとしていたとか。たとえば、ロスロリアンの黄金の森にいるガラドリエルとアルウェンという2人の美女、深い森や魔法の鏡などの要素は、「白雪姫」にみられるもの。実際にはガラドリエルとアルウェンは対立関係にはないんですが、そういうことが元になって「白雪姫」の話が出来ていったとしているのだとか。そして、本当に眠っていたのは、白雪姫ではなく7人の小人。ヴァラールのマハルの作り出したドワーフの父祖の7人であったとか... へええ。
あと、ホビット庄が、トールキンが生まれ育ったイギリスの田園地帯とすれば、裂け谷はオックスフォード、ゴンドールとミナス・ティリスはフィレンツェの辺り、モルドールはオスマントルコとか、地理的な考察も面白かったです。そっかー、初期のドゥネダインの王国は古代ローマ帝国で、分裂してしまった帝国を再統一したアラゴルンは、シャルルマーニュ(カール大帝)だったのか。そして中つ国に神聖ローマ帝国が再建されたのね。(笑)(原書房)


+既読のJ.R.R.トールキン作品の感想+
「農夫ジャイルズの冒険 トールキン小品集」J.R.R.トールキン
「妖精物語の国へ」「妖精物語について」J.R.R.トールキン
「シルマリルの物語」上下 J.R.R.トールキン
「ビルボの別れの歌」「指輪物語『中つ国』のうた」J.R.R.トールキン
「ブリスさん」「サンタ・クロースからの手紙」J.R.R.トールキン
「仔犬のローヴァーの冒険」J.R.R.トールキン
「ホビットの冒険」上下 J.R.R.トールキン
「指輪物語」J.R.R.トールキン
「サー・ガウェインと緑の騎士」J.R.R.トールキン
「終わらざりし物語」上下 J.R.R.トールキン

+既読の指輪物語関連作品の感想+
「トールキン神話の世界」赤井敏夫
「トールキンによる『指輪物語』の図像世界」W.G.ハモンド/C.スカル
「トールキン指輪物語事典」デヴィッド・デイ
「図説 トールキンの指輪物語世界 神話からファンタジーへ」デイヴィッド・デイ

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