「ポセイドン」上下 ポール・ギャリコ

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アフリカと南アメリカの港を巡る1ヶ月のクリスマス・クルーズを終えて、リスボンへと向かっていた巨大客船・ポセイドン号が、海底地震による激しい津波によって転覆。船体はさかさまになり、あちらこちらで犠牲者が続出します。生き残ったのは、ダイニングルームにいた船客たちなどわずか数十名のみ。いつ助けが来るのか、いつまで船は沈まずに耐えられるのか、一切分からない状況の下で、そのまま助けを待っているつもりのない人々は、スコット牧師の先導で、かつて船底だった部分へと上り始めます。

1972年の「ポセイドン・アドベンチャー」、2006年の「ポセイドン」と2度に渡って映画化された作品の原作。私も「ポセイドン・アドベンチャー」はテレビでやってるのを観たことがありますが、あのパニック映画の原作を書いたのが、「ジェニィ」や「トマシーナ」のポール・ギャリコだったとはびっくり! ポール・ギャリコだって、ファンタジー系の作品ばかり書いているというわけではないけれど、でもやっぱりイメージ的には、そっち系なんですよね。でも、ポール・ギャリコ自身は元々はスポーツライターだったのだそう。そしてこの作品も、表面上はパニック物なんですけど、それぞれの人物の描き方・掘り下げ方は、やっぱりポール・ギャリコならではでした。

映画の方は実はあんまり良く覚えてないんですが、でも割とすっきりとした... というのは言葉が変ですが、ストレートなパニック物に作られていたような記憶があります。最後も感動のラストだったような... いかにもハリウッド映画らしい感じですね。皆を先導する牧師は、牧師というにはアウトロー的なところがあって、でもそこが逆に強いリーダーシップを発揮して、皆を先へ先へと導いていたような。でも原作では、ちょっと違ってました。(映画の方の私の記憶が間違ってる可能性も十分にありますが!) 原作のスコット牧師は、プリンストン大学時代からのフットボールの名選手。オリンピックでも2度の金メダルを獲得していた、全米のスター。今までの人生で、何も挫折を知らずにここまで来てしまったような人物なんです。そんなスターが、なんで牧師という職業を選んだのか? まずそこからして興味をそそります。そしてスコットがタイタニック号の転覆という出来事を神からの試練と受け取るのはいいんですけど、そこでまるで神に挑戦するかのような、神に対して取引を申し出ているかのような祈りの言葉を唱えるんです。この部分は、おそらく日本人が読むよりも欧米人が読んだ方がショッキングなんじゃないでしょうか。それ以外にも色々あって、表面上は非の打ち所のない人物なのに、でも実はつかみ所のない不思議な人物なんですよねえ。今まで自信満々で「勝ち組」としての人生を歩んできたスコットと、牧師としてのスコットがどうしても相容れなくて、まさにその部分が彼を自滅させたようにも見えてきます。それだけにラストは映画のような「感動のラスト」ではなくて、ほろ苦いラスト。あ、もちろんスコット牧師だけでなく、他の面々の部分の描き方・掘り下げ方も「ほろ苦さ」に繋がるものなんですよね。パニック部分も面白いんですが、とにかく人間的興味に引かれて読み進めた作品でした。(ハヤカワ文庫NV)


+既読のポール・ギャリコ作品の感想+
「トマシーナ」ポール・ギャリコ
「セシルの魔法の友だち」ポール・ギャリコ
「マチルダ ボクシング・カンガルーの冒険」ポール・ギャリコ
「われらが英雄スクラッフィ」ポール・ギャリコ
「幽霊が多すぎる」ポール・ギャリコ
「猫語の教科書」ポール・ギャリコ
「ハリスおばさんパリへ行く」「ハリスおばさんニューヨークへ行く」他2冊 ポール・ギャリコ
「七つの人形の恋物語」「スノーグース」ポール・ギャリコ
「トンデモネズミ大活躍」「ほんものの魔法使」ポール・ギャリコ
「ポセイドン」上下 ポール・ギャリコ
「ザ・ロンリー」ポール・ギャリコ
「「きよしこの夜」が生まれた日」ポール・ギャリコ
Livreに「ジェニィ」の感想があります)

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