「風の影」上下 カルロス・ルイス・サフォン

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ダニエルは6歳の時に母を亡くし、バルセロナの旧市街に古書店を経営している父と2人暮らし。そんなダニエルが初めて父に連れられて「忘れられた本の墓場」を訪れたのは1945年、ダニエルが10歳の時のことでした。見捨てられた宮殿のような建物の中には無数の書棚が迷宮のように入り組んで並んでおり、この建物に初めて来た者は気に入った本を1冊選び、その本を一生守っていくのがきまり。そしてダニエルが選んだ本は、フリアン・カラックスという作家の「風の影」という本でした。家に帰って本を読み始めたダニエルは、その作品にすっかり魅了されます。しかし生粋の古書店主の父も、フリアン・カラックスという名を聞いたことがなかったのです。

12月の扉の檀さんのオススメ。この作品のあらすじを初めて読んだ時、一番惹かれたのは「忘れられた本の墓場」という場所だったんですけど、そして実際読んでみても、やっぱりそこがとても魅力的でした!

内部は蒼い闇につつまれている。大理石の階段と、天使の像や空想動物を描いたフレスコ画の廊下が、ぼんやりうかんで見えた。管理人らしき男のあとについて宮殿なみの長い廊下を進むうちに、父とぼくは、円形の大きなホールにたどりついた。円蓋(ドーム)のしたにひろがる、まさに闇の教会堂(バシリカ)だ。高みからさしこむ幾筋もの光線が、丸天井の闇を切り裂いている。書物で埋まった書棚と通廊が、蜂の巣状に床から最上部までつづき、広い階段、踊り場、渡り廊下やトンネルと交差しながら不思議な幾何学模様をなしていた。その迷宮は見る者に巨大な図書館の全貌を想像させた。(上巻P.14-15)

んんー、やっぱりこの部分かな。
青春・恋愛要素を含んだダニエルの成長物語でありながら、「風の影」とその作者・フリアン・カラックスを巡るミステリ・サスペンスも含んでいて、盛り沢山。でもドキドキわくわくでページをどんどんめくるタイプの作品ではなくて、むしろ静かに進行していく感じなので、詰め込みすぎの煩さはないですね。正直、このミステリ・サスペンス部分にはそれほど惹かれなかったんですけど(でも後半に向けて盛り上がってくると、やっぱり面白い)、ダニエルがフリアンの謎に迫ることによって、2人の人生が交錯し、ダニエルとベアトリスの恋が、謎の作家・フリアンとペネロペの恋との二重写しに見えてくるという構造が良かったです。そしてそんな物語の背景にあるのは、光と影の街・バルセロナ。まさに二重構造にぴったりの舞台ではないですか。物語の各所にこのスペイン内戦の傷跡が感じられるのも物語の深みを増しているようですし、ピカソも通いつめたというクアトロ・ガッツが登場するのも嬉しいところ。ダニエルの周囲の面々も魅力的でしたしね♪


生まれてはじめてほんとうに心にとどいた本ほど、深い痕跡を残すものはない。はじめて心にうかんだあの映像(イメージ)、忘れた過去においてきたと思っていたあの言葉の余韻は、永遠にぼくらのうちに生き、心の奥深くに「城」を彫りきざむ。そして--その先の人生で何冊本を読もうが、どれだけ広い世界を発見しようが、どれほど多くを学び、また、どれほど多くを忘れようが関係なく--ぼくたちは、かならずそこに帰っていくのだ。(上巻P.20)

この部分、グッときませんか~?(笑) (集英社文庫)

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