「ミノタウロスの森」「幻獣の森」トマス・バーネット・スワン

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紀元前1500年ミノア時代の後期、大森林に逃げ込んだ海賊を討伐しに行っていたクレタ王国のミノス王の弟・アイアコスは、数年間の行方不明ののち、耳の先が尖り、緑がかった褐色の髪をしている子供を2人連れて帰ってきます。姉のテアが16歳、弟のイカロスが15歳になった時、2人が暮らす宮殿にアカイアの侵略軍が入り込み、2人は翼のついた魚に乗って宮殿から脱出。しかし行き着いたのは、父からは行ってはいけないと言われた「けものの国」だったのです... という「ミノタウロスの森」と、その前日譚の「幻獣の森」。

「薔薇の荘園」(感想)がものすごく素敵だったトマス・バーネット・スワン。「ミノタウロスの森は」はスワンの処女長編なのだそう。「薔薇の荘園」の詩的な雰囲気に比べると、こちらはちょっと物足りないかなと思うんですが、それでも幻の獣たちが暮らす森林の情景はなかなかでした。ここから「薔薇の荘園」のあの雰囲気に繋がっていくんでしょうね。
ギリシャ神話に登場するミノタウロスは、牛頭人身の怪物。ミノス王の妻と牛の間に生まれたミノタウロスは迷宮に閉じ込められて、アリアドネの糸を使ったテセウスに退治されたというエピソードがあります。でもここに登場するミノタウロスのユーノストスは、神話のミノタウロスと同じ牛頭人身の獣ながらも、「気は優しくて力持ち」。戦闘時には獰猛果敢になるんですけど、普段はごくごく穏やかな存在。こういう作品を読んでると、元々はこういう存在だったのに、こんなことがあったからギリシャ神話のエピソードが生まれてきたのかな、なんて思えるのが楽しいところです。(迷宮を作ったダイダロスがちゃんと存在してるらしいのが、また面白い)

「幻獣の森」は、「ミノタウロスの森」にも登場した木の精(ドリュアス)のゾーイが回想する、ユーノストスとドリュアスのコーラ、そしてクレタの王子アイアコスの物語。「ミノタウロスの森」で、ユーノストスがテアとイカロスにその両親のことを一通り語っているので大筋では一緒なんですが、年齢その他の設定に色々と食い違いが! これはもしやユーノストスが姉弟に生々しい話を聞かせたくなくて脚色したのかしら?と思ったんですが... 著者あとがきによると、そういう意図はなかったようです。
いずれにせよ、もっと人間の王子とドリュアスの素直な悲恋物かと思っていたのですが、実はあまり気持ちのよくない物語でした... 恋に恋するコーラの身勝手な話だったのか! とはいえ、「ミノタウロスの森」では、あまり上品とは言えない年寄り女だったゾーイが、こっちではすごく魅力的で良かったです。哀しいんですけどね。 (ハヤカワ文庫FT)


+既読のトマス・バーネット・スワン作品の感想+
「薔薇の荘園」トマス・バーネット・スワン
「ミノタウロスの森」「幻獣の森」トマス・バーネット・スワン

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