「カレワラ」上下 リョンロット編

Catégories: / / / / /

[amazon] [amazon]
大気の乙女・イルマタルは、波の上へと降り立った時に、澄んだ海の面を吹き渡る風によって身ごもります。しかし赤ん坊は700年もの間生まれようとせず、乙女は水の母として東に西に、北西に南へと泳ぎ続けることに。そしてようやく生まれたワイナミョイネンは、生まれた時から老人の姿をしていました。

世界三大叙事詩の1つ、フィンランドの叙事詩「カレワラ」。(他の2つは「イーリアス」と「ラーマーヤナ」) 以前にも読んだことはあるんですが(感想)、それは子供用の物語形式だったので、ちょっと欲求不満状態だったんですよね。ぜひ詩の形で訳されているものを読みたいと思っていたら、ようやく読めました! 嬉しい~。小泉保さん訳のこの本は、大満足。随分前に絶版になっているし、市内の図書館にも置いてなかったので、入手は大変だったんですけどねー。

「カレワラ」で一番面白いのは、魔法のかけ方。関係する事物の起源の呪文を唱えなければならないんです。例えば鉄による傷を治すなら、まず「鉄の起源の呪文」を唱え、続いて「鉄を罵倒する呪文」で鉄を支配。続いて「血止めの呪文」「軟膏の呪文」「守りの呪文」「包帯の呪文」という一連の呪文で治療することになります。しかもこの呪文というのは歌なんです。さっさと血止めをすればいいようなものなのに(笑)、みんな朗々と歌い上げちゃう。カッコいい。でもその事物の起源を知らなければ、傷を治せずに死んでしまうわけです。つまり必要な呪文を次々に唱えられる呪術師こそが、最も強いヒト。...この「カレワラ」の中で、ワイナミョイネンが必要な言葉を求めてアンテロ・ピプネンという巨人の口から身体の中に入ってしまう場面があるんですが、この時ピプネンは正体不明の異物を出してしまいたくて、「駆除の呪文」「不明な危害の根元の呪文」「自然の病気での保護の呪文」「厄病呪病の根元の呪文」「災禍抑制の呪文」「救援の呪文」「生地へ駆逐する呪文」「報復の呪文」「一般魔除けの呪文」「閉じ込めの呪文」「運び出しの呪文」「起動の呪文」「脅迫の呪文」「困惑の呪文」と次々に唱えて、その実力を見せ付けることになります。(結局排除できないんですけどねー・笑)
1~2章で軽く天地創造についても語られてるんですが、こういう呪文の中で新たな創造の一面が分かるのがまた面白いんですよね。

小泉保さんの訳はとても読みやすくて面白いし、解説も勉強になります。ただ、この世界の神々については、あんまり体系的に語られていない... というか、時々話のついでに登場する程度なんですよね。どうやら「カレワラ」こそが神話というわけでもないみたい。神話と重なる部分も多いはずだけど、これはあくまでもフィンランドの伝説に基づく叙事詩。純粋な神話も読みたいんだけど... そういう本はあるのかしら?(岩波文庫)

| | commentaire(4) | trackback(1)

Trackbacks(1)

「カレワラ」上下 リョンロット編 へのトラックバック一覧:

URL TrackBack de cette note:

2007年21冊目 カレワラ物語―フィンランドの国民叙事詩発売元: 春風社価格: ¥ 1,890発売日: 2005/05posted with Socialtu... » Lire la suite

Commentaires(4)

カレワラ好きーの森山です。
フィンランド神話でまとめられている本と言えば,
名著普及会から出版されていた『世界神話伝説体系』があげられます。
というか,他にはあまり記憶にないです。
これの31巻がフィンランド神話だったはず。
ただ古い本ですし,既に絶版なので図書館に頼るしかないかもしれません。
僕は大学の図書館で目にした覚えがあります。
フィンランド神話と同根のエストニア神話も出版物は記憶にないですね……。
残念なことに。
これがギリシア神話とか北欧神話とかケルト神話なら幾らでも名前が挙がるんですけど。
カレワラは日本では非常にマイナーです(泣)。
面白いんだけどなー。
ケルト神話における井村君江さんや鶴岡真弓さんみたいな紹介者がいなかったのも原因かもしれません。

シベリウスの交響曲にカレワラに元を取った「レミンカイネン組曲」や「ポポヨラの白鳥」があります。
こちらも参考までに。

わーい、カレワラに反応して下さってありがとうございます。
おお、「世界神話伝説体系」という本があるのですね。
カレワラが31巻ということは、一体何巻まであるんでしょう。
ものすごーくそそられる本のような予感…(笑)
…でも調べてみると、市内の図書館には全然入ってませんでした。ううう。
あ、今調べてたら↓こんな本がありました。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4140018550/
こんなのもいいかもしれないですね。
今回読んだ岩波文庫版を訳してらっしゃる小泉保さんの本だし!
読んでみる価値がありそうです。

ほんと、カレワラも面白いのに、知られてなくて残念ですね。
他の神話だと、いやってほど資料があるのに。
…ありすぎてもなかなか読めなくて大変なんですが。(笑)
本当は、今年はケルト神話関連を読み進めようと思ってたんですが
北欧神話やカレワラも捨てがたくて困っちゃいます。えへへ。

シベリウスの交響曲、ぜひ聞いてみますね! ありがとうございます。

仕事中にぼさっとカレワラのこと考えていて,
最後のマルヤッタの逸話がまんまキリストであることに気がつきました(苦笑)。
ヴァイナモイネンが海の彼方へ去っていくのは,
フィンランドがキリスト教化されて固有の文化を失ったことを意味しているんでしょう。
それでも歌とカンテレが残ったというのが象徴的です。

……フィンランドに行きたいなあ。
フィンランド語勉強してカレワラを原文で読んでみようかしら。

森山さんも再読されたんですね!
ふふふ、神話スキー仲間ですね♪(や、森山さんの知識には全然敵いませんが)
そうそう、最後のあの部分はそのまんまキリストですね。マルヤッタは処女懐胎してますし。

>ヴァイナモイネンが海の彼方へ去っていくのは,
>フィンランドがキリスト教化されて固有の文化を失ったことを意味しているんでしょう。

まさにそうだと思います。そして海と海で、始まりのところと呼応してますよね。
今回読み返してみて、思ってた以上にキリスト教の影響が出てるのに気づきました。
最初に読む時って、ほんと筋を追ってるなあ… と。

フィンランド、いいですね。カンテレの音も聞いてみたいなあ。
フィンランド語は、今までやってらっしゃった言語とまた別だけど…
そこからの派生で、エストニア神話も読めるようになるかもですよー。

コメントする(要JavaScript)

Note


MAIL FORMBBS

購読する ATOM


Powerd by MovableType4.24-ja
Copyright 2004-2011 四季. All rights reserved.