「シャルルマーニュ伝説」トマス・ブルフィンチ

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シャルルマーニュ(カール大帝)は、その十二勇士と共に、「ロランの歌」を始めとする様々な作品の中で歌われている人物。ここに収められているのは、15~16世紀のルネサンス期にイタリアで作られた3つの詩、プルチの「大モルガンテ」とボイアルドの「恋するオルランド」、アリオスト「狂えるオルランド」、そして「リナルド」「ユオン・ド・ボルドー」「オジエ・ル・ダノワ」というフランスの3つの武勲詩(キリスト教の騎士たちの武勇をものがたった叙事詩... ほとんどのものが作者不明)を元に、ブルフィンチが物語形式に書き上げたもの。サラセン人と呼ばれるイスラム教徒たちとの戦いや、個々の英雄たちの冒険、そしてロマンスが次から次へと描かれていきます。

「ロランの歌」(感想)と「狂えるオルランド」(感想)は既読なんですが、「大モルガンテ」と「恋するオルランド」は未読。それもそのはず、どうやら日本語には訳されてないみたいなんですよね。たとえ物語調に書き直されたものであれ、こういった紹介本があるというのは、やっぱりとてもありがたい! ブルフィンチのこういった物語の編集・再話能力はすごいですね。綺麗にまとまっちゃってます。とはいえ、元々の素材の扱いにくさなのか(特に「狂えるオルランド」はかなり複雑ですし)、それとも訳者の違いなのか、おそらく私自身の知識も足りなかったんでしょう、同じブルフィンチの「ギリシア・ローマ神話」や「中世騎士物語」ほどには読みやすくはなかったのですが。

シャルルマーニュ伝説は神話のように古くないし、シャルルマーニュ自身、実在してると分かってる人物。でも、祖父のシャルル・マルテルはフランスに侵入したサラセン人を撃退しているそうだし、ブルフィンチは何人かの「シャルル」の事蹟が合わさって、現在のシャルルマーニュ伝説ができたのだろうと推測していました... なるほどね。
いろんなところに各地の神話や伝承の影響が感じられて面白かったです。びっくりしたのは、アーサー王伝説のモルガナ(モーガン・ル・フェイ)が登場してるところ! 特に「オジエ・ル・ダノワ」では、オジエ・ル・ダノワがモルガナによってアヴァロンに連れ去られることになるんです。まるでケルト神話で、オシアンが妖精の女王・ニアヴによってティル・ナ・ノグ(常若国)に連れ去られたように。要は浦島太郎伝説と同じで、乙姫さまと暮らしてる間に何百年も過ぎていた... というヤツなんですが、それにしてもなぜモーガン・ル・フェイ? アーサー王と一緒に今もアヴァロンに暮らしてるの? あと、「ファタ・モルガナ」が、蜃気楼を意味する言葉だというのも面白いなあ。
シャルルマーニュには様々な逸話が伝わっているのですが、実際のシャルルマーニュは詩の中のように自分のドラ息子を溺愛して判断を間違えたり、あくどい臣下を贔屓にして挙句の果てに騙されるなんてこともない、非常によく出来た人物だったのこと。物語と歴史が異なっているのはよくあるけど、実物よりも物語のシャルルマーニュの方が情けないというのが、なんか面白いです。(講談社学術文庫)


+既読のトマス・ブルフィンチ作品の感想+
「中世騎士物語」ブルフィンチ
「シャルルマーニュ伝説」トマス・ブルフィンチ

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