「妖精学入門」「ケルト妖精学」井村君江

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研究を進めていくと、人類学や民俗学、深層心理学、諸芸術の想像力の根元など、様々なことが多様かつ複雑に絡まっていることを気付かされることになる「妖精」の存在。現代の「美しく、可愛らしく、小さい」という妖精のイメージはシェイクスピアが作り上げたイメージが定着したものであり、それ以前の妖精とは、悪魔と同一視され、邪悪な存在として畏怖されていた超自然界の生き物だったのです...
これまでの井村君江さんの著作を元に、「妖精学」という観点から妖精を概観できるようにまとめられたという本2冊。別に妖精そのものを突き詰めたいわけじゃないんですが、私の今年の隠れテーマであるケルト神話の一環で。(別に隠さなくてもいいんだけど・笑)

「妖精学入門」の方は、題名通りの入門編。1章「妖精はどこから生まれたのか」の真面目な妖精論は面白かったんですが、2章以降はちょっと物足りなかったかな。幅広い事象を取り上げて系統だって紹介するといった意味では、限られたページ数でとてもよくまとまっていると思うんですが、あまり目新しい部分はありませんでした。ある程度知識を持っている人間には物足りないかも。かといって、妖精といえばディズニーのティンカーベルを思い浮かべる人はちょっと戸惑いそうだし...。イエイツが収集したような民間伝承の妖精物語を少し齧っていて、しかもそこに現れる多様な妖精の姿に惹かれた人が一番楽しめるでしょうね。それでもカラーやモノクロの図版が多く使われているので、その辺りは見ているだけでも楽しいです。

「ケルト妖精学」の方は、「妖精学入門」と内容的かなり重なってるんですけど(第1章に関してはほとんど同じ)、もう一歩踏み込んだ内容となっています。こちらは妖精伝承と物語詩、英国文学、そして児童文学の中に見る妖精の姿。アーサー王伝説を始めとして、チョーサーの「カンタベリー物語、スペンサーの「妖精の女王」、シェイクスピア、そして18世紀のポープ、ブレイク、コールリッジ、W.スコット、キーツ、シェリーなどの詩人の作品を年代を追って取り上げているのがとても参考になりました。丁度、こういう風に系統だって英文学を眺めたかったんですよねー。「妖精学入門」では、未知の本を紹介されていても正直読みたい気持ちにまではならなかったんですけど、こちらでは読みたくなっちゃう本がいっぱい。そして児童文学を取り上げた第3章には、有名なファンタジーを取り上げながら、読者としての子供の存在と児童文学の発祥という、児童文学論と言えるような部分もあって面白かったです。それにしても、アーサー・ランサムの「ツバメ号とアマゾン号」のシリーズの「女海賊の島」が妖精文学として取り上げられているのにはびっくり。でも説明を読んで納得。なるほどねえ。(講談社現代新書・ちくま文庫)


+既読の井村君江作品の感想+
「ケルトの神話」「妖精とその仲間たち」井村君江
「妖精学入門」「ケルト妖精学」井村君江
Livreに「アーサー王ロマンス」の感想があります)

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Commentaires(2)

四季さん、ケルトが今年の(隠し)テーマなんですか?
私も是非便乗したいです。といっても、私は四季さんほどに見識が広くないので、まだまだこれからですが・・
私は今、イエイツを読んでいますが、井村さんのこういう本もあるんですね。読んでみたいです。

EKKOさん、こんにちはー。
今年はアーサー王伝説関連の作品を沢山読みたいと思っていて、
そうなるとアーサー王伝説はケルト神話から派生してるので、必然的に繋がっていくことになるんですよ。
そういう意味での隠しテーマなんです。
あ、でもケルトに関してはそれほど前から読んでるわけじゃないので、見識は全然広くないです!
面白い本があったら、ぜひ教えて下さいね。一緒に読んでいきましょう♪

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