「吟遊詩人トーマス」エレン・カシュナー

Catégories: / / /

[amazon]
吟遊詩人トーマスがやって来たのは、風が狂ったように吹き荒れる陰鬱な秋の夜のこと。犬のトレイが何かを聞きつけたように身を固くし、ゲイヴィンとメグが、こういう夜は死者が馬で走り回っているのだろうと考えていたその時、扉の外にはひどく背の高いずぶぬれの男が立っていたのです。病気で倒れたトーマスをメグは看病し、やがて病の癒えたトーマスはメグやゲイヴィンに様々な物語を語り、歌を歌います。そしてトーマスは、メグたちの隣人の少女・エルスペスと出会うことに。

吟遊詩人トーマスとは、13世紀に実在したといわれるスコットランドの詩人・トーマス・ライマーのこと。日本語のWikipediaには紹介がないんですが、英語のページにはありました。(コチラ) 妖精を歌ったバラッドとしては、これとタム・リンが有名なんですよね。(この2つの比較ページがありました... 英語ですが。コチラ) ケルト神話を読み進めている今の私にぴったりの作品。実際読んでみても、なかなか素敵な話でした!
この話の主要な登場人物は、メグとゲイヴィンという老(中年?)夫婦、トーマス、そしてエルスペス。この4人それぞれの章によって構成されています。まずはトーマスの到来と、その滞在を語るゲイヴィンの章。次は4つの章の中で一番長いトーマスの章。この1章だけで物語の半分ほどあるんですよね。でも、てっきりここでトーマス自身のことが分かるのかと思いきや、いきなり妖精の女王の魅力に絡め取られて、えええっ、どうするの?!状態。そして次のメグの章ではトーマスの帰還が、最後のエルスペスの章では晩年のトーマスの姿が描かれることになります。井辻朱美さんが訳者あとがきで

訳していてふしぎでもあり、興味深かったのは、Aという人物の視点から描かれたBという人物が謎めいていて不思議なので、Bの一人称部分にはいりさえすれば、この人物の本質がわかるだろうと思うのだが、実際にBの語り部分にはいってみると、謎はあいかわらず解けないということである。Aの目にうつっていたBとはちがうBがそこにいて、しかもBの目にうつるAも、Aの語りの部分とはまったくちがったふうに描かれている。(中略) かくして四人の主要人物は、四方向からちがった光で照らしだされる四つの像になる。物語は四倍の奥行きをもち、意味をもつ。

と書いてらっしゃるのですが、もうまさにその通り! 良くも悪くも期待を裏切られました。こういうのも面白いなあ。
それにしても、ほんと幻想的な作品でした。メグとゲイヴィンの家の描写でさえ幻想的に感じられてしまうんだから、エルフランドときた日にはもう! あれは結局何だったんだろう?って部分もあったんですけどね。でもエルフランドの場面がとても長かったので、これと普通の人間の世界のどっちが本当の世界なのか分からなくなってきちゃいそうでした。もしかしたら、ゲイヴィンやメグ、エルスペスのいる現実の世界の方が夢の中の出来事だったのかな、なんて思えてきちゃいます。(ハヤカワ文庫FT)


+既読のエレン・カシュナー作品の感想+
「吟遊詩人トーマス」エレン・カシュナー
「剣の輪舞」エレン・カシュナー

| | commentaire(0) | trackback(0)

Trackbacks(0)

「吟遊詩人トーマス」エレン・カシュナー へのトラックバック一覧:

URL TrackBack de cette note:

コメントする(要JavaScript)

Note


MAIL FORMBBS

購読する ATOM


Powerd by MovableType4.24-ja
Copyright 2004-2011 四季. All rights reserved.