「熊から王へ カイエ・ソバージュII」中沢新一

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神話とは本来、国家を持たない人々の間で生まれて発達してきたもの。そこでは人間と動物とのどちらか一方が優位な立場に立つこともなく、人間は「文化」を持ち、動物たちは「自然」状態を生きていると考えられていました。動物たちは「自然」状態を生きることによって「自然の力」の秘密を握り、人間は神話や儀礼を通して、動物との間に失われた絆を取り戻し、その「自然の力」の秘密に触れようとしていたのです。しかし国家ができ、「文化」が「文明」になると、人間と動物との「対象性」のバランスは失われ、「文明」と「野蛮」の違いが意識されるようになります。...この巻では、自然権力がの象徴が「熊」であった時代から、人間の「王」が発生するまで。そして現代国家に対抗し得る「仏教」について。

カイエ・ソバージュ2巻目。今回はいきなりアメリカの同時多発テロと狂牛病の話が登場して、しかもそこに神話の思考の不在が深く関わっているあったので驚いたんですが、宮沢賢治の「氷河鼠の毛皮」や、トンプソン・インディアンなど狩猟民族の神話が読み解かれるうちに納得。神話時代の人々の間には、動物がその毛皮を脱げば人間となると考えられていたし、普通の人間との間に子供が生まれるような伝承も沢山あったし、生活のために動物を殺す時も殺した後も、相手の尊厳を傷つけないように丁重に扱っていたのに、そういった倫理や哲学は、現代の人々には全く残っていないということなのですねー。
動物と人間が交流する「対象性社会」では、「王」や「国家」はあり得なかったはずなのに、新石器社会のどこかの時点で異変が生じたようです。本来なら人間の集団のリーダーである「首長」は、権力ではなく、理性のみで部族を率いていたもの。ここにあるのは「文化」。しかし冬の祭りの期間限定のはずだった権力が、祭りが終わっても残り、あるいは戦争など特別な場合限定で権力を与えられていたはずの戦士やシャーマンが、それまでの首長の地位を奪い、その結果王が生まれ、「文明」が生み出されることになったよう。それまでの首長の権威は理性によって支えられていたのに対して、王の権力は盛大な宗教的儀式によって演出され、人々は国の下す命令や決定が理不尽なものでも従わねばならなくなります。自然や人々を一方的に支配しようとする国家は、本質的に野蛮。...なんて私が書いても分かりづらいですが、本を読んでる分にはとても分かりやすいです。
こういった「国家」に対抗する思想として、仏教を考察しているのも面白いなあ。(講談社選書メチエ)


+シリーズ既刊の感想+
「人類最古の哲学 カイエ・ソバージュI」中沢新一
「熊から王へ カイエ・ソバージュII」中沢新一
「愛と経済のロゴス カイエ・ソバージュIII」中沢新一
「神の発明」「対称性人類学」中沢新一

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Commentaires(2)

カイエ・ソバージュは講義録ですが、中沢新一さんの講演を聞いたことがあります。
原稿もメモもなしに、非常に構成された、章立てや論理展開が構造的に明確な内容でした。
中身よりもまず、その話術が「芸」の域に達していると思いましたヽ(´ー`)ノ
ちょうどカイエの最後の頃と重なってるお話でしたが。

中沢さんは年を取らないのもフシギ。80年代からずうっと同じままです(笑) ずうっと独身のままだと思うんだけど。

「西宿」は、調べてみると、その東に「宿久庄」というところがありました。須久久神社があり、すぐ南には道祖神社があって、ここがまちがいなくS+Kです。すくく。
西宿は、その西にある「分宿」のようなものだったと思われます。

このあたりも、フシギな神社がいっぱいあって、かなりアヤシな地域。
お祭りも、変わったものがあるのでしょうか?

わあ、講演を聞かれたことがあるんですか。
講義録を読んでるだけで面白いので、これで話術があるなら、向かうところ敵ナシかも。
これも大学の授業として実際に聞いてみたかったです~。
こういう内容の本をあまり読んだことがないので、実際のところどうなのかよく分からない部分もあるんですが(おぃ)
でもすごく説得力があって面白いです。

中沢さん、昔から有名な方だったんですね。調べてみるとチベット仏教の修行もされてるとか…
年を取らないのは、もしやその効用?(笑)
いや、この手の顔立ちの人って老けにくいような気もします。(笑)

「宿久庄」と須久久神社と道祖神社ですか!
実は結構濃い場所だったのかもしれないですね。
でも場所は大体分かるんですけど、地元っていうわけじゃないので、お祭りまでは分からない…
ちょっと調べてみたくなりますね。

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