「愛と経済のロゴス カイエ・ソバージュIII」中沢新一

Catégories: /

 [amazon]
一見、正反対の存在に見える「愛」と「経済」。しかしこの世に純粋に合理的なものなど存在せず、ましてや経済を動かしているのが人間の欲望である以上、経済現象のもつ合理性は、表面に現れた偽りの顔。実は「経済」とは暗い生命の動きにまで奥深く根を下ろした、1つの「全体性」を備えた現象であり、その深層の部分で愛と融合しているのです... ということで、カイエ・ソバージュ3巻目。

今回のテーマは「愛」と「経済」。この2つが結び付けられるというところからびっくりなんですが、学問的には決して結び付けられることのないこの2つも、文学の中では古くから見られるテーマなのだそう。例えば志賀直哉の「小僧の神様」とかボードレールの「贋金」。こういった作品を理解するには、経済学や哲学や人類学などの思考の総動員が必要なんだそうです。小説が単なるツクリゴトじゃなくて、きちんと理解するためには幅広い知識や思考を求められることがあるというのは前から感じていましたけど、そうですか、やっぱり経済も必要でしたか。うーん、こんな風に毎日のように本の感想をアップし続けてると、私という人間の底の浅さもバレバレなんでしょうねー。必要な知識があるかどうかで読み方の深さは全然違ってくるし、それは感想を見ればきっと一目瞭然。私が理解し切れなかったせいで、名著が面白くかんじられなかったということもあるでしょうし...。や、こういう本を読むことによって少しずつ幅が広がれば、それでオッケーだとは思うのだけど。

資本主義が確立されるまでのことが色々な方法で語られているんですが、一番面白かったのは「交換」「贈与」「純粋贈与」について。経済の働きを支えているのはこの3つの組み合わせで、これらがしっかりと結び付いて、互いに分離しないようになっているのだそうです。特に古代の贈与社会では、貴重品の移動と共に霊力も動くと考えていて。霊力の流動を止めないために、一定の期間を置いて滞りなく贈与が行われることが重要だったようです。「交換」と「贈与」の関係は、私にも大体予想できることなんですが、そこに「純粋贈与」が入ることによって、これほど色んなことが説明できてしまうとは! そしてニーベルンゲンの指環や聖杯伝説などを通して、貨幣が生まれ、資本主義が生まれてくるまでの過程を読み解いていきます。
「純粋贈与」と「贈与」が結びつく時、そこに生まれるのは「たましい=霊力」の躍動をはらんだ純生産。でも「純粋贈与」と「交換」が接触して生まれた資本の増殖は、「たましい」の活動を押し殺すもの。だから資本主義の豊かさは所詮物質的な豊かさで、たましいの豊かさではないのだそうです。とはいえ、その2つの増殖の形を結び付けたのが現代のクリスマス。元々のクリスマスは、2巻「熊から王へ」にも出てきたふゆの祭りとキリスト教が合体したもの。その時期に訪ねてくる様々な霊的存在に贈り物をすることによって、人々は富の増殖をし、霊たちの存在に近い子供たちは、家々を回って贈り物をもらったのだそうです。おー、ハロウィーンの原型がここにある? そしてそのクリスマスに目を付けたのが資本主義。1940年代に、資本の増殖と霊の増殖のどちらもお祝いできる現代のクリスマスを作り出したのだそうです。今のクリスマスって、意外と新しかったんですね。でもいくら資本主義の夢のようなお祭りだからといって、毎日がクリスマスというわけにもいかないし...って。そりゃそうだ。(笑)(講談社選書メチエ)


+シリーズ既刊の感想+
「人類最古の哲学 カイエ・ソバージュI」中沢新一
「熊から王へ カイエ・ソバージュII」中沢新一
「愛と経済のロゴス カイエ・ソバージュIII」中沢新一
「神の発明」「対称性人類学」中沢新一

| | commentaire(0) | trackback(0)

Trackbacks(0)

「愛と経済のロゴス カイエ・ソバージュIII」中沢新一 へのトラックバック一覧:

URL TrackBack de cette note:

コメントする(要JavaScript)

Note


MAIL FORMBBS

購読する ATOM


Powerd by MovableType4.24-ja
Copyright 2004-2011 四季. All rights reserved.