「オシァン ケルト民族の古歌」

Catégories: / / / /

 [amazon]
3世紀頃にスコットランド北部のモールヴェンにいたというフィンガル王(フィン王・フィン・マックール)の誉れと、その一族の者たちの物語。スコットランド高地に住むゲールと呼ばれるケルト民族の間で語り継がれてきた古歌を集めたものです。オシァンといえば、妖精の女王・ニアヴが常若の国ティル・ナ・ノグへ連れ去ってしまうという浦島太郎的物語もあるんですが、こちらは妖精とか魔法とか超常的要素は全然ありません。

もう本当にものすごく美しいです。1760年にマクファーソンによって英訳本が発表されるや、たちまち大人気となり、ナポレオンにも愛読されたというのも納得。でも美しいと同時に哀しくもあります。これらの歌が語られたのは一族の者たちが次々に倒されて、オシァンが1人最後に残された後のこと。高齢で、しかも失明しているらしいオシァンが、亡くなった息子・オスカルの許婚で立琴の名手だったマルヴィーナ相手に、もう一度歌心を呼び戻して欲しいと一族の戦士たちの物語を聞かせているという形。歌が進むごとに、最初は若者だったフィンガル王も年を重ねて壮年の勇者になり、最後は白髪の老人へと...。それでも立派に戦ってるんですけどね。読んでいると、気高く雄々しい勇士たちの戦う姿とそれを見守る美しい乙女たち、戦いを終えての饗宴とその席で竪琴を奏で歌う歌人たち、そんな情景が見えてくるようです。

ええと、歌人たちは何かといえばすぐに歌うんですが、それは倒れた勇士の霊は歌人に頌歌を歌ってもらわなければ「雲の宮居」へ行かれないから。で、この「雲の宮居」というのはオーディンがいるところ、と作中にあります。それってもしや、北欧神話のヴァルハラのことですか? この作品の中心となっているフィンガル王はスコットランドの一部族の王だし、確かにケルト。北欧神話がこんな風に入り込んできてるとは知らなかったので、ちょっとびっくり。フィンガル王の軍はスカンディナヴィアの人々と結構頻繁に戦ってるし、しかも途中でオーディンの幻影が現れたりするので、どうも敵というイメージが強いんですけど... つまり死神ってことなのかな? いずれにせよ不思議だなあ。(岩波文庫)

| | commentaire(2) | trackback(0)

Trackbacks(0)

「オシァン ケルト民族の古歌」 へのトラックバック一覧:

URL TrackBack de cette note:

Commentaires(2)

四季さん、こんにちは!
え、岩波にこのような叙事詩(ですか?)があるのですか。。。
岩波文庫は一番後ろのページに同類作品の紹介がされていますが、この本、はじめて知りました。
四季さんのブログはいつも勉強になります。
それにしても四季さん、ほんとにあらゆる叙事詩を読む勢いですごいなあ。
清々しい迷いのなさに憧れますー。
えと、本を読んでもいないのに登場してすみませんでした(ぺこり)

kyokyomさん、こんにちは。
わー、「読んでもいないのに」だなんて、そんな全然ですよぅ。
こんな一般ウケしない状態を突っ走ってるのに、コメントを残して頂けるだけで嬉しいですもん。^^

で、この本ですが、私も今年になってから知ったんです。
元々1971年に出てた本が、2002年に復刻して、でもまたあっという間に品切れになっちゃったみたい。
岩波文庫って、名作はいっぱい出すのに、なかなか重版してくれないんですよねえ。
すごく素敵な作品だったので、kyokyomさんにもオススメしたいぐらいなのですが~。

叙事詩といえば、アイヌの叙事詩なんていうのもあるんですよ。
でもヨーロッパは奥が深くて… なかなか次に進めません。(笑)

コメントする(要JavaScript)

Note


MAIL FORMBBS

購読する ATOM


Powerd by MovableType4.24-ja
Copyright 2004-2011 四季. All rights reserved.