「アイヴァンホー」上下 スコット

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12世紀末、獅子心王・リチャード一世がオーストリアに幽閉されていた頃。イギリスではアシュビーで当代一流の戦士たちが技を競う武術試合が開催されます。2日間通して優勝者として選ばれたのは、名前を名乗ろうとせず、素顔も見せないまま参加していた「勘当の騎士」。そしてその勘当の騎士から無理矢理兜が取られた時、そこに現れたのは、父親から勘当されて十字軍の兵士として出征していたはずのアイヴァンホーだったのです。

イギリスロマン主義の作家・ウォルター・スコットの代表作。
ブルフィンチ「中世騎士物語」(感想)でロビン・フッドが登場すると知って以来、読みたかった本。いやー、面白かったです。ロビン・フッドもかなり沢山登場するし~。タック坊主も。2人とも、終盤までずっと名前が明かされないままなんですけどね。でも名前は出てこなくても、鮮緑色(リンカーン・グリーン)の上衣を着て、といういう時点で、イギリスの読者なら誰でもその正体に気づくそうです。
ただ、題名こそ「アイヴァンホー」なんですが、アイヴァンホーはあんまり主人公という感じがしませんでした。アイヴァンホーとロウイーナ姫とのロマンスというのもあるんですけど、この2人がお互いのことを好き合ってるというのが既成の事実としてあるだけ。アイヴァンホー自身はともかく、ロウイーナ姫は単に絶世の美女っていうだけの描かれ方だし...。むしろ当時のノルマン人とサクソン人の反目を背景に、黒衣の騎士(獅子心王リチャード)とロクスリー(ロビン・フッド)一味の活躍を描いた冒険活劇と言った方が相応しいかも。でも主人公は誰かと考えると、どうもこの2人でもないんです。私がこれこそ主人公じゃないかと思ったのは、ユダヤ人のレベッカ。
レベッカの父親は金貸しで、その造形は文学上で描かれるような典型的なユダヤ人。丁度シェイクスピアの「ヴェニスの商人」のシャイロックのような... もしくはディケンズの「クリスマス・キャロル」のスクルージでしょうか。差別のされ方も、そういった作品と同じような感じ。まあ、この造形だと、それもまたいたしかたないかなって感じなんですが... それよりも差別の根深さを思い知らされたのは、純粋可憐なレベッカの場面でのことでした。アイヴァンホー自身、命の恩人のレベッカがユダヤ人だと分かった途端、顔色を変えちゃうんですもん。それまではレベッカのことを天使かと思っていたほどだったのに。これでレベッカが若くもなく、美女でもなかったら、どうなっちゃってたのかしら? なんて思ったりもしたんですが、そんなこともあるせいか、いくつもの場面で聡明なレベッカの凛とした気高さが一層際立っていました。

ただ、この作品の訳って、ものすごーく時代物調なんです。「武士(さむらい)」「上人さま」「拙者」「~し申す」などな、どうしても最後まで馴染めず仕舞い。せっかく面白い作品なのに、この訳のせいで、楽しさ2割減だったかも。これはぜひとも新訳を出して欲しいな。そうそう、こういう時こそ光文社の古典新訳文庫とか!(岩波文庫)


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