「湖の麗人」スコット

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大鹿を追いかけているうちに仲間ともはぐれ、乗っていた馬を失い、犬だけを連れた狩人は、カトリン湖のほとりでエレンという乙女に出会います。狩人が鳴らした角笛を、父の角笛の音かと思ったエレンが、船を漕いで迎えに来たのです。狩人は、ジェイムズ・フィッツ=ジェイムズと名乗る騎士。道を失って難渋していると話す騎士をエレンは自分の家に案内し、一夜の宿を提供することに。

入江直祐氏の旧仮名遣いの訳が古めかしいながらも、非常に美しい作品。素敵でした~。本来なら全編叙事詩として書かれているそうなんですが、日本語訳では、歌として歌われている部分以外は散文。「湖の麗人」という題名で、アーサー王伝説のヴィヴィアン(ニムエ)を思い出したんですけど、やっぱりその伝説がヒントとなってできた物語のようです。中世が舞台の騎士物語。
スコットランド生まれのウォルター・スコットはハイランドで育ち、実際にこの作品で舞台になった土地もよく知っているようで、舞台となっている湖や山間などの描写がとても美しかったです~。そしてその湖に住むのは美しく幻想的な乙女。その乙女の周囲には、王に追放された騎士である父親、乙女に恋する勇士たち。竪琴を奏でながら歌い、預言をする老人など。でも美しい描写だけではないのです。徐々に感じられる不穏な空気や、怪しげな預言者の儀式、戦争の知らせのために走る伝令たち、そして来る戦争の場面... 特に印象に残ったのは、伝令が「火焔の十字架」を持って村から村へとひた走り、辿り着いた村の伝令にその十字架を託して、受け取った伝令が新たに走っていくシーン。これは絵になりますねえ。ちょっと違うんですけど、映画「ロード・オブ・ザ・リング」の狼煙の場面みたい。それから面白かったのは、王の住むスターリング城下の祭りの場面。矢場の傍には、ロビン・フッドがいました! タックやリトル・ジョン、スカーレット、マリアン姫など錚々たるメンバーと一緒に並んでいました。名前だけの登場なんですけどね。そういう遊び心がまた楽しいところ。「アイヴァンホー」(感想)にも登場してたし、実はかなり好きなんですね~?
そしてこの物語の中でエレンが歌う聖母賛歌にシューベルトが曲をつけたのが、有名なあの「アヴェ・マリア」の曲なのだそうです。(エレンの歌第3番) いや、この曲、てっきり宗教音楽かと思ってました... 違ったんですね。でもあの曲なら、この作品によく似合います。本当に素敵な作品なんですもん。こういう作品を読めると、それだけで幸せ~♪(岩波文庫)


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