「シルトの岸辺」ジュリアン・グラック

Catégories: / /

 [amazon]
オルセンナ共和国でも最も古い家系のアルドーは、都での退廃的な暮らしを楽しむ青年。しかし1人の女性が自分から去って行ったのをきっかけに、それまでの自分の行き方がどうしようもなく空疎に見えてきて、都を離れる決意を固めます。そしてシルト海に配置されている遊撃艦隊に、監察将校として赴任することに。オルセンナは300年も前から、海を隔てたファルゲスタンと戦争状態にあるのです。しかし今やオルセンナもファルゲスタンも衰微し、実際の戦闘活動が行われることもなく、シルトの前線も名目上の残骸と化していました。

架空の国オルセンナを舞台にした作品。著者のジュリアン・グラックがゴンクール賞受賞を辞退したことで有名ななのだそうです。うるしのうつわ うたかたの日々の泡のkota さんが、たらいまわし企画・第30回「フシギとあやし」の時に挙げてらした本です。(記事) 確かに「薫り高い文体」という言葉が相応しいと思ったし、小説内の空気が弛緩したり緊張したりするのが本当に感じられる作品。私にはちょっと難しかったのだけど...。
アルドーがシルトに行ったためにファルゲスタンとの危うい均衡が破れ、止まっていた歴史は再び動き出してしまうのですが、もしアルドーがシルトに行かなければ、そのまま何十年という月日が過ぎ去ったのでしょうね。でも、紛れもなくアルドーの行動のせいなんだけど、アルドー自身の意志とも思えない。アルドーもヴァネッサも、シルトにいるマリノ大佐や副官たちもみんな単なる歯車というか、チェスの駒のような印象なんです。もしやアルドーをシルトへと行かせて、時間を再び動かしたのは「歴史」そのもの? なんて思っていたら。実際に動かしてたのは「歴史」ではなかったんだけど、最後のところでゾクっとさせられました。全然違うSF作品が頭をよぎってしまって。
ぎらぎらと照りつける太陽と凄まじい風、乾燥した植物に乏しい土地、点在する農家の白い壁といったシルトの広がりが退廃的な都とは対照的で、そこに漂うのは喪失感。最初はなかなかこの世界に入れなかったし、もうほんと一瞬たりとも気が抜けない文章だったので、読むのが大変でした。結局通して2回読んでしまいましたよ。はふーっ。(ちくま文庫)

| | commentaire(2) | trackback(0)

Trackbacks(0)

「シルトの岸辺」ジュリアン・グラック へのトラックバック一覧:

URL TrackBack de cette note:

Commentaires(2)

おはようございます、
だいぶ前ですけど、『シルトの岸辺』読みましたよ。
あやうい均衡をはらんだ海の雰囲気が印象的でした。
ヴァネッサの存在も大きいですね。

四季さんは2回も通して読まれたんですか。
何読もする価値ある作品ですよね。

おはようございます。
nyuさんも読まれてましたか~。
ほんと、海もヴァネッサもすごく印象的でしたね。

きっと読み込むほどに、何か発見がある作品なのでしょうね。
本当に理解できてるのかと言われると、あまり自信がないのですが
2回目は1回目よりも確実に、この世界が感じられた気がしたし
場面場面がものすごく鮮やかに残ってます。
読み込んでみたくなる作品ですね。

コメントする(要JavaScript)

Note


MAIL FORMBBS

購読する ATOM


Powerd by MovableType4.24-ja
Copyright 2004-2011 四季. All rights reserved.