「エルフギフト」上下 スーザン・プライス

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南イングランドのサクソン人の王国で臨終の王・エアドムンドを取り囲んでいたのは、王の兄弟で唯一の生き残りのアセルリックと、王妃との間にできたアンウィン、ハンティング、ウルフウィアードの3王子。王は次の王を指名しておらず、このままでいけば、賢人会議はアセルリックを指名するのではないかと考えられていました。しかしその時、エアドムンドが意識を取り戻したのです。エアドムンドが次の王にと指名したのは、エアドムンドと森のエルフの間に出来た子のエルフギフト。母親はエルフギフトを産み落としてすぐに死に、王はエルフギフトを乳母に託して農場に住まわせ、そのままになっていました。王の言葉を聞いたアンウィンは、早速弟のハンティングにエルフギフトを討つように言い、ハンティングは兵士を引き連れて農場へと向かいます。

いやー、面白かった。一応児童書なんですけど、ものすごく生々しくて力強くて、重厚な物語でした。
表向きは血族同士で王位を巡って骨肉の争いを繰り広げる物語で、同時にゲルマン神話のオーディンやトールを信仰する人々と、唯一神であるキリストを信仰する人々の対立の物語でもあるんですけど、それ以上に、神話の世界と地続きのような物語なんです。本の紹介にも「ゲルマン神話の世界観で語られる重厚なファンタジー」とある通り、ワルキューレやオーディンが登場するし、柱に刺さっている「オーディンの約束」という剣をエルフギフトが引き抜く場面は、まるでニーベルンゲン伝説。でも、同じぐらいケルト神話の要素も入ってますね。半人半エルフのエルフギフトは、まるでケルト神話のクーフリンみたい。同じように異界で戦う技術を身につけるし、同じように死期も既に定められているんです。エルフギフトがワルキューレに連れられて行く異界の描写は、ヴァルハラというよりもむしろティル・ナ・ヌォグのイメージ... というのは個人的な印象なんだけど... そして叫ぶ石とか大釜といったモチーフもケルト的。...なんて細かいことはどうでもいいんですけど。(笑)
一応主人公はエルフギフトのはずなんですけど、でもむしろ神々の物語のような気がします。この物語に登場する人々は、それぞれに最善を尽くしてはいるんだけど、所詮は神々の操る駒にすぎないような... 神々の気紛れに振り回されてるという印象。そしてそれはエルフギフトも同じ。半分のエルフの血のせいか人間の世界にはあまり馴染んでいなかったエルフギフトも、本来なら神々の側に入る資格を持っていたようなのに、愛するワルキューレを失う覚悟でウルフウィアードの助命を嘆願した時に、その神性が失われてしまったようなんですね。それも神々の気紛れとしか思えない... だからこそ、最後にエルフギフトの血が流される必要があったのかな、とも思うんですが。...圧倒的な死と再生の物語でした。でも物語が幕を引いても、そこにあるのは平和な世の中ではないんですよね。
いや、いいですねえ、スーザン・プライス。他の作品も読んでみたいです!(ポプラ社)


+既読のスーザン・プライス作品の感想+
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