「魔法ファンタジーの世界」脇明子

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amazonの本の紹介によると、
「指輪物語」「ゲド戦記」「ナルニア国ものがたり」。子どもたちを、そして今や大人たちをも惹きつけてやまない、魔法ファンタジーの不思議な魅力の秘密を解きほぐしていく。伝承の世界にその系譜を探り、細部のリアリティにその力を見出し、さらにそこには危険な罠すらひそんでいることも明らかにする、本格的な案内の書。
とのこと。脇明子さんの訳してらっしゃるファンタジー作品を何冊か読んでいるので、手に取ってみたんですが...

書かれていることに頷ける部分もあるし、「ゲド戦記」や「指輪物語」「ナルニア」についても興味深いことが書かれていたのに、しかもせっかくケルト神話やアーサー王にも触れられていたのに、なんかカチンと来てしまって、あまり楽しめなかったです...
なんだか上から目線の決めつけが多いように感じてしまったんですよね。例えば、ライトノベルやゲーム、アニメを十把一絡げに切り捨ててみたり。「ご都合主義のライトノベルの類が、読むに値しない本であることはかんたんに説明できる」とかね。いや、ライトノベルにご都合主義の作品は多いのかもしれないし、批判するのはいいんです。でもね、この方は、本当にライトノベルを読まれたことがあるのかしら? 1冊や2冊手に取ってみただけで、他の人から話を聞いただけで、全体を批判してしまってるのでは? そんな印象を受けました。私もあまり詳しくないですけど、私自身が読んだいわゆるライトノベルと呼ばれるレーベルの作品は、ご都合主義の作品ばかりじゃなかったですよ! 確かに一部を見て全体が分かることだってあるけれど、この方の場合は、一部から全体像を決め付けすぎのように感じられてしまいます... それもきっと、上から目線だからなんだろうな。主観的な意見が、既成事実であるかのように書かれているのも気になるし。
そしてもう1つ。「読むに値するファンタジー」の話は沢山出てくるんですけど、そうでない作品、脇明子さんが「とうていいいとは思えないようなファンタジー作品」とは何なのかというのが書かれていないところも疑問。これはきちんと書いて欲しかった。なぜ「具体的に作品名を挙げるわけにはいかない」のか私には理解できなかったし、具体的な作品名がない限り、読者が自分でその作品のことを改めて考えることもできないわけじゃないですか。具体的な作品名を挙げることによって様々な問題も出てきてしまうのかもしれないけど、ここまで書いておいて、それは中途半端ですってば。そういう部分が抜けてるから、この本全体が上っ面だけのことに見えてきてしまうのではないかしら。なんて思いました。エンデの「魔法のカクテル」とダールの「チョコレート工場の秘密」についての否定的な意見は、きちんと書かれてたんですけどね。

ただ、これだけは絶対的に同意できるというのがありました。それは、「ナルニア」は全7巻を一気に読むのではなく、1冊ずつじっくりと読み返して、馴染んでから次に進んだ方がいいということ。「たとえ最後で裏切られたように感じても、それまでにゆっくりと育ててきた愛情が色褪せてしまうことはなかっただろう」というのは、まさにその通りだと思いますね。そういう意味でも、子供の間に読んだ方が幸せな本の1つだと思います。...でもだからって、「ナルニア」のこの激しいネタバレは許されないですけどね! 「ナルニア」を最後まで読んでない方は、読まない方が身のためです。(岩波新書)

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Commentaires(6)

 ご無沙汰してます。
『魔法ファンタジーの世界』、わたしも読んだのですけど、四季さんととても近い感想をもちました。
 ふだんライトノベルを多めに読んでいるせいで、よけいに馴染まなかったのかなと少し気になっていたのですが、それだけが原因というわけでもなさそうだと。

 良い指摘もある本だけに、このあたりは残念だと思います。

うさぎ屋さん、こんにちは!
こちらこそご無沙汰しております。とは言っても、ブログは頻繁に拝見してますが。
私には珍しく、かなり否定的なことを書いてしまったのですが、近い感想と伺って少しほっとしました。
以前から「ライトノベル」という言葉で一括りにして切捨ててしまう考えには違和感があったんですが、それが今回、ちょっと噴火してしまったみたいです。
その辺りのことに関しては、色々考え始めると止まらなくなってしまう…。

指輪物語やゲド戦記に関しては、とても興味深いことが書かれていたので、本来ならもっと楽しめるはずだったのに。残念です。

この本を読んだわけではないのですが、四季さんが怒りぎみになる理由はわかる気がします。
ダメ出しをするなら、ちゃんと根拠を示してほしいんですよね。「所謂ライトノベル」を十把一絡げにするならするで、何故それらを同一で語るのか。それらの何がどうあれば、「読むに値」する本になりうるのか説明してほしい。「ライトノベルっていうジャンルだから嫌」という論調では批評になってないわけで。
ダメ出しって、もの凄く勇気がいることだと思う。作品を褒めることより、ダメを出すことの方が、その人の価値観(評価基準)がはっきり出る。批評する側がきちんとした基準・根拠をもってそれに照らして相手を納得させないといけないのが、ダメ出し。「私は嫌いー」という言いっぱなしなら幼稚園児でもできるわけで。
四季さんの感想を読んで、「具体的に作品名を挙げるわけにはいかない」と逃げている著者の脇明子は、潔くないなーと思ったのでした。

四季さん、こんばんは。TB有難うございました。
四季さんの新しい記事のほうにお礼のコメントをしようと思ったのですが、お礼ついでにこちらの内容についてコメントを書きたかったので、こちらに一言。

昨年脇先生の講演に行きました。
現在の子どもの読書離れの深刻さと、子どもに何故読書が必要なのかという内容でした。
とても講演なれしておられる感じで、内容もわかりやすかったのです。
絵本の読み聞かせの必要性、児童文学への誘い方などなど、かなり参考になる講演でした。
が、最後の質疑応答のときにポロリと
「結局、絵本は児童文学などの本を読むようになるための橋掛かりに過ぎない」というような意味の事を洩らされたのです。
それまでは、なかなか良かったと思っていた気分が,一度に覚めてしまいました。
絵本というものに対しての脇先生の認識とはそういう程度のものかーと。
結局、自分の翻訳される種類の文学に対しての評論はできるけれど、それ以外の分野に対しては、印象だけのかなり固定的なイメージしか持っておられないのではないかと思います。
絵本について書くと長くなるのではぶきますが、絵本は、ただの文学作品へのつなぎじゃありません。子どもは絵本という文学を味わって、そして、読書好きというのはその後の結果として付いてくるのです。
私はそう思います。
この本も、そういう著者の目線の位置が、時々目につきますね。
脇先生の翻訳本はとても好きなのですけれど。

>菊花さん
そうなんです、根拠なの。分かっていただけて嬉しいです。^^
それがまず土台としてあるべきなのに、それが欠落したまま論だけを積み重ねても、砂上の楼閣になっちゃいますよね。
脇明子さんがライトノベルのことを嫌いでも別に構わないのですが、やはりその理由は提示されるべきだと思います。
読むに値しないファンタジー作品についても同様。
そこで十分な根拠を示せないのであれば、むしろそんなことを持ち出すべきではなかったのでは、とも思うんですよね。

>作品を褒めることより、ダメを出すことの方が、その人の価値観(評価基準)がはっきり出る。

本当にそうですよね。価値観も評価基準もそうだし、人間としての底の浅さ(深さ)も露呈されてしまいますよね。
先日の裁く話のこともあるし。だから私はダメを出すことが怖いです。

>サムさん
そんなお礼だなんて! こちらこそありがとうございます。
でもテレビドラマ、完全に間違えてましたね。すっかり思い込んでしまいました。ごめんなさい~。

わあ、サムさんが脇明子さんの講演会に行かれていたとは。
お話は面白いでしょうねー。分かります。
この本でも、実際にご自分がお好きな本に関しては、とても分かりやすくまとまってるし、視点も鋭いですよね。
それだけに、よくご存知の部分と、あまり知らない(であろう)部分のギャップが目立ってしまったのだけど…
興味のない分野に関しては、もうとことん興味がないのでしょうね、きっと。
世間一般で言われている表層的なイメージで十分で、それ以上は知ろうとすら思われないのかも。
この本を読んだので、絵本に関する発言も、さもありなんという感じです。
でもそんなこと聞いたら、一気に冷めてしまいますよね… 分かります。
もちろん、絵本は単なるつなぎなんかじゃないですよね!

よくご存知の分野には深い考察をされるだけに、時折感じられる視野の狭さが本当に勿体ないなあと思っちゃいます。
(そんなことを言ってる私は何様だって感じですが^^;)

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